2023.10. 日税連が主催する、毎年10月の上旬の金曜日に行われる公開研究討論会。あらかじめ、論文をゲットしまして、読みます。事前入手は有料3000円。当日以降の論文ゲットは無料(会場参加は5000円、WEB視聴は無料)
研究発表会当日よりも前になるべくなら読んでおきたい。わたし、勉強熱心だから!えらいっ(と、誰も言わないから自分で言う)
第49回(2023年開催)公開研究討論会。
クリックできる目次
東海税理士会のテーマ:ライフイベントと税
全体的に文章が読みやすかったです。
それぞれ意見は違えども税とは何かというポリシーを考えさせられ、知らないことも書いてあり、実務的な復習にもなり、とても勉強になる論文でした。
普段、税務申告を行わない納税者への言及があったのが素晴らしかったなぁ。担税力をどう捉えるかは人それぞれとの論で、ああ、だから話がかみ合わない時があるんだなぁと思うなどしました。
1、家族のあり方や生活スタイルの変化と基礎的人的控除
配偶者控除等の人的控除は一律金額にする方がいい、家族の在り方を考えるべきだ、所得控除方式以外の方法を検討、ベーシックサービスという手法、などなど。多岐にわたる考察があり、読みやすかったです。
扶養控除・配偶者控除に分量が多く割いてありましたが、PDF39頁の7、の基礎的人的控除のあり方へとつながるので読んでおくのがいいわね。
生存権(憲法25条)の司法判断が特に面白かったです。
私が思う基礎控除とは意見が異なっていました。
「高額所得者に基礎控除が必要なのは生活最低限に課税すべきではないという考え方」が税理士さんのスタンダードのようです。私は、「税負担のために最低限の生活が維持できないということを回避するための基礎控除」と思っています。
その税に対する考え方の違いがハッキリ記載されていたのが良かったです!
2、変革の時代における所得区分のあり方 -雑所得の守備範囲の拡大化現象への対応の一考察―
担税力に明確な概念はなく、論者の数だけ担税力の説があるという意見にビックリ!しました。そうだったんだ~。
難解な単語を多用した分かりにくい文章が多め。馬券、ストックオプション、職務発明といった特殊な論点も絡めて理論展開。「今のままの税法じゃ無理あるよね」ということが言いたい?
PDF96頁以降、シェアエコや兼業副業の雑所得を整理してくれていて、いい復習になり助かります。忘れちゃうから・・・・。
考え方の根底が記載され、文章も読みやすいです!最後の方はまた難解な単語好きな文章に戻ってしまった・・・。
新しい事象に税法がその都度対応するのは限界があるので、私は所得区分を撤廃して一本化がいいなと思いました。財産課税を導入すれば不公平は緩和できると思う。WEB前提の経済発展には限界があると私は思っているけど、こうして自分と違う考え方に触れることが大事だなぁと思いました。
自分と違う意見を知れるのが、論文を読むメリットですね~。
3、財産分与と課税
夫婦が離婚し、自宅を財産分与した場合の論点が勉強になりました。増加益清算課税説。他にも説があるようです。有償取引である、と考えるのかなと。貰った側の贈与税課税がないのは、国税庁タックスアンサーによると財産の清算や生活保障だからとのことです。うーん、そうなのか。
論文では夫婦財産契約の有無による課税関係の違いについて考察されていた。(実際には夫婦財産契約はほとんどないみたい)
生前贈与と相続による課税関係の違いについても記載されていて。比較すると、離婚は税務上負担増ではある。けど、自分たちの選択なので・・・。
論文の中で立法論への提案があり、離婚による財産分与で、あげた側の譲渡所得課税無しでもらった側は取得費の引継ぎはグッドアイデアだと感じました。そういう特例を作ってもいいわね。
又は、居住用財産3000万円控除の適用拡大でもいい。年内離婚した場合に限り、居住用3000万円控除を認めるのもいいかも。(家族への譲渡は居住用財産の3000万円控除の対象外)
