30.10.20 徒弟制度とは「技能教育」と公式には書かれているようであるが、実際には違う気がする。
1、税理士業界の徒弟制度
・実務経験のために仕方なく
税理士になるには、基本的に税理士試験に合格し、2年間の「会計に関する事務経験」が必要となる。
(私は税務に関する事務であるべき、という主張をしているが!税理士事務所勤務だって、税務に関する事務と考えられるのではないか。この意見は割と不人気だけど。)
・受験生は消耗品。
昔ながらの多くの税理士事務所・会計事務所は、所長の税理士先生が従業員の税理士受験生を雇い、「実務の勉強させてあげているんだから」と薄給でこき使い、サービス残業はあなたの知識が少ないのが悪いと言い、仕事は丸投げで教えない、何かあれば従業員のせい、という事務所が多いと思う。
慢性的に仕事がきつく、仕事の押し付け合いになりがちで横のつながりが薄く、事業主の意味わからない資料を一人で考えて理解するため仲間づくりの時間がなく、所長は税法に疎くいつも採用面接ばかり、仕事は自分で調べてこなす、という事務所が多いと思う。
上記が、よくいわれる「税理士業界の徒弟制度」です。
・それでも勤めて学ぶもの
税理士業界の徒弟制度の良さは、
所長のヘマを目の当たりにすること、責任回避技術を盗み取れること、値上げ交渉の交わし方を盗み取れること、クライアントから税理士の悪口を聞けること、所長のお客さんだから他人事で挑戦できること、嫌になったら辞められること、前任者の処理を学べること、クライアントから学べることなどがあるかな。
ま、意地悪な書き方しているけど、たまには仕事を教えてくれる。
上記のことから税理士登録にあたり、実務経験は必須だと、私は思う。
実務経験証明書は、雇用保険加入履歴的なもので代用すべきだと思う。受験生に本試験当日に休みをくれない事務所は許せんと思うわ。(私はしっかり休みをもらえた)
2、井波彫刻の徒弟制度
今日は、近所の日本民家園にて、富山県南砺(なんと、と読む)市の木彫刻で有名な井波彫刻師さんが来てお話をしてくれた。
現在、井波彫刻師は200人ほど。最盛期は300人ほどだったみたいですよ。
井波彫刻にも徒弟制度というものがあり。こちらは、5年間の職業訓練所なんだって。
(井波木彫刻工芸高等職業訓練所)→ http://www.inamichoukoku.com/kunren/index.html
なんと親方の自宅に住み込むらしい。ひぇぇ~!そして週に1日、学校に通い、基礎や自由な発想を表現することを教えるんだって。こちらの職業訓練所は、どうやら親方たちがお金を出し合って作ったらしいですよ。職人がいなくなると技術が失われてしまうから。
ビデオ放映をしてくれたけれど、束縛を嫌う若者が親方の家に住み込むことに困難もあるし、5年という長期間に耐え切れずに辞める人は必ずいるらしい。1年目の終わり、3年目の終わり、5年目の終わりに必ずトラブルんだ~との親方談。
昔は弟子入りさせたら数年は道具は触らせずに自宅の手伝いをさせていたらしいけど、今はまだ基礎が出来ていなくても道具を触ってやらせてみるらしい。
欄間、というらしいけど、いい旅館とかのふすまの上などに彫刻してあるアレです。
あれを作れるようになるまで、10年かかるんだってさ。5年なんて、やっと申告書の書き方が分かった程度のものなんだろう。
人間の1年は犬の2年、みたいに、職業ごとに一人前になるまでの期間が色々よね。ヒトとイヌの年齢の例えには意味がないけど。エヘヘ。
ところで、5年間、親方の元で実務と通学してしっかり勉強しても、独立して食えるかどうかは保障がないんだそうです。
職業訓練所の入学年齢制限が25歳。卒業して30歳。まったく仕事がないこともないんだろうけれども、マーケット規模が広くないわけだから、仕事をとるのに苦労するよね。ヨボヨボ彫刻師の跡継ぎになればよさそうだけど、その人の技術は承継できない業種なわけで。
3、メシが食えれば・・・・
税理士業界と、伝統的な芸術家を一緒にするなと言われそうですが、まぁ税理士もある種クリエイティブな仕事なのですよ。まぁいいじゃない、色々言わせてよ。
徒弟制度には、色んな問題はあるのだけれども、一番の問題は「夢がかなっても、将来的にメシが食えるのか?」な気がする。