サラリーマン税金訴訟を考える

29.12.30 11月に開催された憲法講座で紹介された、サラリーマン税金訴訟(大嶋訴訟)を改めて読む。以下は単なる私見。

※追記 2019.7.20

「おのでらさんは、サラリーマン税金訴訟が分かってない。もっと勉強しなさい」とベテランの先生にアドバイスを受けたことが2回もあり。

えー?ちゃんと読んだよ?と思いつつ、どこが分かっていなかったのか、ちょっと分かりました(多分!)

あざーす!

サラリーマン税金訴訟は、ベテランの先生でも人によって注目ポイントが違ったりしていて、なるほど奥深いなと思いましたわ。うーん、わたしは分かったのかしら。

・事の起こり

(裁判所HP 裁判例情報より)→ http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52662

(全文のPDFも14ページで、頑張れば読めるので是非)

昭和39年(1964)の所得税について無申告だと税務署から課税処分(約57000円)を受けた私立大学教授さんがいた。

給与所得のほかに雑所得があったのに申告しなかった。

で、大学教授さんは、「給与所得控除よりも多く必要経費を出費しているのに認められないのは自営業を優遇していてズルいから憲法14条違反」と訴えた。

地裁では教授が負けて、高裁でも教授が負けて、最高裁でも教授は負けた。最高裁の判決を待たずに、教授は亡くなった。

第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない

 

・裁判所の言い分

合理的区別は憲法14条違反ではない

「ま、自営業の方が税務上有利だよね。けどだからといって、差別とは言えないんじゃない」

税金は国家運営の経費を調達するものでしょ」

ところで、租税は、国家が、その課税権に基づき、特別の給付に対する反対給付としてでなく、その経費に充てるための資金を調達する目的をもつて、一定の要件に該当するすべての者に課する金銭給付

裁判所は税務署の味方をするから。けど、正確な資料を基礎とすることを前提ね」

租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである

「給与所得者は自らの危険がある自営業と違って、必要経費ってほとんどないのが普通でしょ。給与所得者の中にも経費が多い人もいるけど、収入金額との関連性がハッキリしない」

職場における勤務上必要な施設、器具、備品等に係る費用のたぐいは使用者において負担するのが通例であり、

給与所得者が勤務に関連して費用の支出をする場合であつても、各自の性格その他の主観的事情を反映して支出形態、金額を異にし、

収入金額との関連性が間接的かつ不明確とならざるを得ず

給与所得者は数が多いから、実額控除と給与所得控除との選択制にすると税務署が大変だしコストもかかるからイマイチ

「給与所得者は資産所得や自営業と違って死んだら収入がなくなるから担税力に乏しいし」

「源泉徴収制度があるから所得捕捉しやすいし前払い制度だから利子調整という観点からも給与所得控除は優れている」

右の給与所得控除は、前記のとおり給与所得に係る必要経費を概算的に控除しようとするものではあるが、なおその外に、

(1) 給与所得は本人の死亡等によつてその発生が途絶えるため資産所得や事業所得に比べて担税力に乏しいことを調整する、

(2) 給与所得は源泉徴収の方法で所得税が徴収されるため他の所得に比べて相対的により正確に捕捉されやすいことを調整する、

(3) 給与所得においては申告納税の場合に比べ平均して約五か月早期に所得税を納付することになるからその間の金利を調整する

「つまり、概算である給与所得控除と自営業者の実額控除との差ついては、合理的な区別だと思う」

「給与所得者は所得捕捉をばっちりされているのに、自営業者は所得捕捉率が低くてズルい、という主張については、所得捕捉率によって憲法上の差別とは言えない

「男女差別のような超大事な話ではない」

所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別であるから、厳格な基準による審査を必要とする場合でないことは明らかである

「でも、裁判官によっては、実額経費の方が多いのなら、ない部分の所得にも課税してしまうのはおかしいという意見もあった」

けだし、前述のごとく必要経費の額が給与所得控除の額を明らかに超える場合は、その超過部分については、もはや所得の観念を容れないものと考えるべきであつて、所得の存しないところに対し所得税を課する結果となるのであり、
およそ所得税賦課の基本理念に反することになるからである

「裁判官からは、”課税の公平”を特定の者が不利益も特別の利益も受けないことを言っている、という意見があった。事業所得者の租税負担は給与所得者よりも低いのは問題だから、給与所得者の不公平感は払拭していくべきだ、という意見もあった」

 憲法一四条一項の命ずる租税公平主義は、租税法の制定及びその執行につき、合理的理由なくして、特定の者を不利益に取り扱うことを禁止するのみでなく、特定の者に対し特別の利益を与えることをも禁止するものである。(略)

・感想

・原稿料なのか、雑所得の申告を忘れちゃった?

