31.3.29 65歳以上の方の介護保険料は年金天引きが原則となる。だから、妻の年金天引き介護保険料を夫の社会保険料控除にできない。
では、税制改正で「控除対象配偶者(例えば妻)に限り、介護保険料&後期高齢者健康保険料は納税者(例えば夫)の社会保険料控除にしてもOK」にすればいいんじゃないか?
1、社会保険料控除
納税者が自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合には、その支払った金額について所得控除を受けることができます。これを社会保険料控除といいます。
控除できる金額は、その年に実際に支払った金額又は給与や公的年金から差し引かれた金額の全額です。
(国税庁HPより)
2、介護保険料と社会保険料控除
介護保険料は、支払った人の社会保険料控除の対象になる。(ただし、家族に連帯責任が発生する)
介護保険料は、世帯ではなく個人別に負担する必要がある。
介護保険料の支払い方法は、年金天引きが原則となり、自分で納付することを選べない。
だから、年金から天引きされていたら、その方の社会保険料控除となり、課税所得がない場合には社会保険料控除の恩恵は受けられない。
3、国民健康保険料と社会保険料控除
国民健康保険料は、社会保険料控除の対象となる。
国民健康保険料は、世帯主に請求書が届く。世帯主でもご家族でも、支払った人の社会保険料控除になる。
だから、世帯主よりも家族が稼いでいる場合には、世帯主の口座引き落としではなく現金払いにしておくがよい、場合もある。
(結構探したつもりだけど、国民健康保険料は世帯主以外への連帯納付義務の条文が見つからない。連帯納付義務がないのかな?納付義務は都道府県なので、連帯納付義務がないのかな、と。国民健康保険法 75条の7納付義務、76条保険料)
4、後期高齢者医療制度の保険料と社会保険料控除
後期高齢者健康保険料は、社会保険料控除の対象になる。
年金天引きにしている場合には、天引きされた人の社会保険料控除となる。配偶者の銀行口座からの引き落としにしている場合には、後期高齢者医療制度保険料が口座引き落とされた方の社会保険料控除となる。
75歳以上になると、健康保険料は働いていても会社の健康保険制度から卒業して「後期高齢者医療制度」になり、後期高齢者の健康保険料は世帯ではなく個人別に請求される。ただし、世帯主or世帯主の配偶者に連帯責任が発生する。(高齢者の医療の確保に関する法律 108条)
平成20年に導入した後期高齢者医療制度は当時の反対もあり、徴収に配慮していることが分かる。介護保険料と同じように年金天引きを強制したかったのであるが、「制度の周知徹底のため」口座引き落としをOKとした。また、配偶者に限り配偶者世帯主の口座からの引き落としもOKにした。
(コンメンタールp4705 保総発第0725001号 平成20年7月25日 厚労省から自治体&広域連合宛。「高齢者の医療の確保に関する法律施行令等の一部を改正する政令の施行に伴う長寿医療制度に係る事務の取扱いについて」には、原則は個人別の年金天引きだが制度の定着までは口座引き落としOKにして、と書いてある。年金が減るとお年寄りは怒るからでしょうねぇ)
5、国民年金保険料と社会保険料控除
支払った国民年金保険料は社会保険料控除の対象になる。
本人に請求がいき、本人に納付義務があるが、世帯に連帯納付義務が発生するため、家族が支払ってもOK。支払った人の社会保険料控除となる。
多いのは、生計一の子供や孫の国民年金保険料を支払っている場合。
(国民年金法88条)
6、まとめ
上記のように、支払う社会保険制度が複雑化している。社会保険により、制度趣旨や担当先がバラバラで、年金天引きの適用もバラバラ。
例えば、年金生活をしている夫婦について検討してみる。夫の年金で生活している場合を考えてみる。
国民健康保険料は、現金支払いであれば夫婦のどちらかの社会保険料控除としてOK 。
妻の後期高齢者医療保険料を年金天引きならば夫の社会保険料控除にならず、現金払いや夫の口座引き落としを選択すれば夫の社会保険料控除になる。
支払方法を選ぶことによって、その家庭の税負担が異なる。
一方、介護保険料は、妻の介護保険料は原則として年金天引きだから夫の社会保険料控除にならない。
このように、社会保険の種類・支払方法によって異なる社会保険料控除の取扱いは、納税者にとって分かりにくい。
その上、介護保険料は選択肢もなく年金天引きされてしまうので、妻の分の年金天引き社会保険料が、夫の社会保険料控除にならない。
だからといって、介護保険料の徴収方法変更は現実的ではない。
以上のことから、税制で「控除対象配偶者の介護保険料&後期高齢者健康保険料はどっちの社会保険料控除にしてもOK」にすればいいんじゃないか?