政府税調14回令和4年9月7日開催 デジタル化による課税 AIロボット税・メタバース課税への意見

2022.9 政府税制調査会 第14回 令和4年9月7日開催を視聴。今回は、前半はデジタル化による経済社会の変容と課税(太田洋弁護士)。委員の議論、メモしました!

後半は政府税調委員の海外視察の報告は次回の記事にて。

政府税調 第14回 令和4年9月7日開催。太田洋弁護士のレジュメ、11頁でざっと読むだけでも面白かったです。(視聴は9月21日まで)

内閣府HP 政府税調14回 → https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2022/4zen14kai.html

金子宏さんの訃報につき、黙祷がありました。

有識者ヒアリング

太田洋弁護士による、デジタル化による経済社会の変容と課税、のプレゼン。0:30くらいまで。

おのでらの印象に残ったメモは下記です。(資料は上記URLリンクから見れます)

・アプリケーション「利用者」に働かせて儲けるシステム

・巨大なパーソナルデータを無料で活用できる

・どこにいても、どこへでもビジネスができる

・サービスの良しあしよりもビジネスモデルが重視

・PEでは限界、アナログビジネスとの課税の不公平

・リモートワークが増え、税負担が少ない国への移住

・メタバース上の税務上の問題点

・消費税、リバースチャージでは、もう対応無理

・AI・ロボット税に向けての議論

太田弁護士、資料が分かりやすい。話も分かりやすい。

わたし思うんだけど、もう、法人税所得税の所得課税では無理。消費課税へのシフトは避けられないと感じる。

質疑応答

田近委員

PEの問題について、国際間の課税権をどう与えるんだと。

ネットビジネスを持っているアメリカはイヤ。デジタルタックス制度もアメリカはイヤと。BtoB取引について、日本の付加価値税について見解が欲しい

太田弁護士の回答

OECDピラー1の国際行為について、付加価値税そのものを対象にしていないという理解でいます。

南米のような源泉徴収型のデジタルサービスタックスを禁止しているわけではないようだ。ピラー1は巨大プラットフォーマーへの課税だけであり、その他について課税は抜ける。そのふさぎ(?)として日本の現行制度、電子的役務の提供の消費税の在り方について検討するべきだ。

熊谷委員

ご指摘に異論はない。議論を深める意味で質問を2つ。

1つ目。プラットフォーマーへの義務に重きをおいているように見えるが、自律分散的組織DAOのような組織への対応をどうするか。普遍的な対応が必要、税を取りはぐれないという視点が重視されているように思うが、新規ビジネスを育てる視点も必要、WEB3の時代にどのような対応を考えているのか質問する。

2つ目。正義・公平という観点もあるが、国際的な争いでもある。WEB3の時代にコンテンツが強くなりプラットフォーマーが弱くなる。他国に対してどのような税制として主張するべきか、質問する。

太田洋弁護士の回答

難しい問題である。自律分散的組織への課税は、プラットフォーマーを抑えればいいが、誰に課税権があるのかどのようなネクサスをとらえればいいのか分からない。国際的議論の蓄積がまだ深まっていない。どのような課税が適切かどうかは率直のところ分からない。究極的には、決済の時に把握すればいいが仮想通貨での決済では抑えきれない。次の課題になると思う。

国益の観点から、残念ながら政府はDXに力を入れているが、製造業が強いのでデジタルのデジタルモデル、課金していくのが弱い。EUの戦略を参考にすべきだと考えていて、デジタルプラットフォーマーへの課税がよいのでは。国際的に課税を主張していくといいのでは。

自律分散的組織が普及化(?)するまでには時間がかかるだろう、それまではプラットフォーマーへの課税からスタートするべき。

(はい、ありがとうございました、勉強になりました、と回答を遮る形で終わらせる熊谷委員。質問と言うより自分のアピールっぽい~。。。)

吉村委員 (メタバース脱税?)

1つ目。デジタル化が進む中で所得把握が難しくなるとのプレゼンがあった。申告の情報把握が行われない見込みを教えてほしい。政府の目の届かないものへ所得を移していく大きな脱税のようなものになるのか、小口の納税者の脱税の問題なのかを知りたい。

2つ目。リモートワークが増えたため、働く場所の選択肢が増えた。どこまでを日本の再分配と考えていけばいいのか、教えてほしい。

太田弁護士の回答

1つ目の回答、メタバースの中で脱税が横行する場合、どんなことが考えられるかという質問について、マネーロンダリングのようなことが行われてしまうのではないかという懸念がある。銀行間取引だと当局にお金の流れが把握されてしまう。メタバース内の通貨取引や土地転売だと国税当局に把握されにくいのではないか。

2つ目の回答、アメリカは物価高が理由と報道されているが、物価の安いメキシコに移動してアメリカで働く、といったことが起こっている。サラリーマンや私のような弁護士は、日本にいなければ働けなかったが、リモートワークが広がったため外国移住も可能になった。課税をどこでとらまえるか、どこで価値を生み出しているかで課税するのは難しくなる。どこでお金を使っているかを補足して課税するしかないのでは、と考えている。

土居委員0.51 (法人実在説・擬制説)

8頁のコメントをします。インバウンド電子的役務の提供については、国税当局に早急の対応を希望する。

10頁について質問をする。ロボットへの課税について、法人は実在説・擬制説とあるが、それを超越したAI・ロボット課税がありえるのか。所得捕捉できるかどうかは課税当局の話です。

