なぜ超過累進税率は平等なの?

租税法連続基礎講座 キタノ理論 第2回。@東京 (後編)

「課税庁」の立場から読む租税法と、「納税者」の立場から読む租税法は違うらしい。
「納税者」の立場から、租税法を読む。その感想。

1、住民税は一律10%なのに

住民税は、一律税率は10%。各自治体で追加の税があったりするけど、それはちょっとさておき。

シンプルでいいよね。納税者にとっても分かりやすい。

だけど、これがキタノ理論に言わせると、ケシカランらしい。なんで??

一律10%という税率は、「応益負担原則」という名前らしく、難しくて覚えられない。

キタノ理論曰く、住民税を原資とした行政サービスの納税者ごとの「税負担部分」を計算できないからケシカラン、公平でも中立でもない、税法に一律10%でいいよという法律がない、課税側の説明や税金計算が簡単だからといってそんなことでいいのか、消費税の逆進性のような状況も引き起こされる、応益負担原則しかありえない!!

・・・なんか、すみませんでした。

2、超過累進税率は平等!?

キタノ理論によると、日本国憲法では、14条に「法の下の平等」と書かれていて、租税面では「能力に応じた平等」を要請しているから、超過累進税率は平等なんだって。「担税力」ってやつね。

お金持ちほど行政サービスが必要(治安とか道路とか)だから、超過累進税率は私も個人的に賛成。でも、その角度からボール来たかっって感じ。

「法の下の平等」ってそういう意味で授業が進んでいたんだ・・・知らなかったよ。貧乏人の子は、塾に行くお金がないから高卒で中小企業で働き、お金持ちの家の子は、塾に行きいい大学に入って大企業で働くという今の日本の構造があると思う。

でも、貧乏人だからといって、大学受験の入試を受けたり、大企業に履歴書を送ることはできる。これが、「法の下の平等」だと思っていた。機会の平等ってやつだ。だけど、実際に塾にも行かずバイトしながら自力で大学受験に合格したとしても、貧乏人の家の子はやっぱり大学には行けないよ。就職して家にお金を入れないとだから。

だからさ、平等なんてこの世にはないの。与えられた自分の環境で頑張るだけよ。雑草には雑草の生き方があるんだよ。案外、悪くないよ。

3、お金持ちにはいっぱい課税

所得があるから所得税、所得があるからたくさん消費するよね?いっぱい消費税を払ってね、使い切れない部分は死亡時に相続税として課税するから、と、税目間でバランスよく税金を納税してもらう仕組みになっている。

この、バランスよく課税することをタックスミックス論と言うんだって。

このように並べると、なんかお金持ちが可哀想になるけど・・・国が社会インフラを整備して、お金持ちの財産を守っているので、しょうがないよ。

税の使い道に色々思うところはあると思うけど、それでも多くはまっとうに使われている。年金支給に使われたり生活保護に使われたり、社会福祉費は増えているよね。それでも、そのようにして将来の不安を減らして、庶民以下の暴徒化を抑制している部分もあるんじゃないかな。安全はタダではない。

4、法人税なんかいらない

知らなかったけど、「法人税はいらない」というのが、税法学の常識らしい。MXテレビで、元税務署長の税理士もそんなことを言ってたね。テレビで話していた、法人税不要説の理屈はなんとなくわかったけど。

いやいや、法人税はいるよ!

だって、大企業って倒産しないじゃない?やばくなっても国が資金注入とかいって私の税金を使って救済するでしょう?

大企業はたくさん雇用しているし、下請け業者が死んでしまうから潰せないのも分かるよ。でも、中小企業で働く人と、大企業で働く人は、所得税負担は超過累進税率により公平だよね?でも、中小企業は経営がやばくなったら見殺しじゃない?

どうして、大企業で働く人と、中小企業で働く人と、将来の不安感が違うんだよ!

法人税は、所得400万円からちょっと税率がアップし、所得800万円からさらに税率がアップする。大企業は、税金が高いかもね。でもさ、国が大企業の製品を売り込みに行ったりしているので、納税もお願い。日本を代表する企業だから、応援もするけど納税もしてよ。社会貢献でしょ。

租税法の先生曰く、「日本の税率が高くても、日本企業は日本にいる。なぜなら、日本での経営が成り立っているから」らしい。なるほど~。

5、法人擬制説と法人実在説

法人擬制説とは、法人は株主のもの、という考え方。

もう一方の法人実在説とは、法人はいる!という考え方。サンタさんはいます、あなたの心に、みたいなファンタジーではない。極端な話、法人を人とみなしているんだから、納税義務も与えて選挙権もあげようよ、という考え方。

税制調査会では、どちらもあるよね~と言っているらしい。

キタノ理論では、大企業は法人実在説として超過累進税率(応能負担原則)でいこう、中小企業は株主と会社が一緒みたいなもんだから、法人擬制説でいこう、と考えている。

なるほど!

だからどうなるんだ、まではまだ辿り着いていない。

ところで、所得税の税額控除として「配当控除」があるよね。「法人税が比例税率なのは(株主の)所得税の前払いだから」であり、なぜなら「配当控除の計算ができないから」らしい。

うーん・・・・もうちょっとで届きそうで、もっとよく考えてみたい。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。

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