30.11.07 政府税制調査会2018年の4回目。相続税・贈与税のプラス資料と、委員の意見。
政府税制調査会レポ。後半戦。
財務省HP → http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2018/30zen20kai.html
・相続贈与の前回以前の委員からの質問の回答
資産課税(相続税・贈与税)PDF →資産課税(相続税・贈与税)質疑回答 財務省 税制調査会18 301107
相続税贈与税についての追加説明。
平成28年分は、43万件の贈与案件があり、うち4.5万件が相続時精算課税。平成28年分は2兆円ほどの贈与があり、そのうち0.6兆円が相続時精算課税。
平成28年分(29年分もほぼ横ばい)の住宅取得等資金の非課税贈与案件数は5.9万件、利用金額4800億円。
国税庁のデータはないが国土交通省の「土地基本調査」、相続贈与により取得した方の現住所の土地の広さと取得者の年間収入は比例している。高額所得者が広い土地を相続贈与により取得する傾向にある。
資産税の徴税コストについては、国税庁に税目別のデータは算定していない。臨場調査以外に手紙や電話による調査で効果的に適正な課税が行われているし高額所得者への特捜チームを設置して、対応している。
資産移転時点に特化した相続税贈与税に関する国際比較の資料を作成した。
・では相続贈与以外もどうぞ!自由討議を
・土居委員 慶應義塾大学経済学部教授
相続税と贈与税の中立性は大事。贈与のタイミングで不公平感をなくすべきだ。
所得税について、マイナポータルの活用に賛成する。国民の皆様の納税環境の電子化メリットの実感を感じていただけるよう努力すべきだ。
プライバシー侵害の懸念をもつ国民の皆様が利便性を実感いただけるのがいい、セキュリティはしっかりすれば皆様の納得がしていただけると思う。
ライフサイクルで不公平感がないような所得税制を構築すべきだ。増税懸念で反対することがありえると思うが、躊躇していると人生設計に関係する、非課税措置を所得がある方にまでどしどし与えることには反対する。やはり出来るだけ早く国民に選択肢を提示して合意形成を得るように議論していくべきだ。
・大竹委員 大阪大学大学院経済学研究科教授
2つあります。
1つ目は退職所得課税。税制優遇措置で行動を変化する人はお金がある人である。本来の退職所得課税の趣旨が自助努力を促すのであれば税制だけでは議論が不足している。
2つ目は金融所得課税。資産課税・所得課税についてもっと深く議論すべきだ
・井伊委員 一橋大学国際・公共政策大学院教授
欠席していたから書類を読んだ。日本は遅れている。私的年金の国際比較が特徴的だった、共通の非課税枠を作ったイギリスやカナダなどの制度は参考になった。医療制度の専門家である私は、医療も含めたユニバーサルな議論が大切だ。
公的年金等控除をはじめとして、世代間の不公平感がある。公的年金等控除は高額療養費などにも影響している。
国民皆保険制度は日本が誇っているが、他国はしっかり分析を行った後でユニバーサルな制度を構築している、日本のようになんでもカバーという制度には疑問だ。労働環境、社会保障全体を考えるべきだ。
・田近委員 成城大学経済学部特任教授
若い人も年を取るのであるからそれも検討すべき。デジタル課税も大切。老老相続だから贈与税と相続税の一体もいいかもしれない。若い人にはイデコなど(EET的な資産形成)を勧める。在職老齢年金もタブー視してはいけないのではないか。
若い人は年寄りから税金を取れと考えているかもしれないが(そんなことないけど)、みんなが年を取るという考え方は大切。
・岡村委員 京都大学教授法学系
老後の備えが大切。資産移転の時期や資産移転の所得税負担をどうするかという考え方も重視。受贈者課税。被相続人の資産形成に課税するという考え方になっている。金融資産性所得がどのように出てくるのかという考え。年金というものをどのように把握しているのかという考え。実像把握をすべきではないか。
外国の制度を調査してきたから、今回のケースも外国の制度をもっと。
・神津委員 日税連会長
資産課税について2つ。
平成27年に相続税の基礎控除の引き下げで、相続税がかかる全体に占める割合は4%が8%へ増加、都内限定だと7%から15%強へと増加した。さらに基礎控除を下げようという意見があったが、慎重に検討すべきだ。
若年層への資産移転について。贈与税について。教育資金の贈与の非課税、結婚子育ての贈与の非課税は若年層への資産移転への意義はあるのであるが、資産格差を維持しお金持ち優遇税制に繋がりやすいのでこれらの(教育資金・結婚子育ての贈与税の非課税)特例は縮小方向がよいのでは。
もっと端的に若年層への資産移転を促すには、暦年贈与の非課税枠(拡大か?)に着目しお孫さんなどへ連年贈与などを利用するのはどうか
(おのでら:暦年贈与の非課税110万円を例えば上げたら、金持ち優遇税制になるのでは?さっきの教育資金・結婚子育ては金持ち優遇だからやめろと言ったのに?)
