税法の男女差は許される? @R2改正後の寡婦控除

2020.10. 男女差を考える月間!税法は担税力・課税の公平性の観点を重視するので、税法の男女差は憲法違反と思うわ。

所得税には、納税者の性別記載欄があります!

(個人住民税にも男女記載欄がある)

けど、これは任意記載です(国税庁の確定申告書作成コーナーでは飛ばせた)。

税法上、男女差は必要ないと考えているから、性別記載欄が任意なのだと思うんだ、わたし!

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1,寡婦控除、ひとり親控除

令和2年より、かつての寡婦(寡夫)控除は改正になりました。

判定として、まずは「ひとり親控除」(35万円控除)に該当するかどうかを判断し、ひとり親に該当しない”女性”は、その後「寡婦」(27万円控除)に該当するかどうかを判断します。

※女性(寡婦)は35万円又は27万円のどちらか。男性(寡夫)は35万円のみ

ひとり親控除 国税庁HPより → https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1171.htm

 ひとり親控除の対象となる人の範囲

ひとり親とは、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと又は配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の三つの要件の全てに当てはまる人です。

  1. (1) その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。
  2. (2) 生計を一にする子がいること。
    この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
  3. (3) 合計所得金額が500万円以下であること。

寡婦控除(女性限定) 国税庁HPより → https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1170.htm

 寡婦控除の対象となる人の範囲(令和2年分以後)

寡婦とは、原則としてその年の12月31日の現況で、いわゆる「ひとり親」に該当せず、次のいずれかに当てはまる人です。納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象となりません。

  1. (1) 夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
  2. (2) 夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
    なお、この場合は、扶養親族の要件はありません。

(注) 「夫」とは、民法上の婚姻関係にある者をいいます。

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2,寡婦控除の創設経緯

かつて、戦中戦後の日本は、女性の勤め先が少なかったのでしょう。

(富岡製紙工場内の展示には、随分と女性活躍の職場のようでしたが…)

コンメンタールによりますと、戦争未亡人が女手ひとつで子や親を養うためには追加的費用を要していた社会情勢があり、税制上の救済が必要だったようです。寡婦控除の創設当初(昭和26年)は、現在の障害者控除と共に税額控除だったようです。

(寡婦控除の詳細についてはまた別の記事にまとめるつもり。平成16年度税制改正の老年者控除との関係性がある)

いま。れいわよ。

今でも、ひとり親は大変よね。そこに男女差をなくした改正は良かったよね!しかし、男女差の完全撤廃とはいかなかった。女性の既得権を残した改正になりました。

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3,改正後 寡婦控除の男女差

(1)離婚した場合の男女差が残る

改正後の「寡婦」は、離婚して親などを養っている女性(例えば離婚後実家に戻ったり)は、合計所得金額500万円以下であれば「寡婦控除※」27万円の所得控除があります。

※(確定申告書は、寡婦、ひとり親控除の欄に記載する)

男性にはない。男性は離婚して実家の老親等を養うのは当然、ということなのかしら。分からぬ。(寡夫が追加されたのは昭和56年度改正。)

(2)死別した場合の男女差が残る

改正後の「寡婦」は、夫と死別した女性は、合計所得金額500万円以下であれば「寡婦控除」がある。男性にはない。

小野寺家の場合、夫が先になくなったら、私は「寡婦控除」27万円の所得控除が受けられる!私は女性だから適用がある

妻が先に死んでいた場合(美人薄命だからありえる)、夫は27万円の所得控除が受けられない。男だから適用がない

なんでやねん!

(3)救済対象はどこだったのか?

寡婦(寡夫)控除の令和2年改正では、専業主婦の未亡人を念頭に”寡婦”の概念を残したのかもしれないけど、夫の年金だけの未亡人って遺族年金非課税だし自分の国民年金は最大でも90万円以下だから所得税住民税がかからないんだけどね~。

なので、男女差別の感覚を残してしまい、救済されるべき人はほぼいない改正になりました。けど、大きな一歩だったと思います!

真の男女平等まで、あともう少しだ。改正後の「寡婦控除」は廃止にすべきです。

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4,社会保障と担税力

ところで、ひとり親に対して、税制上の配慮があってもいいと思います。

あるとき、税理士さんに「社会保障で解決すべき問題を税制に持ち込むべきではない(ビシィ!)」と指摘され、私はその通りだなと思い、自分の考えを改めたのです。

社会が支援したいという気持ちと、課税の公平性(担税力)とは異なる、という考え。確かに、どこかでごっちゃにしている自分がいた。

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5,女性の既得権

女性特有の支援が必要なことってありますよね。体力は男性と同じではないし、脳や体が異なるのであるから、なんでも男女同じという訳にはいかないでしょう。

だからといって、いつでもなんでも女性の既得権を認めていると、いつまでも女性は「支援すべき対象」で終わっちゃうんじゃないかしら。

「女性の管理職率を上げましょう」って聞くと、がっかりする。

能力ではなく性別で判断されているようでは、いつまでも女性差別はなくならない。

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6,”おんなの生き方”考(演歌ではありません)

ひとり親控除、のみでよく、寡婦控除は必要ないと思います。

独身女性と離婚後女性との差にもつながる。

結婚してキャリア断絶した”女性”への配慮という趣旨なのかしら。(いちおう、不公平感は残るけど遺族年金がある)

結婚して家庭重視か仕事重視か、という選択は性別で決まるのではなく本来は本人同士の意志であるべき。

社会は女性の人生の選択を許すべき

出産できるのは女性だけ。女性は人生の選択肢が複数あるから、自分で選べばいい。自分が選択した人生について、女性であってもその結果を受け入れるべき。過度な税制上の配慮はいらない。(ひとり親控除は必要)

税法上の「寡婦への配慮が必要」というメッセージには、違和感をおぼえちゃうな~。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。