介護保険料の特別徴収と社会保険料控除

31.3.27 妻の年金から天引きされる介護保険料は、夫の社会保険料控除になりません。これがルールです。変だよね!

平成28年税制改正の話し合いでは、「税制改正して、妻の年金天引き介護保険料を夫の社会保険料控除OKにしますか?」という議論が行われていたんだと思うわ。

が、平成29年は「介護保険法が改正されそうだし、そっちに頼ろう」ということで税制改正に至らず。(2、に記載)

1、特別徴収の介護保険料の社保控除再検討を

私は、おかしいと思うの。

妻のぽっちり年金から介護保険料が天引きされるのは、徴収側の都合で納税者が選択できないんだよね?

例えば、後期高齢者健康保険であれば、妻の分を夫の口座から引き落としにすれば、夫の社会保険料控除になる。(世帯主に請求書が来るからかも)選択肢が用意されていて納税者が選べるのが後期高齢者健康保険料の社会保険料控除、ともいえる。

(※31.3.30追記。国民健康保険料は世帯主or擬制世帯主が納税義務者で、配偶者の連帯債務がなさそうでした)

(国税庁HP タックスアンサー 1130社会保険料控除 ) → https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130_qa.htm

介護保険料が軽視されている!健康保険ばっかりヒイキしないでよ。

しかも、よくよく介護保険法を読んだら、後期高齢者健康保険料や国民年金のように世帯主や配偶者に連帯納付義務があるじゃん。

だったら、「支払った者」にそこまでこだわらなくて良くない?個人単位課税だからダメ?だったら、介護保険料の連帯納付義務を廃止すべきでは?

社会保険料は社会政策上の要請のためにある。(あと、個人的事情への配慮も。お金持ちの税率を下げる作用もあるのです)

個人単位課税だから「支払った者」にこだわるのは分かる。夫婦別算制だから。

例えば、イデコ(ideco)のように、将来貰える社会保険料控除とは異なるのがシニアの社会保険料なのであるし、選択肢がないこと、専業主婦への配慮もあってしかるべきでは?

だから、年金天引きの介護保険料は夫婦に限って扶養している側につけてもOKにすればいいんじゃない。だって、現金支払いや口座引き落としを選べる国民健康保険との違いが説明できないじゃないか。

介護保険料を特別徴収のままとするのはいいと思うんだよ。だって、徴税コストがかからないし、とりっぱぐれがないもの。疲弊している介護保険制度に負担をかけずに税法でなんとかしたらどうかしら。政令あたりで。

(関連過去記事 介護保険料の改正は持ち越し) → https://mina-office.com/2017/01/12/kaigohoken/

2、介護保険料の税制改正ならず。

介護保険料の社会保険料控除については、過去から議論されているようでした。

平成29年税制改正大綱@自民党 (PDF)→ https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/133810_1.pdf?_ga=2.242331266.1467162480.1553696872-1088389283.1553696872

の16ページには。

9 その他

平成28年度税制改正大綱において「平成29年度税制改正において結論を得る」こととしていた介護保険料等に係る社会保険料控除の見直しについては、世帯主が世帯員の分もまとめて納付することが一般的な国民年金保険料の納付等に影響が及ぶ可能性があることを踏まえ、介護保険制度の見直しにより対応が図られる見込みであることに鑑み、税制改正は行わないこととする。

と、あります。(ベタ打ちした)

介護保険料等の社会保険料控除は、生計一夫婦ならいいんじゃない、という議論は、配偶者控除の所得逓減制度導入の経緯にも影響しかねないので却下されたのかもね。

3、介護保険法を読む

介護保険の徴収についての法律を読んでみましょう。

介護保険法 → http://www.os.rim.or.jp/~dentist/care/inf/low.html

130条から135条あたりを読んでみますと。

(1)介護保険料の徴収方法の根拠法

介護保険法131条で、「介護保険料は、年金機構等からの特別徴収(年金天引き)で」と書いてある。「特別徴収の方法による場合を除くほか、普通徴収(自分で払う)の方法によらなければならぬ」と書いてある。カッコが飛ばせるように、改行をいれておきました。どういたしまして。

第百三十一条 第百二十九条の保険料の徴収については、第百三十五条の規定により特別徴収

(国民年金法による老齢基礎年金その他の同法又は厚生年金保険法による老齢、障害又は死亡を支給事由とする年金たる給付であって政令で定めるもの及びその他これらの年金たる給付に類する老齢若しくは退職、障害又は死亡を支給事由とする年金たる給付であって政令で定めるもの(以下「老齢等年金給付」という。)の支払をする者(以下「年金保険者」という。)に保険料を徴収させ、かつ、その徴収すべき保険料を納入させることをいう。以下同じ。)