・井伊委員(男性)産業経済新聞社論説委員
資産形成に対する課税、金融資産に対する課税、勤労課税の財産に対する課税について検討すべきだ。
・野坂委員 ㈱読売新聞東京本社調査研究本部研究員
資産課税について。課税件数の10%、取得資産の30%が相続時精算課税制度が利用されていることが分かった。選択肢がある事は大事だと考えている。使い勝手の良さを追求していくのがいいと思う。
納税者の申告の利便性追求、事業主の過度な負担にならない点などについて指摘があった、深堀りしていくべきだ。
マイナンバーカード・マイナポータルの普及が大切なのでは。外国と比較して日本は遅れているから追いつくよう海外調査を頑張るべき。電子納税・納税環境のブラッシュアップしていくべき。
(おのでら:これ以上の海外調査は必要ですかね?それも税金でしょ。何を調べるのよ)
国際課税、イギリスがデジタル課税を決めた。日本の対応はどうすべきか、状況を詳細分析すべきだ。
・宮崎委員(女性) 千葉商科大学教授・国際教養学部長
老後の資産形成がキーワードだ。老後のイメージが大切ではないか。一人っ子同士が結婚すれば家は1つしかいらないので、不動産に関する税制も(検討すれば)生活のあり方そのものも変化する。
(おのでら:なかった視点でした)
ICT化、デジタル化の進展が早すぎて過渡期の連続である。それに合わせたシステムを作っても追いつくのかという懸念。バージョンアップばかりになってしまう。あくまでも手段であるという考え。マイナポータルにすれば一元管理できるのであるから、閲覧権限を検討すべきだ。完全に自動で計算できるシステムになる。全員が申告する制度が構築できる(年よりは無理でも)。あり方の問題なので議論したらいいと思う。
(おのでら:効率的ではあるが、徴税できればいいというものではないのでは。国民に選択させるなどがよいのでは)
中国の電子化が目覚ましい。デジタル決済が(国家に?)把握されているので(税務に?)紐づけされているので自動で進んでいる現実。
(おのでら:監視が前提の中国とは状況が違うのではないか)
システムを追いかけるのではなく、どう使いこなすか、という議論もよいのでは
・林委員 東京大学大学院経済学研究科教授
2つある。
1つ目は相続について。重要な税であると考えている。相続財産にどう課税するのかが大切だ(課税を逃れたものがある、という雰囲気もあり)。少子化で相続人の数が減っているので一人当たり相続取得財産が増加する。偏りが増えるのではないか(相続財産の種類の相続人間でという意味か)
贈与と相続のバランスについて、意思決定の中立性という考え方は大切。
2つ目。国だけ・地方だけではなく両方で情報シェアすべきだ。税目間でも情報をシェアすべきだ。所得税と相続税とで紐づけ出来るとよいのでは。
・田中委員 醍醐ビル㈱代表取締役社長
持ち主不明の相続財産がある。デジタル化と一緒に考えてもよいのでは。
・中里会長のまとめ
続きは年明け~。
・佐藤委員の意見書(欠席のため)一橋大学大学院経済学研究科、国際・公共政策大学院教授
アンダーラインは小野寺がやりました。
(おのでら:金融所得課税の一体化はちょっと分かりませんが税率25%はやりすぎじゃないでしょうか。庶民も株式を持っている。老後の資産形成の税制優遇は、お金がない人にメリットがありませんけど?年末調整から全員申告へという流れにはほぼ賛成。制度の簡素化もイイ。給与・年金控除の流れは止められないが基礎控除を上げるならイイ。所得区分見直しもイイ。税額控除方式はベスト。消失控除はほんと良くない。佐藤さん、イイ!)
○国際課税について ・国際協調(OECD行動計画)を基調にしつつも、英国におけるデジタル課税の導入という新たな現状を踏まえ、デジタル経済に対する「暫定的」な課税について検討する時期に来 ているのではないか?
○金融所得・資産課税について ・格差是正の観点から金融所得課税の一体化(損益通算)の進展を前提に課税の強化(税率の25%程度への引き上げ)を検討すべき。他方、勤労世代の(老後に向けた)資産形成を支援するよう非課税貯蓄の制度の充実、NISAを含めて分立する非課税投資・貯蓄の整理 と(英国の例に倣った)横断的な非課税枠の設定を行うべき。
○税務・制度の簡素化 ・雇用の多様化(フリーランスの増加)という新しい経済環境を踏まえて、将来的に源泉徴収・年末調整から個人の確定申告に所得税徴収の軸がシフトするものと考えられる。「税務執行」面では法定調書等申告の必要書類の電子化、マイナポータルの普及促進を含めて徴税のデジタル化を推し進める一方、個人にとって分かりやすいよう所得控除の見直しを含め 所得税の「制度」の「簡素化」を検討するべき。
〇中長期の税制の課題に向けた小委員会(専門委員会)の設置 ・デジタル課税や米国税制改正を含む法人課税の新たな展開や雇用の多様化に伴う税務・税制の簡素化など「中長期」の税制の課題について専門的な知見から検討する小委員会を設置 すべきではないか。
○今後の課題について ・所得税については「所得計算上の控除」(給与所得控除・公的年金等控除)の縮減と基礎控除等人的控除の拡充は今後も進める一方、給与所得・事業所得を含む「所得区分」に見直しを行うべき。所得の分類ではなく、経費(支出)が明瞭であれば実費控除を認める(給与所得控除の特定支出控除の拡充)一方、事業所得や雑所得でも概算控除を納税者が選択でき
る制度を設けることが一案。合わせて再分配機能を強化するよう所得控除から税額控除へ の移行を進める。(他方、消失型控除はかえって制度を複雑にする。)