事業承継は後継者のリスクを

29.11.29 事業承継を考える。取引先は「会社名」ではなく、「会社の中身」と取引していることがあるので、後継者は誰でもいいわけでもないんじゃないかな。

私の本日の結論としては:事業承継は経営者と後継者と従業員とで紡いでゆくものなので、税制優遇はせいぜい、話題のきっかけ程度。事業承継とは、「嫁姑問題」と似ているので、時間をかけて育てていくべきだ。

 

普段取引をする相手は、「会社」である場合と、「そこで働く人」で決めている場合とがあるよね。

事業承継の話題では、「経営者は誰でもいい」かのように語られ、「税制優遇!」「借入優遇!」など、カネの優遇ばかりを耳にするんだよね。”事業承継ビジネス化”している気がする。

・・・まぁそれは私が税理士だからかもしれないけど・・・。

・経営者は「人」で選ばれている

ところで私の世代は、事業を承継する側の世代になるよね。

おっちゃんたちは、承継する側の心理やリスクを考えてくれているのか?後継者は誰でもいい訳ではないでしょう。後継者が従来の経営者と方向性が異なれば、従来の取引先は違う取引先を探し出すのではないか?

創業者の人柄やリーダーシップがあるから、その事業がうまくいったというケースも多い訳で、結局のところ、事業ってヒトであるケースが多いんじゃない。

経営者など誰でもいいという事業もあると思うけど、そういうケースは後継者も誰でもいいので、お金に困っててルーティンワークが出来る人ならどこにでもいるんじゃないの。てか、だったら機械でよいじゃないか。

・従業員が会社を守っている

従業員にとっても、創業者と後継者では人が違うので戸惑いが起こるよね。後継者を盛り立ててあげようと頑張ってくれる従業員が全てとも限らず、「創業者に対する恩義」で頑張ってくれている人も多いんじゃない。

いきなり、知らない人が「今日から後継者でーす。いうこと聞いてね」となれば、従業員は可哀想では?

・後継者が抱えるリスク

一方で、後継者のリスクというものを考えてみる。

やりがい、お金、責任、人材確保、潜在的債務(退職済の従業員から訴訟されるケース、既に販売済商品の欠陥リスクなど)etc・・・。

 

何かにつけて創業者と比較されて創業者の行ってきた通りにやりなさい、という空気に耐えられるのかどうか?

創業者のやってきた通りに行ったところで、うまくいく保証はなく、うまくいかなければ言いなりでやったのに自分のせい。

表面的に成績の良い事業であっても、見えないリスクは付きまとう。何かが起これば、後継者の責任であり、後継者が尻拭いをする。何が悪かったのか、後継者には知る由もないよね。

後継者は、責任をもって事業をやりたいから後継者になるというケースもあるよね。言いなりではなく、時代に応じたベストな方法を探っていくべきよ。そういう、創業者になかった新たな動きに、創業時からいる従業員の理解を得られるか?

・従業員が後継者になるケース

かつての従業員が後継者になるケースっていいよね。内部事情に精通している。

けど、社内でお世話になった人もいるので、しがらみに縛られるケースもあるでしょう。そこをうまくやれれば、従業員として内部に精通している人が後継者になるのっていいんだと思う。

・親族が後継者になるケース

創業者の親族承継(多くは子供)が多く行われている現実。親のやり方に沿って経営をしていくのに、さほど抵抗がないケースも多いでしょう。

従業員からすれば、小さい頃から知っているので、「支えて行こう」という気持ちも生まれやすいかもしれない。

看板を脈々と守るという気持ちがあるのが、親族承継だけ、と断言できるよね。親の尻拭いだったら、頑張るし、自分の子孫にバトンを渡すことを想定すると、基盤をしっかり守ろうという気持ちが湧くよね。

親だって、後継者に対して必死にサポートするんじゃない。

後継者にとっても、やりがいとなるのであれば、このパターンも好ましいケースになるよね。

問題点としては、親の路線通りで発展性がない危険性、親子ならではのケンカ、後継者をいつまでも子ども扱いして後継者の自立性を阻害すること、などがあるね。

・事業承継は嫁姑問題と同じ

実際、「嫁姑問題」という昔ながらの問題(?)は今でもあるので、事業承継ってケンカしながらムカつきながら、段々家族になっていくみたいに、「これやればオールOK!」みたいな方法はないんだよ。

嫁は、好きで夫と結婚をしているんだよね。

後継者も、好きで後継者になればいいんだよ。で、創業者があんまりガタガタ言ってくると、うまくいかないんだよね。でも、後継者にとっては、創業者のアドバイスは必要。そのうえで、自分の考える事業もやりたいのね。

色んな人の考えが融合して、いい事業を育てていくのが理想だと思うんだよ。

・事業承継の「正解」とは?

一体、事業承継に「答え」が出てくる日が来るのか?

ないよ、20年前から事業承継なんてやってるんだから。1件ごとに案件は違う。待ったなしの状態ではあるけど、特効薬は見つからないかもしれないね。

でも、後継者目線で考えて行けば、少しは光が見えるかも。で、後継者をあんまり調子にのらせると、事業が立ち行かなくなる。創業者・後継者それぞれの性格を加味した上で取引先・従業員の思いも考慮したベストの方法を探っていかないとなんだよね。

行政が主導権を持って、事業承継をすすめてくれているのは有難いけど、出来ることには限界がある。

難しいなぁ。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。