2022.8.17 政府税制調査会レポ。開催日は2022年8月5日です。税財政の現状について、委員の意見発言の回です。わたしのメモ!重要意見に★を付けました。
政府税制調査会 内閣府HPより→ https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2022/4zen13kai.html
0.34.00より。2022年8月19日まで、視聴可能です!(議事録が追って公開されます)
事務局からの説明を受けての続き。前回のわたしの記事 → https://mina-office.com/2022/08/16/seifu-zeicho-2022-13-genjo/
今回の委員の意見を受けての、おのでらの感想レポ → https://mina-office.com/2022/08/17/seifu-zeicho-2022-13-repo/
クリックできる目次
- 岡崎委員(高知市長)
- ★清家委員(慶應義塾学事顧問/日本赤十字社社長)
- 秋田委員(学習院大学文学部教授 )
- ★佐藤主光委員(一橋大学大学院経済学研究科、国際・公共政策大学院教授)
- 宮永委員(三菱重工業 取締役)
- ☆土居委員(慶應義塾大学経済学部教授)
- 寺井委員(慶應義塾大学経済学部教授)
- 田中委員(醍醐ビル㈱代表取締役社長 )
- 翁委員(㈱日本総合研究所理事長 )
- 林委員(東京大学大学院経済学研究科教授)
- 田近委員(一橋大学名誉教授)
- 辻委員(一橋大学大学院法学研究科教授)
- 梶川委員(太陽有限責任監査法人代表社員会長 )
- 神津委員(税理士)
- 秋池委員(ボストン・コンサルティング・グループ日本共同代表 )
- 岡崎委員(高知市長)2回目
- ★岡村委員(京都大学法学系(大学院法学研究科)教授 )
- ☆武田委員(三菱総合研究所研究理事 )
- ★田中特別委員(醍醐ビル㈱代表取締役社長 )2回目
- ★沼尾委員(東洋大学国際学部教授 )
- 神野委員(東京大学名誉教授)
- 関連
岡崎委員(高知市長)
コロナの関係で、観光業・公共交通などの打撃が大きい。政府のコロナ対策のコロナ融資が利いているので失業率が助かっている。3年据え置きのため来年から償還が始まるため、懸念がある。陳情を受けるのは、償還期間の延長だ。地方の重い課題となっている。
★清家委員(慶應義塾学事顧問/日本赤十字社社長)
労働経済学者として意見を言いたい。少子高齢化が進む中で国の制度の在り方は2つある。
清家1、配偶者控除と公的年金等控除
支え手を増やすため、女性と高齢者の労働力の促進。そのために配偶者控除の見直し・廃止、公的年金等控除の見直し・廃止(在職老齢年金停止をなくす)
清家2、人的資本投資、消費税増税?
一人当たりの生産性向上。人的資本投資が必要。賃金向上。勤労所得(個人課税)への負担ではなく消費税等の負担増の方がいい。
秋田委員(学習院大学文学部教授 )
支え手増加の観点から配偶者控除や賃金の見直しは検討していくことに賛成する。教育の研究者の視点から、税制への広報、若い子と触れ合いたい。主権者教育。教師が資料を有効活用するのがよいのでは。
(おのでら:税制の洗脳教育はあんまり好きじゃない。軍国主義ならぬ納税主義みたいなのやめてほしい。あと、学校の先生はもうパンパンだから、やめて・・・。小学校・中学校は、団体生活を学ぶだけでも十分だと思うんだ)
46.16
★佐藤主光委員(一橋大学大学院経済学研究科、国際・公共政策大学院教授)
主光1、受益と負担★
広報について、滋賀県の公共交通税について。地元の住民の負担が増えるため、受益と負担の明確なリンクがあるため、良い。(県がやっていた環境森林税のように、使途が明確なものがいい)
国税・地方税(固定資産税、普通税)では難しいのだが、自分たちが受けている公共サービスに引き寄せる形で(税金が使われているという)説明が出来るのがいい。世帯の属性別(子育て世帯、単身世帯、子供世代、高齢世代、など)に周知できるパンフレットがあるとよいと考える。
主光2、環境税
当面の課題としてGX債。グリーン債の償還財源を明確にしたうえで、とあるので償還財源を明確にすべき。償還財源は環境税になると思う。今でいう炭素税になると思う。償還財源。課税べースの抜本的な見直しを含めて議論すべきだ。
主光3、法人税
法人税について、基調が変わってきた。これまでの政府税調では課税ベースを広くして税率を抑えるという話だったが、いつの間にか賃上げ税制などの措置法が横行している。オープンイノベーション税制の話、法人税の税率アップの意見も出てきている。法人税についても検討すべきだ。
主光4、所得税(働き方に中立な)★
所得税について、金融所得課税の議論は避けられない。(非課税世帯には負担増とさせない前提、のような発言あり)
中長期的な課題、所得税の議論の積み残しとして、所得控除は税額控除にすべきだ。清家委員のご意見のように勤労所得への増税を避けるなら、所得税をある程度フラット化・簡素化すべきだ。働き方の中立性の視点から、フリーランス(事業所得)への概算経費を考える・(給与所得者の実額経費を認めるべきか特定支出の制度だけではなく)給与所得控除の見直しについて議論すべきだ。
所得税は、再分配機能の観点から、給付と一体に考えるべき。
主光5、個人住民税★
地方税について、先日のアメリカ出張で面白い話を聞いたので情報共有しますが、日本は1月1日に所在する自治体に納税するが、アメリカでは住居と勤務地と、と途方もないことをやっている。今の日本では、テレワークが進み、年の半分を避暑地で過ごすということもある。
