29.9.25 経済的合理性について説明しても、やっぱり感情優先だよね、人間だもの。という話。
1、感情で意思決定する人たち
同業者あるあるで、「目先のお金の流れだけ見て、トータルコストを考えていない」ということがあるよね。今日の研修会でも講師からそんな話が出たよ。
税や社会保険料、生命保険や役員報酬、減価償却などの経費の先食いもそう。
医療費控除を受けたいから、年末に医者に行く・薬を買いだめするなんて意味ないよ、税務メリットに乏しいし必要のない支出でお金は減ります、と言ったことがあった。
ケースバイケースで、御社の場合は減価償却を先食いしても、いいことないから!それより役員報酬を見直して法人税等を納税した方が手元にキャッシュが残るでしょ、と言ったことがあった。
賃貸用不動産を借金して購入、不動産経営が赤字でもいい相続税対策のためだからって、そもそも相続税が出ないのに購入するんですか?と言ったことがあった。(相続人の身になってもらいたい。心の声)
投資信託の売却損は3年しか繰り越せないから今年、利益でるといいですね、と言ったことがあった。
実際の数字を提示しても、聞く耳を持たないことがあって、不思議だったよ。だから、「どうして経済的合理性がない選択をするんですか?」と聞いた。
「だって、ニュースで見た」
「コンサルタントにそう言われた」
「不動産屋の営業マンに得すると言われた」
「あの人に言われると、損すると分かってても買っちゃうのよねぇ」
「みんなやってるし」
「みんなやってるし」
数字って意味がないよね。人は、気分でモノを買うんだ。
課税の公平性もへったくれもなく、マスコミやコンサルタント、営業マンに政府が直接依頼する方が、税収アップにつながるよ。経済も活性化するかもしれない。(だから不動産や金融商品の措置法があるんだ!)
税理士は、納税者有利となる税務負担を考えてしまう。将来的に手元に残るお金、将来の生活プランを考えて話してしまう。地味で保守的で、つまんない存在かもしれないね。
2、医者の話
病人がいて、家族が医者に「こういう病院に転院したらいい」とアドバイスされた。家族が転院先を探しに行った。病人は、「自分を見捨てた」と悲しんだ。
医者に顛末を話した。
「その時はそう思うんです、冷静に考えれば合理性がないと分かってくれますよ」
3、税理士の仕事
当事者でも家族でもない税理士である私は、ただ、目の前の納税者に対して
「そんなの、税金対策じゃないよ」
「トータルでは税負担が多いよ」
「将来のことを考えてお金をつかって」
と言い続けるのが仕事でしょう。
納税者は経済的合理性を考えずに、みんながしていることをやりたいし、友達がうまくやったことを自分もやりたいよね。みんなが持っているものを、自分も持ちたいよね。
損しても。
多分、本当は説明を聞いて、少し分かってる。「(損するかもしれない。けど、買いたい)」
私は説明をすることもあるけど、納税者の意思を尊重するよ。今まですべての人が失敗したからといって、今回も失敗とは限らない。最初の成功者になればいいよ。(でも、挑戦の期間や金額の限度を決めてからね。)
税理士は長い付き合いになるので、家族みたいなもんなんだよ。だから、つい口が滑る。
「だから、言ったじゃないですか、失敗するって。あんなに説明したのに」
気持ち、わかる。
願わくば、その際にはしら~っと「ま、授業料よドンマイ」とスルーする税理士でありたい。
4、経済的合理性が必要なとき
経済的合理性のない人たちがたくさんいる。感情があるから、なんでも理屈では片付かないんだよね。いいんじゃない。自分の人生だもの、支持する。
自分のお金に関する意思決定なら、それでいいけど、国家運営などの組織のような自分以外のお金が関係するのであれば、国民感情だけではなく経済的合理性や公平感も考慮すべきよ。
印象操作で国民感情に訴える手法が使われていることってあるのかな。後から、「あの時の自分はなぜ」と思うことが、あるのかな。ちゃんと考えない人が悪い。
自分の頭で考えよう、ニュースなどの情報はインプットするものじゃなくて手段に過ぎないよ。組織の中で考える、賢い羊を目指そう。