31.2.28 私は寡婦(寡夫)控除の改正個人意見を提出したことがあり。自己満足ではあるが、意見提出してよかった。気が済んだ話。
わたしは寡婦ではないし、寡婦寡夫について深く考えたこともなかった。
3年前、私は確定申告期限定の短期バイトをしていた。そのとき、お客様から資料を受け取った。
お客様は扶養しているお子さんと二人暮らしであったが、寡婦控除の記載がなかった。
わたしは、所長に相談しておきますので、今年は寡婦をとりましょう、と話した。
お客さんは言った、「わたしは未婚の母だから、寡婦控除はとれないんだって」
所長さんからの説明に納得できず、役所にも聞きに行ったけど、結婚歴がなければ寡婦じゃないんだってーー
私は自分の無知を詫びて、それでも制度に納得できなかった。
個人的事情を加味するために所得控除があるのであれば、婚姻歴の有無で寡婦寡夫控除を判断するのはおかしいのではないか?
結婚制度という考え方云々ではなくて、税法であるから公平性を重んじるべきだ。
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私はそれから税理士になって、税理士会には税制改正建議権があると知った。私は税理士という立場を利用して、税理士会に対して「未婚の母にも寡婦控除を」と要望をした。
後から知ったことだけれども、すでに議論は尽くされていて、新米の若手がドヤ顔で要望するような話ではなかった。
平成31年度税制改正大綱を読んで、私は、未婚の母は寡婦扱いにこそならずとも、住民税では一定の配慮をはじめると知った。
・・・・よかった。前進したんだ。バイトはやめたから、あのお客様に会うことはないけれども、どこかでニュースを見て、ひとり親独特の育児の苦労に対して国から「お疲れ様」と言われたように感じてくれたらいい・・・
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平成31年、昔のバイト先から連絡があり、ほんの数日だけバイトに行くことにした。
お茶を出しに行ったとき、偶然、3年前の、例のお客様に会った。
私は職員でもないし、一度担当しただけの従業員であるから、きっとお客様は覚えていないと思った。
しかし、思い切って、資料の整理の隙間に、税制改正で、もう少ししたら未婚の母も寡婦扱いになるかもしれないと告げた。
お客様は、自分は未婚だから寡婦ではないと、言った。
私は、税制改正があるから、今後のニュースにご注目ください。だって、未婚だからって、おかしいじゃないですか。お客様から教えてもらって、私はおかしいと思っていました。と、言った。
お客様は、お子さんは高校卒業後の就職が決まり、もう自分は改正があっても寡婦に該当しない、と言った。
私は、前年の確定申告書の控えを見る。お子さん、就職されるんだ。よかったなぁ。家にお金を入れて、母親孝行するのかしら。
そうでしたか。と私は言った。もう少し早ければ、とか言ったかもしれない。とにかく、今回のお客様の所得税には影響がないですね、余計な事でしたモゴモゴ、と言った。
お客様は、うん・・・ありがとう。と言った。
私は資料整理を続けた。お客様は、私が依頼する資料を提出した。
その後、所長が来て、私はその場を失礼した。2月いっぱいのバイトは、今日で終了だ。
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私は3年間、お客様から教えてもらった制度の問題点について、のどの奥にひっかかった魚の小骨みたいに、ふとチクチクしていたものがあった。
法律だから、未婚だと寡婦控除はとれない。おかしいと思っても、寡婦控除はとれない。だから、税理士会には、税制改正建議権があり、おかしいなと思う税法は改正するような発言権(というか・・・)がある。
私は今日は税の専門家らしいことをした!国民(お客様)の要望を国側へ伝える行動をした!(今更感で無益だったけど!)
私は、自分のクライアントでもない、すれ違っただけのお客様に対して、誠意を尽くした気がした。これが、国民のための税理士制度だ!一市民の税法に関する要望に対して、税理士は正面から向き合ったよ、と言えた気がした。自己満足に浸る。
寡婦控除の魚の小骨はとれた。
私は満足した。
こうして、私の平成31年2月が終わった。