個人住民税の納め方について、1月1日の基準でよいのか、ライフスタイル変化に伴い、納税は住所地でよいのか、また、個人住民税の現年課税化への流れが当然だと考えます。個人住民税についても議論すべきだ。(所得が変動する、住まいが変動するため)
(PC越しに拍手するわたし)
51.22
宮永委員(三菱重工業 取締役)
経済界の立場から、政府の目的に沿い投資を頑張りたい。ヒトへの投資についてコロナ前水準に戻っている企業は賃上げしている。政府からのインセンティブをいただきながら頑張りたい。短期的な目線からとれるところから取るではなく、実現の時間軸をバランスよく考えていただきたい。企業の国際競争力の観点から国際課税・デジタル課税などに注目している。外国子会社合算税制の簡素化をお願いしたい。
(おのでら:大企業は恩恵が大きいので、しっかり納税してほしいものです・・・・)
56.00
☆土居委員(慶應義塾大学経済学部教授)
足元の物価高の中、増税するのかと国民から不満に思われないようにしたい。
所得課税から消費課税へのシフトが必要。税負担の世代間格差の是正が必要だ。公的年金等控除の見直しと配偶者控除の見直しの意見に賛成する。ただ、世帯間控除がよいと考えている。
EBPMを構築することが必要。税務データを用いた効果検証が出来る制度を構築するべきだ。
(おのでら:EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること、だそうです。内閣府HPより)
広報について、大学生に効果があるのは医療の給付だと思うのでその視点で広報するのがいい。教科書を作っても教員の方に採用されないと反映されない。教員の理解を得る努力が必要。
01.01.30
寺井委員(慶應義塾大学経済学部教授)
退職所得税制について、同じ会社に居続ける方が税務メリットがあるため、労働者の成長を妨げている。
田中委員(醍醐ビル㈱代表取締役社長 )
給料を上げて末端まで、という考えは限定的で、地域コミュニティ・中小企業が活躍するべきでは。国の政策、企業の政策ではなく。
翁委員(㈱日本総合研究所理事長 )
配偶者控除の見直し、公的年金等控除の見直し、退職金税制の見直し、人的資本を促すべきだ。預貯金が多くなっているため、(投資させるべき?)。EPPMの体制を作ることが重要。
林委員(東京大学大学院経済学研究科教授)
配偶者控除について。EBPMについて。配偶者控除の改正による影響を把握すべきだ。そのあとで議論するべきだ。
<中里委員「今日はどうしたんでしょう?」の発言。挙手が少なかった?ここから時間を埋めるタイム?>
田近委員(一橋大学名誉教授)
貯蓄から投資へ、について。高齢者にとっては、貯蓄を投資に回すことが理解できないであろう、投資は危険じゃないか、と思うだろう。
老後の資産形成として、公的年金・私的年金(確定拠出年金)・退職金、がある。問題の全体像を見るべきだ。
辻委員(一橋大学大学院法学研究科教授)
全世代型の社会保障として配偶者控除の論点になっている。出生率を上げる制度を作るのが大事だと考えている。成果は中長期ではなければ分からない。EBPMを駆使して配偶者控除の効果を測定できるかもしれないが、外国でも計測に時間がかかっている。手探りでも子育てを支えていくべきだ。
支援策の変更が多いと国民から疑念に思われてもいけないので、安定的な全世代型の社会保障制度を構築するべきだ。
梶川委員(太陽有限責任監査法人代表社員会長 )
少子高齢化について。(自分も高齢者だが)高齢者に頑張ってもらうのが重要なのでは。公的年金等控除の見直しはしてもらう。スタートアップ支援に賛成。高齢者だから危ないではなく、リスクセーブが出来る制度がいい。リターンについて勤労所得とのバランスのいい税負担がよい。出すときに税の配慮があるといいと考える。高齢者は社会保障と一緒に考えないと、他の所得がある方と無い方のバランス。
広報について受益と負担について分かりやすく国民に知らせてほしい。受益が勝っている。高パブリック受益が当たり前になっている。
神津委員(税理士)
神津1、
田中委員の意見、地域コミュニティについて同意する。
神津2、所得控除は基礎控除へ
配偶者控除について。「租税法」(金子)によると、憲法25条に定める課税最低限があるので、必要だと考える。所得控除は基礎控除に寄せることが望ましい。
(おのでら:おそらく、人的所得控除の事を言っている)
神津3、租税教育・・・・
税の広報について。日税連では学生への租税教育を行っている。未来の教員を対象に租税教育を行っている。将来的には租税教育を義務化してほしいと考えている。企業では経理に人気がないと聞くので、解決に寄与したい。
(おのでら:今回の神津会長の意見は、基礎控除の話だけでよかったのに。租税教育義務化、税理士業界のエゴっぽくて聞いててガッカリした。あんな洗脳教育を義務化しないでほしい)
秋池委員(ボストン・コンサルティング・グループ日本共同代表 )
少子化対策について。社会の宝なので今の子供、安心して子育てできるような制度を希望する。
生産性向上について。コスト削減、業務効率化だけではなく、適正価格への転嫁が必要。賃上げ税制も結構だが、適正価格への転嫁の視点も気にしたい。
岡崎委員(高知市長)2回目
17頁。村木さんの時代に、保育園にかかる金額を企業に負担してほしい(未来の労働者だから)と回っていた時代があった。どのようなイメージや施策案があるのか?