高炉で作った製鉄は誰が作ったのかというと、法人実在説(犠牲説?)的に法人所有だから法人に課税している。その議論とAI・ロボット課税と同じなのか。高炉で作った製鉄と、ロボットが行う役務提供は同じなのか、租税法的な観点から質問をした。

おのでらの感想:

面白い!高炉で作った製鉄と、AIが行うコンサルタントとの区別!次の佐藤委員の発言を受けて理解できたけど、前者は工場の均等割りもあるし固定資産税もあるし、各種税金、社会保険料もあるよね。けど、AIの役務提供なら、償却資産ではないし社会保険料負担もないよね。

太田弁護士の回答

質的に違うと思っている。

いずれAIやロボットが自律的に~な時代がくるかもしれない。

ロボットが新しいロボットを作ると、新しいロボットの所有者が誰かが分からなくなる。人間に帰属しないロボットが出てくるのでは。民法の所有の論点になると思うが、法人実在説か擬制説かの問題と同じで、AI,ロボットに法人格を与えるかどうかが問題になってくるだろう。

法人の場合、人間が設立するが、ロボットについては誰にも帰属していないAI,ロボットがありえる点が異なると考えている。誰にも帰属していないロボットに法人格を与えるのは違うと思う。

中里会長「財団、のようなものですかね。これはまた考えましょう」

佐藤委員0.55(AIロボット税、メタバース課税)

AI・ロボット税、人間に帰属しないAI・ロボットに法人格を与えるという視点について、なるほどなと思う。そのAI・ロボットに対して誰かが支払う対価について損金計上するのであるから(AIへの給与と同様に源泉徴収するのか)、ロボットに課税して益金経常しても最終的に税収は変わらないのでは。

AIロボットを財産価値として固定資産と捉えるのか、AIロボットに均等割り・人頭税という概念を取り入れるのかという考えもあるのでは。

メタバースについて、アメリカで聞いてきたが、やはりよく分からない部分がある。

仮想通貨で取引されていると法定通貨に換金されないのであれば仮想通貨で納税することも認めればいいのでは。

資産価値が上がる前提で議論されているが、逆のパターンで、たとえばメタバースの土地の下落による損を損金を認めるという認識でよいのか。対称性の確保、税収の安定性について検討するべきだ。

太田弁護士の回答

難しい質問ですが、人間に帰属しないロボットが得る所得があるとして、そのロボットへの支払いは損金なのだからロボットも益金にして課税しないと理屈が通らなくなる。

メタバース内で現実世界とのリンクをとらえて課税するのかリンクさせないでメタバース内で課税するのか。ご指摘の通り、メタバース内の取引について課税するなら、例えばメタバースがサイバー攻撃で消滅した場合には控除を認めべきで、バランスはとるべきだと思う。

辻委員1.00(まちづくりの観点から)

メタバース上の固定資産税とまちづくり、について質問をする。

実態のアナログの店よりもメタバース上のビジネスの方が税負担が軽くなり、現在淋しい商店街の場合、さらに商店街が寂しくなってしまう。

メタバース上の資産評価を工夫し、償却資産として課税できるのか、まちづくり・資産課税の公平性の担保という観点から、どういう課税が適切と考えるか。

太田弁護士

私が答えを出す問題ではないでしょうが、現実世界とのリンク時に課税するのか、メタバース上の流通段階で課税するのか、という問題であろう。

メタバース上の課税がないならば、無限の課税繰り延べになってしまう。なので、メタバース上でも課税をするべき。

メタバース上の土地は固定資産ではないため、店に価値が出るのは人が集まりやすい場所なので、固定資産の部分だけで課税するのは全体捕捉という意味では適切ではない。根本的な考えを変えないと適切な課税ができないと考えている。

寺井委員

8頁の(消費税の1000万円の)免税点制度について、国内事業者と国外事業者の不公平はないと思うが、それについては。

基準期間を短くすれば解決するのか?

太田弁護士の回答

海外事業者の場合と国内事業者の不公平について。国内事業者は、消費税法12条3 グループ全体の課税売上5億円超の納税義務の免除の特例がある。国内の課税売上で判定しているため、海外事業者の有力事業者は最初の2年間の免税がありえるので有利。

(おのでら:寺井先生、大丈夫ですよ。インボイス制度が始まり、いずれ益税なくなります)

梅澤委員(流行りは廃れる)

情報共有をする。トークンが増えている。しばらくすると流通が細って消滅する(新しいゲームが生まれては飽きられる、のような)。佐藤委員の発言のとおり、消滅時の観点は重要

これからの日本はWEB3の世界を実現すれば日本の次のチャンスになる。しかし、当分は草創期が続くであろう。NFTブームもバブル崩壊しつつあり、3回目くらいに成功するかもしれない。今からとりっぱぐれの話をしてもしょうがない。WEB3、NFTが話題だが、スタートアップは集まっていない。

AIロボット税、人間に帰属しないロボットはAGIという認識でよいか。AGIはかなり先の話で、まだ心配する時点ではない。従来の法人課税でよいのではないか。

太田弁護士の回答

AGIのことで、レジュメ記載のとおり中長期的課題として取り上げていて、利益稼得者に課税でよいと考えている。

WEB3.0とビジネス振興の観点、日本がトークン発行地として選ばれていないのは締め付けが緩い国(スイス、シンガポール)が選ばれるから。

メタバース上の課税は、国際的協調の議論で、日本だけで対処するのではない。

梅澤委員の発言、日本にいると含み益に課税されると誤解があるからスイス・シンガポールに流れているという認識でいる。

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投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。