4、災難と雑損控除制度に関する考察
資産の損失について、4種類に分けてまとめているPDF172頁。・・・・生活に必要でない資産の損失(所62条)の存在を完全に忘れていた・・・
論文中に紹介される判例で、自家用車の災害損失を雑損控除で計上、調べてみたら通学・通勤利用の事実関係に疑問が出たという始末。どうしてこう嘘をつく納税者がいるのかしら。残念。
アスベスト除去費用の雑損控除が否認された経緯も興味深かったです。
S51年の秋田豪雪被害とS60年の桜島降灰除去費用は雑損控除OKになった経緯と、降灰除去用の機械は雑損控除NGと判断した国税庁の答弁、そういう風なやり取りがあったのね。課税庁の考え方も含め、面白かったです。
論文では、特殊詐欺被害や、災害予防費用への雑損控除適用を検討するべきだ、とありました。
他の論文で出てきた基礎的人的控除や担税力にも触れていまして。まとめで論じている点に深く同意できるのは、雑損控除による税制上の配慮を受けるのは税負担が生じる者のみだし、高額所得者ほど多くの配慮を受けるという点。なので、私は給付による支援がいいと思いました。
論文にある通り、給付の方がいいからといって雑損控除を廃止することもないな。
阪神大震災が1995年1月17日、東日本大震災が2011年3月11日と確定申告時期の間近だったこともあり、前年の所得の計算に今回の被災分を記載していい震災特例法があったそうです。覚えておかないとね。
5、負動産と税を巡る問題の「取得」「保有」「処分」の各局面からの検討-居住用不動産を中心として―
複数の相続人がいる場合、処分できない「負動産」の処理に苦慮するよね、といった相続あるあるから話がスタート。感情移入しやすく、読みやすいです。
とある司法書士Xさんがいらない土地(固定資産税評価47万円ほど)の生前贈与を受けた上、所有権を放棄し国に帰属させたところ、訴訟になった判例を紹介。本件は権利の濫用で国の負担が重すぎるからダメ!という結論になりました。(Xさんがちょっとやりすぎだったと私は思うけどな~)
PDF198頁から、不動産の所有権についての記載があり、近代的な所有権は明治5年(1872年)からだそうです。日本国憲法29条3にある通り、補償の下にこれを公共の用に供することが出来る。
所有権の放棄が権利の濫用になるかどうかは、状況によります、という結論になっている。なるほど~。
PDF201頁「不動産に対する価値観は、不動ではなくなってきている」うまいっ座布団一枚っ
土地政策のあり方が分かりやすく紹介されていました。面白かった~。
この後、債務控除、資産除去債務(会計分野から)、財産基本通達による土地評価減と続き、負動産の財産基本通達の評価減を新しく設けるべきだ、という論を展開。整理されてます。(読み飛ばした部分もあるけど。へへっ)
相続税を社会還元と考えるか(遺産税方式)、富の集中を防ぐものと考えるか(遺産取得税方式)、相続税のポリシーに触れ、遺産税方式を採用し相続税申告期限を延ばすことなどが負動産化を抑制できるのでは、と結んでいる。
相続発生後、すぐに相続人に所有権が移転せず、合有のような組織に一旦プールさせるシステムが世界的に多いようです。それっていいシステムだなと思う、売却なり処分をしてその残金(または出費)を分配できる制度があると代表相続人の気苦労が減りそうね。売買の手続き、代償分割・換価分割、譲渡所得計算・・・やらない人ほど文句言うから。。。
固定資産税の部分は知らないかったことが多くて興味深く。税理士は固定資産税を計算しないので忘れがちです。このように固定資産税にも触れて市民感情が置き去りにされていないのがステキと感じました。建物残価20%と空き家住宅特例の廃止を、という提言がありました。
****
東海税理士会の研究員の先生方、コロナで1年延期した中、たいへんお疲れさまでした~!全部読んだよ~!名古屋にて、当日の研究発表も期待してま~す。(*^^*)ノ