の方法による場合を除くほか、

普通徴収

(市町村が、保険料を課せられた第一号被保険者又は当該第一号被保険者の属する世帯の世帯主若しくは当該第一号被保険者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)に対し、地方自治法第二百三十一条の規定により納入の通知をすることによって保険料を徴収することをいう。以下同じ。)

の方法によらなければならない。

(2)介護保険料は年金天引きの根拠法

135条は以下に引用致します。

流れとして、65歳以上の年金受給者の年金給付額の多くは、お住まいの市町村に自動で情報が集まっていて、そこから市町村が介護保険料を計算でき、その介護保険料について、市町村が年金機構に「天引きしておくように」と依頼するというループになっているようです。

(といっても、すべての年金給付額がお知らせされる訳ではないようなので、確定申告の提出義務がある方はサボらないように願います)

134条を呼んで推測するに、年金の支払い側は市町村に「〇〇さん(65歳以上)に年金を〇〇円支給したよ!」と2カ月ごとにお知らせするシステムのようです。(引用は省略)

(保険料の特別徴収)

第百三十五条 市町村は、前条第一項の規定による通知が行われた場合においては、当該通知に係る第一号被保険者

(災害その他の特別の事情があることにより、特別徴収の方法によって保険料を徴収することが著しく困難であると認めるものその他政令で定めるものを除く。次項及び第三項において同じ。)

に対して課する当該年度の保険料の全部

(厚生労働省令で定める場合にあっては、その一部)を、

特別徴収の方法によって徴収するものとする。

ただし、当該通知に係る第一号被保険者が少ないことその他の特別の事情があることにより、特別徴収を行うことが適当でないと認められる市町村においては、特別徴収の方法によらないことができる。

(3)介護保険料の連帯納付義務

ところで、(国民健康保険料はなさそう)後期高齢者健康保険料や国民年金は、自分での納付をサボったら、配偶者は連帯納付となるんだって!

介護保険料は年金天引きが原則(年間の年金が18万円未満は天引きなし)だけど、なんらかの事情により普通徴収で自分払いの状況では、夫婦が連帯して納付義務があります。事実婚でも連帯納付義務。

しっかり払わせないとね。

 

(普通徴収に係る保険料の納付義務)

第百三十二条 第一号被保険者は、市町村がその者の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合においては、当該保険料を納付しなければならない。

2 世帯主は、市町村が当該世帯に属する第一号被保険者の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合において、当該保険料を連帯して納付する義務を負う。

3 配偶者の一方は、市町村が第一号被保険者たる他方の保険料を普通徴収の方法によって徴収しようとする場合において、当該保険料を連帯して納付する義務を負う。

(4)年金機構からのハガキ多すぎ事件。犯人は

年金機構からのお知らせハガキが多すぎる犯人は介護保険法136条です。ぬぅ。

しかも。4月~9月の累積の過不足の介護保険料について、10月以降に正しい金額を反映するシステム!もうこういうのはやめて。年間通して一定額にしてもらって、12月か2月の年金で調整した方がいいよ。「介護保険料の年末調整制度」これだ!

(特別徴収額の通知等)

第百三十六条 市町村は、第百三十四条第一項の規定による通知が行われた場合において、前条第一項並びに第五項及び第六項(同条第一項に係る部分に限る。)の規定により特別徴収の方法によって保険料を徴収しようとするときは、特別徴収対象被保険者に係る保険料を特別徴収の方法によって徴収する旨、当該特別徴収対象被保険者に係る支払回数割保険料額その他厚生労働省令で定める事項を、

特別徴収義務者及び特別徴収対象被保険者に通知しなければならない。

2 前項の支払回数割保険料額は、厚生労働省令で定めるところにより、当該特別徴収対象被保険者につき、特別徴収の方法によって徴収する保険料額(以下「特別徴収対象保険料額」という。)から、前条第三項並びに第百四十条第一項及び第二項の規定により当該年の四月一日から九月三十日までの間に徴収される保険料額の合計額を控除して得た額を、当該年の十月一日から翌年三月三十一日までの間における当該特別徴収対象年金給付の支払の回数で除して得た額とする。

 

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。