無申告の事実はしょうがないよね。これだけ見ると、逆ギレな感じもするんですが・・・。課税処分は57000円というところを見ると、教授だから、これ幸いと裁判を起こしたのかもね。

裁判には弁護士費用のほかに裁判所にお金を払うらしく。争う金額で価格が決まると聞いたことがある。なにそれ~へんなの。57000円ならいいかって感じだったのかな?

当初申告で雑所得を含めて制度が存在しない実額控除で給与所得控除を申告していたら、少しは風向きが変わっていたのでしょうか。

※追記 2019.7.20 わざと、無申告にして裁判所で争ってほしかったらしいです。世間に一石を投じてみんなに考えてほしかったんだ!みたいな?税理士会で建議しなかったの?裁判所頼りにしてしまうなんて、税理士はなにやってんだ!

・税金はなぜ負担すべきなのか

裁判官は「税金は国家運営のための財源調達」って言っちゃってるけどそうなの?共同の経費として恩恵を受けなくてもお支払いくださいませって言ってます。

解釈は個人の自由では?

税金とは何か、を裁判官の意見に縛られる必要はない。

税金と恩恵というワードの繋ぎ方があんまり好きじゃない。

※追記 2019.7.20 裁判官は、そういう趣旨で言ったわけではないみたいだった。税法を決めるのは裁判所じゃないから~。って話だったらしいです。

・給与所得者は今や勝ち組

当時は、自営業者が税務上有利だったんだね。今は、給与所得控除が増えすぎて抑制する時代になった。時代は変わったね。

「合理的区別は問題ない」ふわっとしてるけど、これはしょうがないのかな。

昔は自営業者がよかった時代(景気が良かったから?)だったのかもね。

今は、自営業者は将来保証もなくいつ仕事がなくなるのか冷や冷やしながら、税務調査では争う時間短縮のため諦めて追徴を納税する。

帳簿も付けないとならぬし、取引を切られても失業保険もなく。レシート貰い損ねて記憶も定まらず、経費を諦めるケースも多いんだよ。現在は、そのような時代になっている。きっと、当時とは違うよ。

給与所得者は、今や勝ち組だよ。かじりついてでも会社にいるべきよ。

・立法裁量論。裁判所は税務署の味方

「裁判所は税務署の味方するから」立法裁量論。ちゃんとした資料があれば、税務署の裁量をひいきしますと言っている。

税務署にしか集まらないデータがあり、それは開示しないのに、裁判所ではその税務署しか知りえないデータで判断を下すっておかしい。

つまり、税務関連については裁判所など当てにならぬ。所詮裁判官も公務員だもんね。

もうこうなったらヤケクソで賦課課税方式にして、課税庁の気に入らない納税者には重い税負担をかければ?訴えても、裁判所は税務署の味方ってなにその恐怖政治。

※追記 2019.7.20 うーん、極論だけど本質はこの通りでは?ただ、租税法律主義で裁判所は考えているように思う、とは弁護士さんのご意見です。そうなのか~。という訳で、上記の「裁判所は税務署の味方」は事実とは違うようでした。

・裁判所が税法を決める?

裁判官って法律の専門家でしょ。主権は国民なのに、税法の仕組みやあり方について、そちらに決められることに国民として違和感が残ります。

そして、それをいつまでもいつまでも大事に「決まり」として通用してしまう世の中の仕組みって当たり前なのかな。

イチから考えるのも時間の無駄だし、昔の判決を下した裁判官のメンツを立てましょ~って感じなんでしょうか。

※追記 2019.7.20 今回のサラリーマン税金訴訟について、税法の仕組みやあり方については国民が考えることだから、裁判所が介入しません、というのが裁判所のスタンスだと学びました!ので、「裁判所が税法を決めるなんて!」という私の違和感は誤り、です。訂正いたします!

ま、裁判官のメンツ云々はその通りだと思うけどね。なんかね。

・権威に支配される人々

権威が世の中を支配する社会で良いのか?

「偉い人」が深い知識を持って考えてくれたことを考えもせずそのまま使う、というのは「偉い人」に対して誠意がないと思う。

権威の言うことは参考にして、大事なことは各自が考えていけばいいのでは?

権威は、正しく使わせていただきたい。

 

けんい

権威

  1. 1.

    すぐれた者として、他人を威圧して自分に従わせる威力。また、万人が認めて従わなければならないような価値の力。

     「親の―」

  2. 2.

    専門の知識・技術について、その方面で最高の人だと一般に認められている人。大家

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。