31.2.18 税のしるべ31.2.11号では、法人税の措置法トップテンが掲載された。おもしろーい!統計の原資資料を見てみましょう。
出典元は財務省。https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/stm_report/fy2018/index.htm
平成31年2月に198回の国会に提出されたらしいです。平成31年1月31日の政府税制調査会でも、「いらない措置法は整理して。税法の利用状況を知りたい」という話がありましたね~。
措置法の利用状況は、法人税申告の際に一緒に提出している「適用額明細書」で統計抽出しているよ。
サンプル法人数は120万社。H29.4.1~H30.3.31までに終了した法人がメインです。
わたしも税理士事務所での修行時代に、法人税申告書に一緒にくっつける「適用額明細書」を忘れそうになり、所長に怒られたもんだわ。末端の現場の税理士事務所職員のサービス残業で積みあがった統計を見てみましょう。(おおげさな!)
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・中小企業は税制優遇されていない現実
政府税調では「中小企業が優遇されているのではないか。研究開発費税制の充実その他をはかり、経済活性化」とかいう意見もあった。
(中小企業が優遇されていないんだよ、中小企業が頑張ったから今の日本があるんだよ、という反論があり!)
本当に中小企業が優遇されすぎているんだろうか?
法人税率15%の軽減、設備投資税制、貸倒引当金、少額減価償却、と中小企業に限定した税制があるけれども、おのでら調べによりますと中小特例で3300億円ほどしか税収減になってない。減価償却と貸倒引当金は経費の先食いだから、数年ベースで考えれば税収減と言わないよ。
それにひきかえ、大企業の場合、例えば研究開発費税制の総額基準(中小は総額基準ではなく中小特例の基準を使うのがセオリーだと思うので)の6600億円の税収減。
賃上げ税制3800億円のうち、多くは大企業が利用していると思われる。
推測も含むけど、大企業で1兆円近くの税収減がありえる。
このように、中小企業が束になって税制優遇を受けようとしてもせいぜい4000億円前後で、日本の企業の数%を占める大企業の税制優遇が1兆円に近い。
どこが中小企業が優遇されているのか!
制度として中小優遇規定はあるものの、減税額に占める中小企業の減税割合はメチャ低い。このことから、大企業と比較して中小企業は優遇されていない。
だから、従来通り中小企業の税制優遇措置は残しておかなければ、大企業と比較して不公平になる!よ!
1、法人税率の軽減 減税額
(法人税率は一般法人は23.2%前後だけど中小企業は儲け800万円までは最小15%でOK)
です。1社1回につき800万円までしか適用がない。例えば、100万円のもうけに対して、中小企業ならば8万円減税してあげる、けど上限は800万円の儲け部分まで。という法律です。
適用額は3兆6000億円。おおっ!すごーい!93万社が適用を受けている。
しかし、3兆6000億円は「適用額」であるので、実際の税制適用による減税・減収額は約23%-15%=約8%相当額が減税・減収になる。
※実際の措置法は、中小法人税率19%が15%に下がるので4%の減税ですが、大企業と比較したいので23%と15%の差としている
数字のマジック、錯覚だよね。
つまり、中小企業の法人税の軽減税率により、2880億円の減税・減収となる。(計算式は3兆6000億円×減税率8%=2880億円)
2、研究開発費税制 減税額
一定の研究開発をすると、税金を安くしますという措置法があるよ。大法人でも適用があるけど、中小企業は更に税金を安くするという法律になっている。
大法人でも受けられる研究開発費税制は、4100件の適用があり、減税・減収となる金額は6600億円。
一方、中小企業でしか受けられない研究開発費税制(中小企業技術基盤強化税制)は297億円の税額控除の適用。すくなっ。
そりゃそうよ、効果が不明な研究開発費って大企業や大きなお金をひっぱってこれる組織じゃないと難しいじゃん?中小企業がチャレンジしたくても実績がないんだから狭き門ですよ。いいんですよ、資本主義ですから。
3、中小企業の設備投資税制 減税額
中小企業に限定し、設備投資をすると減価償却の特別償却をしてもOKという税制がある。これは、次回以降の経費が減るだけなので税制優遇と言えるほどではないのであるが、適用額は4200億円。数年でならせば、減税・減収は平準化するためゼロになることが多いと思うわ。
別途、法人税自体を減らす、中小企業の設備投資(機械等)の税額控除という措置法があり。こちらは中小企業230億円の減税・減収となります。
4、賃上げ税制 減税額
従業員の給与をあげると、法人税を安くする税制があるよ。大企業にも適用がある。
こちらは12万社が利用し、3800億円の減税・減収。中小企業には、賃上げをしたくても資金力が乏しかったり経営が安定しないため、大企業のように賃上げがままならないことが多いよね。
つまり、賃上げ税制は歓迎であるが、結局のところ大企業が優遇される税制である、と思うのですが。
5、中小企業者の貸倒引当金 減税額
意外に適用額が多く、貸倒引当金は5000億円の適用額。貸倒引当金はなんとなく毎回計上しているケースもあり、翌年は戻し入れなので、税金が安くならないシステム。
だから、中小企業しか適用がないからといっても、別に優遇されている訳ではありません。
中小企業者の貸倒引当金の減税額は、ゼロに近い、です。(実際には税率差を利用するケースもあるが)
6、(土地税制)
収用・換地・買換えなど、土地の売買による課税の繰り延べ税制がある。
1回の適用額が大きいから数字が目立つけど、さして減税・減収でもないし適用件数が少ないのでスルーかな~。(特別控除もあるけど、適用金額が少ない)
7、中小特例 少額減価償却資産 減税額
中小企業は、1つ30万円未満の減価償却資産については即時償却してその年度に全額経費にしてよい、という措置法がある。
53万社が利用し、適用額は3000億円。
よく使うけど、こちらも経費の先食いに過ぎないので、減税・減収とは言えないね。
中小企業特例の少額減価償却資産の減税額はゼロに近い、です。(実際には税率差を利用するケースもあるが)
8、(金融業界税制)
PDFデータの最後の方には、保険会社などの金融関係にメリットがある税制が挙げられている。保険会社の積立金の損金計上、投資信託受配益金不算入・特定目的会社、投資法人などなど。
わたしにはあんまり馴染みがありませぬ。
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私の苦手な数字分析はいかがでしたか?大企業と中小企業、どちらも共存していきましょうよ。
GAFAが下請けいじめしているとか、消費者から情報を搾取しているとか、言われていますが国内企業が活躍する日本はムラ社会です。
自分のことばっかり考えていると、取引先や消費者に嫌気されちゃうって、商売人は知ってるんだよね~。