特別徴収税額通知書の税制改悪

30.1.26 税理士会の要望により政治家が「実現させた」改正のうち、最もしょうもないと私が思うのは、特別徴収税額通知書の改正。

・特別徴収税額通知書 改正内容

従業員の住民税を毎月の給与から天引きする制度を特別徴収税額制度といい、これはほぼ拒否できない制度。

「毎月、住民税を給与天引きして我が町へ納税してくださいね、従業員任せにすると納税をさぼるから、事業主の責任でよろしく」というのが特別徴収制度です。

で、毎年5月頃に各市町村から事業主あてに届く「〇〇さんは毎月○○円を天引きよろしく。詳細はこちら」と金額と課税の内容が書かれた書類のことを特別徴収税額通知書、と言っている。

問題は、この特別徴収税額通知書にマイナンバーが記載されていたことで、税理士が怒っちゃって、事業主に通知するものはマイナンバーを記載するな!という改正が通ってしまった。

事業主がわざわざ従業員にマイナンバー確認の手間を減らせるチャンスだったのにねぇ。

・誰がトクするのか聞きたい改正

市役所の人は仕事に規制が入る分、気を遣う手間が増え、経理担当者は給与支払総括表を送付の際ひと手間増え、税務署はマイナンバー把握に苦慮し、事業主の事務管理負担は従来通り。(マイナンバー記載の有無にかかわらず、個人情報は厳重管理だからネ)

誰がトクするのよ!

以前より、「住民税の特別徴収税額通知書にマイナンバーが記載されているのはけしからん」という意見はあったらしい。従業員の同意がないのに、役所からの通知により事業主が従業員のマイナンバーを知ってよいのか、という意見もあったけど、多くは、

「罰則があるマイナンバー記載があると書類管理が大変だからイヤ」

「こっちは厳重に簡易書留などで郵送しているのに、普通郵便に送ってくるとは何事だ」

といった、税理士のエゴじゃね?という意見も多かった。

従業員が雇用主にマイナンバーを教えていないのは、お互いが面倒くさいからでしょ?

雇用主がマイナンバーを知ったところで、何か出来るわけでもないのが建前。マイナンバーを教えたくないけど、本人に無断で住民税の特別徴収税額通知書に記載される個人情報については、雇用主が知るシステムはいいのか???

マイナンバーについての風評被害ってあるよね。私は賛成派だからそう思うのかもしれない。

・住民税の通知書は雇用主が知るべきではない

どっちかというと、住民税の金額の方が知らせたくないんじゃない。だって、障碍者控除・寡婦寡夫控除・小規模共済・生命保険料・寄付金・扶養親族などが一気にばれてしまう。

同僚と支給給与金額は同じで一人暮らしのはずが、住民税の特別徴収税額が全然違う、というケースがあるわけ。

例えば、会社に隠しているけど、シングルマザー・自分や親族に障害がある・実は実家の会社役員で小規模共済に加入している・イデコにがっつり加入している・資産家だからふるさと納税を上限まで行っている・隠し子を扶養している・田舎の親を扶養しているが出世に響くから黙っている・所得に不釣り合いなほど高額な生命保険に入っている・不動産経営をしていて修繕費で赤字となったため給与と損益通算した・・・・

など、会社や経理の人にはバレたくない事情があるわけ。守秘義務があるとはいえ、隣の席で一緒に働く人に知られているという事実は消せないよね。

よくない!

住民税の特別徴収制度は良くない!だから、住民税は源泉徴収制度を導入すべきである!(しつこい)

(過去記事)住民税の源泉徴収制度導入 → https://mina-office.com/2017/10/24/juuminzei-gensen/

(過去記事)年末調整・特別徴収進化論 → https://mina-office.com/2017/10/02/nenmatsu-chosei/

・今回の改正による影響

川崎市の場合、今回の改正により、住民税特別徴収税額通知書を書面とデータでもらっていた場合には若干の手続き変更が発生。

住民税のお知らせ欄は「電子データ」を選択し、メールアドレスの末尾に_copyと記載してね!とのこと。

例えば、1111@aaa.co.jp の場合には、 1111@aaa.co.jp_copyとしてください、だって。

今回、やってみたわ。どうなるやら。

他の自治体は、どうなんでしょう??

・政治的駆け引き

税理士政治連盟の平成30年税制改正要望の重要事項には、

単一税率(軽減税率反対、帳簿要件など)、償却資産税はいつか廃止、所得税抜本改革、繰越欠損金、個人事業主への番号付番

がありました。

なんか知らないけど、いきなり「住民税の特別徴収税額通知書にマイナンバー記載をやめること」という6個目がヒョイと入ってきちゃってた。「市町村の役人に命令すれば何とかなるだけ」の項目を入れちゃった。妥協点を出しちゃっただけじゃないか!

政府の考えでは、はっきりと「軽減税率やります」「固定資産税は大事だから変えない」と書いてある。

税理士政治連盟の新聞を読んだ。会長が、総務大臣との新年の対談にて「あれだけお願いした単一税率も償却資産税もスルーしましたね。ニコッ」と政治家にプレッシャーをかけ、大臣は「特別徴収税額通知書の件は叶えましたよね。ニコッ。なにか?」と言われるという。

何やってんだよぅ・・・。どうせ、今回の重要論点を1つも採用されなければ、平成31年に「去年は何もしてくれなったよね?ね?」と圧力かけれたのにさ。

ま~、税理士の皆様の意見の集約だから、私だけがギャースカ言ってもしょうがないんだけども、私は賛成してないからね!

住民税の特別徴収通知が面倒になったのは、私のせいじゃないよ!

事業主のことばかりでなく、もっと、国民の生活を考えてもらいたい!信頼される税理士制度ってそういうところからなんじゃないの。

私は引き続き、次世代型の税理士を目指してがんばるぞ、オーッ!

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。