わたしが7歳くらいの頃、私の2つ上のねぇちゃんがバターごはんを教えてくれた。
「お茶碗を持って。炊飯器からほかほかのご飯をよそって、茶碗ご飯の真ん中に穴を開ける。ぐりぐり。」
「冷蔵庫からバターをこっそり出して、こうやって、このくらいバターをとってね。めりめり。」
「ご飯にあけた穴にバターを入れる。ぽいっ。」
「急いで!急いでバターの上にご飯でフタをする。のせのせ。」
「ね。バターを隠したから、バターを楽しみにご飯を食べれるでしょ。ぱくぱく。」
にやり。
2つ上のねぇちゃんってスゴイ!超えられない!とつくづく思ったわ。
* * *
わたしが10歳くらいの頃、ねぇちゃんがひとりでカレーを作ってくれた。
ジャガイモの代わりに里芋が入っていたらしい。10歳のわたしに、カレーにはジャガイモという固定概念はなく、素直に食べる。
他の家族が、「カレーに里芋が入ってる、じゃがいもと間違えてるワハハ」
と笑った。
2つ上のねぇちゃんが、「だって知らなかったんだもん」とむくれた。
ぬちゃぬちゃのカレーは美味しかった。
ひとりで買い物に行き、何故かマイナーな里芋を購入し、ひとりでカレーという食事を作って家族に食べさせた、ねぇちゃん。
独立心、判断力、独創性、社会性、奉仕精神。
2つ上のねぇちゃんはスゴイ!超えられない、とつくづく思ったわ。
* * *
わたしは大人になって、自分で稼いだお金でバターも買えるしカレーも作れる。
里芋カレーは今や特別なものではなくなった。姉の里芋カレーは時代を先取りしすぎたんだろうか?
以前に白飯にバターだけ載せて食べたのは、いつだろう。もしかして、姉と一緒に食べたのが最後かもしれない。
私がずっと歳を取って、食事を作るのが困難になったとき、ヨボヨボの老姉妹二人で白ご飯にバターを載せて、食べようか。
きょうだいとは、ありがたい。
ストップTHE少子化。