(事務局)具体的な案は俎上にない。子供子育ての財源について、17ページに記載している以上の事はありません。
1.30.00
★岡村委員(京都大学法学系(大学院法学研究科)教授 )
岡村1、課税単位
配偶者控除について。課税単位の問題としても考えるべきだ。
税と社会保障の一体化という意見があったが、税は個人単位、社会保障は世帯合算であるため、つなげるとするとそうなっていくのかと思う。
岡村2、消費増税
土居委員からのご意見で今、インフレの中で消費に関する課税(増税)がどうかという視点があった。税がどう役立っているかという視点、消費に対する負担が当然だと思う。支援を減らして増税するのは国民の理解が得られないだろう。現役世帯の高齢者の医療費負担が増加する。増税するには、国民に分かりやすい説明が必要であろう。
岡村3、給与所得と雑所得
納税環境整備、雑所得を今度どう考えていくべきか。先ほど必要経費の話が出ていたが、青色申告ができない(記帳しても特典がない)、(勤労)給与所得と雑所得との不公平感、働き方の中立、今まで何も申告の心配いらなかった給与所得者が雑所得者になってしまい、考えていなかった、という不安が生じていることがあるようだ。
岡村4、年金税制
公的年金等控除について(関連し)、学生がキツキツで支払った国民年金の社会保険料控除が受けられないまま公的年金等控除が減るのは理論上は不公平感があるのでは。
(おのでら:その場合はご家族が社会保険料控除を受けるケースが多いと思いますので、大丈夫だと思います。多分、岡村先生の意見は、「払った時に社会保険料控除で税負担軽減し、受取時に公的年金等控除で税負担軽減はヘンでは?」なのかしら)
岡村5、法人課税(国際)
法人税の課税ベースの話題があった。国際基準に合わせた法人税の課税ベースになるならば、発想を広く持って、国際会計基準を受け入れるのか。二重の事務負担がないよう、整合性がとれるようにすべきだ。
☆武田委員(三菱総合研究所研究理事 )
生産性を高めるため、女性と高齢者の労働力。配偶者控除の見直し、退職金税制の見直しをすべきだ。
人への投資をすべきだ。DX,GX、イノベーション、変わっていくべきだ。DXはタスクが増えていく、それを担える人材が必要になる。GXを進めるうえで労働移動・スキルアップ、リカレントが必要。
適正価格への転嫁と賃金上昇が必要だ。
データの活用と見える化が必要。当社が行うアンケートによると将来不安が上位に来る。見える化で漠然とした不安を払拭できる。施策の効果測定も必要。
★田中特別委員(醍醐ビル㈱代表取締役社長 )2回目
子育て支援は必要だが、十分な議論がないまま企業負担をしている。議論はしてほしいと思う。
(おのでら:勇気のある発言だと感じる。非常に重要な指摘だと思います)
★沼尾委員(東洋大学国際学部教授 )
沼尾1、租税教育
税に対する広報について。受益と負担の見える化を国民に理解してもらうために租税教育という観点があった。教えるのではなく学び考える視点に期待する。
沼尾2、金融所得課税
スタートアップがしづらい税制だという意見があった。過去の税調でも金融所得課税をかけるべき・いまではない、という議論があった。今、もう一度議論するのがいいと思う。
沼尾3、インバウンド・海外労働力
コロナ感染症が終わった後、インバウント・海外からの労働力について税制の在り方をどう考えていくのか。
沼尾4、個人住民税
佐藤委員から、個人住民税について1月1日でよいのかという意見があった。
沼尾5、観光税
観光税の意見がある。観光税だけでいいのか、という意見。
神野委員(東京大学名誉教授)
感想めいたものを。経済社会の構造変化、とある。どういう税制を構築するべきか、について個人的見解を述べる。
有形資産を作ることを基軸とする経済から、無形資産を作ることを基軸とする経済に移行したと思う。家族やコミュニティの在り方が変化している。
財政を有効に機能するために税制を・「賢く」有効に機能させる制度を考えるべきだ。
個々の税制を検討すると同時に組み合わせ(国税と地方税?)、体系だった方向性を明確にゲージしておく必要があると思う。転換期にある。