2023.9.5 秋田の康楽館の芝居は、「天空の魚影」。劇団誠流さんです。
地元の偉人、「和井内貞行」さんご夫婦という、実在の人物と歴史を土台にして誠流座長が作られた芝居でした。おもしろかった~!
ちなみに、令和5年9月24日まで。120分公演で見応えあります!
・観光客でも楽しめた
康楽館に行こうと思い立ち、8月の「瞼の母」と迷ったけど、せっかくなら地域にゆかりのある芝居がいいなと思い、9月にしました~。
結果、大正解!
わたしは県外から来ているので、まちの歴史や時代について疎いですが、それでも楽しめるストーリーにしてありました。
実在の人物を土台にしている芝居ですが、史実そのものではなく舞台上の脚色があります。(と、舞踊ショーの時、すっぽんからセリ上がりながら説明する誠流座長笑)
観劇の後、小坂鉱山事務所(資料館ぽいもの)を見たり郷土館を見たりしたので、その歴史背景がスッと入ってきました。とても面白かった!
令和5年9月4日の北鹿新聞にも取り上げられていました~。和井内夫妻の絆描く 「天空の魚影」感動呼ぶ 小坂町の康楽館 常打芝居が好評 (hokuroku.co.jp)
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・分かっていく面白さ
芝居は、和井内夫婦がどうしてそんなに十和田湖にこだわったのかが初見で分からなかったです。
舞台って「部分的な分からなさ」があると思います。
何回も見たり、原作を読んだり史実を知ってから細部が分かる、という過程を楽しむ要素もあり!
私は「天空の魚影」の脚本をWEB上で見ることが出来まして、1日目の夜、宿で読んで理解が深まり、2日目にもう一度見に行って、勝子さんの想いを分かった気がしました。(真面目かっ)
和井内貞行さん夫婦の史実については、十和田湖国立公園協会のHPにありました。→ https://towadako.or.jp/rekishi-densetsu/towadako-wainaisadayuki/
星誠流座長の脚本では貞行さんの生い立ちは省かれていて、鉱山や勤め先の改廃はほどほどに、毛馬内という地名や日露戦争という時代背景はセリフの中に入れ込むなど、ジワジワきました笑
後から史実を知る私にとっては、「あ、そういえば、そんなセリフがあった!」の発見があり楽しかった。
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・時代の変化と心の変化
鉱業は天然資源を採掘して加工し販売します。自然を切り売りする、と言えますね。
芝居では、地元の人々が「鉱山の開発は俺たちも恩恵があるから」と実利をとって容認する、という設定でした。なんかリアルでよかった!それまでは現金が無いから医者にもかかれなかったみたいだった。
環境破壊ともいえる鉱業を容認する一方、十和田湖という魚がいない湖に外来種(という表現でいいのか)を入れたことについて、地元の人々は「信仰を穢された」と怒るシーンがあった。
その後、鯉が捕れるようになると、乱獲してしまう地元民。(自然治癒力を越えて乱獲すると、環境破壊になってしまいますヨ)
信仰が崩れると秩序が無くなることを、年配の「松吉」は薄々分かっていたのだった。こういう地元民の揺れ動く表現が芝居に入れ込んでいるの、すごく良かったです!
十和田湖国立公園協会のHPも含めて総合勘案、
和井内貞行さんが目指した十和田湖での魚の養殖は、鉱山で働く人々への食糧供給であったと。雪国なので農作物が不作の年は食べるものがなくなるよね・・・。そのような台詞もありました。
私は東京生まれだから、すぐには分からなかった。そっか。雪国だから移動が容易ではない。当時は車もないし。
魚の余剰は県外に売れば現金収入になる、と考えていたようです。頭が良いな。(けど、生魚は日持ちしないから加工して売ろう、と言わないと伝わりにくいと思います)
鉱山は閉山して当時の藤田組に事業売却が行われました。十輪田鉱山で働く方々は不安でしたよね・・・・。M&Aや事業譲渡は良かれと思って行う経営判断なのだけど、働く人は不安しかないよね。
結果として、見捨てられた鉱山から銀がとれるようになるなど、技術革新が進むため鉱業は盛り返すわけですが、鉱夫たちが一度味わった「資源枯渇で失業する恐怖」って忘れないと思います。
和井内貞行さんも色々お考えになったようで、40歳(明治30年)で脱サラ。養殖業を本業にします。実家は毛馬内(けまない)のいいおうちのようでした。この辺りは芝居ではほぼ触れておらず、後から知って”こういう背景だったんだ!”と楽しむ要素になります。いい~。
事業は成功し、十和田湖に旅館を作る・・・・。多角経営できるほど、うまくいっていたようです。さらなる事業拡大のためにサクラマス事業をはじめ、これが失敗し借金を背負う。妻の勝子さん、お金で苦労をします。
こちらは、舞台上でコイやマスが説明してくれます笑ジワジワくるよ~。
そんな借金男、自営業をやめさせればいいのに、勝子さんは夫の事業推進を望みます。なんでよ!と思うわたし。
・感動するポイント
その後、私は脚本を読んで芝居2回目を見て、
もしかしたら勝子さんは、自分の純粋な気持ち「十和田湖で魚が泳いでいたらいいのに」のために十和田湖に外来種を入れてしまった、まちへの償いのような思いを感じて、その責任感に感動したわ~。(私の単なる妄想で、勝子さんにそんな責任感はなかったかもしれませんが)
このお芝居では”夫婦愛”に感動する方が多いようですが、私はへそ曲がりなので(-_-;)夫婦愛には感動しなかった!
和井内貞行さんの信念を貫き通す美しさにも共感できませんでした。信念の理由が分かりにくかったからかな~。村人の信仰については論理的に否定したからかな~。
最後、神社の話をまちの人が言い出したこと、まちの人の償いだったのかなぁと思ったりして。私は、勝子さんとまちの人の心が通じ合ったことに感動したなァ。
芝居と舞踊ショーの後は役者さんの送り出しがありました。大衆演劇では、役者さんと観客がちょっとだけ触れ合えます。一言感想を言うなど♪
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・松井誠さん
星誠流さんは松井誠さんという役者さんのお弟子さんのようです。
松井誠さんって有名な方のようで、三吉演芸場で何か見たような?康楽館の楽屋に松井誠さんのサイン(落書き)ありましたよ~。
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・康楽館と和井内さん知名度高過ぎ
宿泊先のフロントで
わたし「康楽館に芝居を見に来たのですが、面白かったです~。今日も見るので割引券お願いします」と言うと
「和井内さんのですよね」
わたし(お客さんからの問い合わせもあるんだろうな、お仕事熱心だなぁ)
郷土館近くのお土産屋さんで
わたし「(店内で座って食べていいよと言われるも)せっかくですが、食べ歩きします、康楽館で芝居見るので」
「和井内さんのですよね」
わたし「(゚д゚)!ビックリ」
十和田南駅の銅像があり、時間があったので見てみると和井内貞行さんの像だった!
わたし「和井内さんですよね!(゚д゚)!ビックリ」
更に、秋田縦貫鉄道の駅で
わたし「(あなたどこから来たの、何しに来たのと言われ)神奈川県から来たのです、康楽館の芝居を観に来た帰りに寄ったんです」
「ああ、和井内さんの」
わたし「(゚д゚)!ビックリ」
秋田の財産、康楽館で秋田の偉人の芝居を見れて、当時の小坂町のことがよく分かりました。貴重な経験をしました!
なにより、楽しかったです♡