2022.10.15 政府税制調査会、第17回2022.10.4開催。
税目ごとの具体的な議論に入ります。今回は個人所得課税についてです。2回に分けての議論になるそうです。
今回は東京大学大学院経済学 楡井教授のお話です!所得集中の構造について。
政府税調 → https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2022/4zen17kai.html
財務省からの所得税の説明。セキさんより。総務省より個人住民税。(過去記事)→
次に東京大学大学院の経済学の楡井(にれい)教授からのプレゼン。
。(今回)
委員の意見(次以降の記事にて)
クリックできる目次
・所得集中の構造について
資料→ https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/4zen17kai2.pdf
アメリカでは、全体の1%の方が所得の20%を占めていて深刻な社会問題になっている。日本では10%シェアになっている。
99%層は民間給与である。
パレート指数が高いと、富裕層所得者のリスクが出てくる(と言われている)。
日本は1.5~2.5で安定している。傾きはおおむね2。これは、所得1ケタ上がるたびに(99%層が)2ケタ減るという意味を表している。
100人に一人が1億円以上の所得を得ている場合、その”1億円以上の所得を得ているグループ”の中に10億円以上の所得を得ている人が1人いる、といった入れ子構造になっている。
パレート分布は、「ありえないほど巨大な事象がそれなりの確率で起こること」(ブラックスワン)を捉える統計法則
地震やベストセラーなどの統計(?)にも使われる。
企業サンプルを10個集めると、1個はかけ離れた(?)数値が出てくる。
平均の意味を持たなくなってしまう。(中間値を使うようになっている)
アメリカでは、(格差が拡大したため)平均が意味を持たなくなってしまったことにより共感が減り、分断が生まれた背景になっているのではないかと分析している。
所得の集中化は市場経済に必然だ、と考える論者もいる。
労働はフローで、その労働から生まれた資本はストック。労働は足し算だが、資本は掛け算なので、資本はいくらでも増やすことが出来る。
(99%層と1%との差はそこで生まれる)
1%層の多くは企業家・経営者だが、昔と異なり資本の概念が変わっている。人的資本や無形固定資産なども資本になってきている。(もともと金持ちではなくともチャンスはある、という意図かな?)
ただ、所得分布は安定する、理由は労働市場に希少性が生まれるので賃金上昇し経済成長し相続税の超過累進があるから。
なのになぜ、格差拡大しているのか?新しい分野の経済成長があるため、変化に対応できた者が富んだからではないか。成功した起業家が富裕層になった。
日本の10%シェアは微増、賃金格差がある。業種や地方に無関係に似たような労働者を雇っていても事業所による賃金格差があったという研究(森口)がある。
成長の源泉が移るにつれて、資本の概念が変わった。(かつては借り入れをして工場を作れば儲かったが、知識・生産性が問われる時代になりました)
家計は資本所得を享受する経路を失った。
労働者層が金融リテラシーを上げ、資本市場に投資家として参加し、企業は外部の目があるためより努力する仕組みがあると所得集中の構造が変化するだろう。
・先生の私見とコメント
所得の集中の傾向は社会的格差拡大のひとつと論じられることが多い。異なるものもあると考えている。
最も解決すべき格差は(今日は論じなかったが)不公正に基づく格差是正である。ここでいう不公正とは、性差別、正規非正規の不合理な格差、教育格差、税制のPEやあるべき累進になっていないこと等を指している。これら糺すべき歪みがあり、その是正を優先すべきだ。
所得集中化をもたらしているのは、増大したビジネス上のリスクの帰結だと考える。
10%層年収1000万円以上を稼いでいる恵まれた環境・経験を得ている層だと考えている。格差をただすのは大事だが、リスクテイク(投資やビジネスなど、リスクを承知で行うもの)そのものをエンカレッジ(促進)しなくなってしまうのはどうかなと思う。
1%層10%層がリスクをとり、競争し、よりよいビジネス・よりよい判断をすることがマクロ経済の成長だからだ。
掛け算の成長はパレート指数が1になるような極端な格差をもたらすこともありえる、社会分断を起こさないような警戒は必要である。
55.30