租税法連続基礎講座 キタノ理論 第2回。@東京 (前編)
「課税庁」の立場から読む租税法と、「納税者」の立場から読む租税法は違うらしい。
「納税者」の立場から、租税法を読む。その感想。
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1、実質課税の原則はけしからん?
所得税法(法12実質所得者課税)でも法人税法(法11実質所得者課税)でも消費税法(法13実質享受者課税)にもある。理論サブノートにちゃんと、あるよ。
相続税法ではみなし相続財産という考え方が、実質課税の原則にあたるんだと思う。生命保険・低額譲受・信託。(法3~9)
実態を見て誰の課税関係になるのか決めてもらわないと、名義だけ借りてズルできちゃうじゃない?
私の売上げだけど、契約書を夫にサインさせて夫の所得にしたりできたら、私は税金を払わなくて済むよね?そんなのおかしい!やったもん勝ちじゃないか。
なんでキタノ理論では実質課税はケシカランの?
キタノ「実質課税の原則を認めると、行政の手引きになっちゃうからダメ」
ちょっと何言ってるのか分かりません。
キタノ「あいまい表現はダメ。なぜなら文理解釈(文章通りにやってよ)という考え方とケンカするから」
なんとなく経費にしちゃダメぽいから税務調査で否認して追加で税金を払ってね、はダメだって。
ちょっと分かる。化粧品とかで「※使用感には個人差があります」みたいに、調査官の受け取り方には個人差があります、だからなんとなくじゃなくて課税関係は文章通りに税務調査で指摘してよってのがキタノ理論かな。
ただ、ケシカランと言っているキタノ理論だけど、「これは実質課税の原則で問題ない」という部分もあるよ。
事実の外観、仮装行為、取消すべき行為、違法所得あたりがそうなんだって。
さっきの私が例にあげた、私の売上げを夫に、はキタノ理論でもダメと分かった。よかった、課税の公平性が保たれた。
キタノ「実質課税の原則は、日本税法学のガン」第7版 p,95
すごいこと言うよね。
2、民法や商法などとお揃いにしよう
法人税では、会計上の利益と、税金計算上の利益を調整するんだよね。会計上の利益は、銀行さんや取引先や株主に見せるために、「会計企業原則」で会計処理のルールが決まってる。
で、法人税では、会計企業原則をヘイコラと立てつつ、法人税法独自のルールとの差をこっそりと申告書上で調整する。別表調整ってやつだ。
別にお揃いでよくない?いちいち調整するのは面倒よ。
だけど、そもそもの目的が違うよね、会計上は外部への報告目的だし、税務上は課税の公平性目的だから。
本来は税法で別個にルールを作るべきだったかもしれない。でも、法人税計算のためのルールをイチから作るのは時間かかるしそんなの効率が悪い。税金計算のために帳簿を作る訳ではないので、法人税法では会計企業原則を尊重している。
・・・ということを法人税法の勉強で習った。
相続税でも、民法をベースに税法が考えられている。けど、たまにちょっと違う。
債務控除の葬儀費用などは、どうやら民法からすると「そんなの相続に関係ない」という話を聞いた。ちょっと宿題ね。
上記のような、会計企業原則・商法・民法などで決められた用語などはそのまま税法でも使うけど、私法の単語を税法独自の俺ルールで解釈するのはよくない。とキタノ理論では言っているように読めた。
・借用概念と固有概念
例えば、「配偶者」という単語は法律用語なんだって。
だから、税法上の「配偶者」も、法律用語とお揃いにして、未届けの妻は配偶者ではない、としている。
これが、借用概念というやつ、という認識だけど・・・難しくて合ってるのか分からないという・・・
ちなみに、借用概念の対義語は固有概念。固有概念て、「所得」とか「益金」とか、税法独自のルールで定めた単語っぽい。
・税法俺ルールはほどほどに
税法では、私法(民法や商法など)をベースに課税するんだけど、私法を無視して、「税法俺ルール」を押し付けちゃうこともたまにあるよ。売買契約だけど、贈与として課税したり。この辺は、課税の公平性からしょうがないこともあるよね。
でもどこまでも税法俺ルールが及ぶのか、境界線がないと、契約や経営計画がたてづらい。困るよね。というのが、
法秩序の一体性、法的安定性及び法的予測可能性から受け入れられていない
という言葉らしい。私にも分かる言葉で説明願いたいよ。
3、節税・租税回避・脱税の違い
キタノ理論によると、
節税とは、
別に普通の税務メリットをとること。
租税回避とは、
現状否認する税法はないけど不自然な取引をしたために税額が減少するもの。否認される可能性はゼロではない。
脱税とは、
絶対ダメ。嘘つくこと。売上げを隠したり、ない経費をあるように見せかけたりすること。処罰される。
と、読めた。
節税なんて言葉はあるのかね普通のことだから・・・「節税が得意」ってなんだろうね。
一番税金が安くて済む選択肢を納税者に提示する、ということを「節税」というの?税理士の本来の業務ってだけじゃないか。それをわざわざ「節税」と名付けることにすごく違和感があるんだけど。
「税法の勉強めっちゃしてます!」より、「節税に自信があります」の方が分かりやすいってことなのかな。
4、実例として
今回の授業では、実例として判例を取り上げてくれたよ。
・脱税の手伝い料
架空の経費を計上するために依頼した手数料は経費になるのか、というもの。なんじゃそりゃっ。
まず、架空の経費は経費にならないよね、脱税行為だから。
脱税を手伝った人に対して支払った手数料は、経費にならない、という判決。うんうん、理解できる。
しかし、キタノ理論によると、法人税法22条では、会計処理の公平性を指しているのに、行為の公平性として使っちゃダメでしょ、というもの。(ニュアンス)
私の感情論としては、脱税手数料は経費にするとはケシカランのだけど、だからといって本来の22条をいいように解釈してしまうのはよくないよね。裁判所から他の理屈で経費を否認してほしかったね。
・武富士事件
非居住無制限納税義務者の改正の元となった判例。
外国に住んでしまえば、相続税を納税しなくてよいのは、公平性に欠ける、と平成25年に非居住無制限納税義務者の改正があった。
今では(29.4.17)外国居住でも、被相続人が日本居住だった場合・日本国籍を有する相続人or被相続人が過去10年以内に日本に住んでいた場合には、国内財産については相続税を課す、という規定になったよ。
結局、裁判をして、国外に住んでいた方は納税なし。感情論として、なにぃ!という感じだけど、「立法によって解決を図るのが筋であって、法律通りだから課税できない」という結果に落ち着いた。
ただ、裁判所が「よろしくないから法律をつくりなさい」と平成23.2.18に判決を出したおかげで、相続税法の理論暗記項目が増えたのであった。
めでたし。
つまり
感情で動いちゃだめ。選挙を通してみんなで決めた、みんなのルールだから従わないと。
法律を重視して、法律の網をかいくぐるのは頭がいいんだよ。という結論らしい。
うーん。その通りだけど、すっきりしない。これが、「租税法律主義」「課税の公平性」なんだ。うむむ・・・
5、キタノ先生に質問
キタノ「実質課税の原則は、お金持ちや大企業には適用が少なく、中小企業や庶民に対して適用されるきらいがあるらしい。許せん。」第7版 p,109
そうかな?何でそう思ったんだろうか・・・聞きたい。
続く。