政府税調 第21回 国際課税 説明

2022.11 政府税調 第21回 令和4年11月4日開催 国際課税の制度について、役所の方の説明を聞いたおのでらのメモです。

政府税調 第21回 資料 → https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2022/4zen21kai.html

(関連記事:政府税調 第21回 委員の意見 → https://mina-office.com/2022/11/17/seifu-zeicho-21-iin/ )

主税局 国際課税担当ニシカタさんより要点を絞って説明。

1、国際課税の論点と租税条約

5頁 国際課税の目的は2つです。①我が国の適切な課税権の確保②我が国経済の活性化

6頁~ 対象者について。居住者は全世界課税、非居住者は国内源泉所得のみ。PEの問題、支店などが日本になければ非居住者・外国法人に該当せず課税できない。これがOECDのモデルルールに沿った考え方だが、昨今では議論が出ている。

10頁の租税条約は説明省略。

租税条約は、課税関係の安定(法的安定性の確保)、二重課税の除去、脱税及び租税回避等への対応を通じ、二国間の健全な投資・経済交流の促進に資するものである。

※OECD(経済協力開発機構)は、2,000名を超える専門家を抱える世界最大のシンク・タンクであり、経済・社会の幅広い分野において多岐にわたる活動を行っている国際機関です。外務省HPより → https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oecd/gaiyo.html

2、国際課税を取り巻く経済環境の変化

12頁、日本の経済収支を見ると、過去25年間、外国からの配当収入が外国に支払う配当収入よりも多い。関連海外子会社への投資が増えている。

16頁、クロスボーダーの直接投資残高が増加している。

※ クロスボーダーは、国境を越える取引のことで、総じて国際間取引のことを指すようです。

18頁、対外・対内直接投資残高。

2001年時点で、対GDP比で相対的に高い対内直接投資残高を有していた国は主として資源国、高い対外直接投資残高を有していた国は主として先進国であり、また直投受入/実施の残高が各国のGDPを上回ることはほとんどなかった。
しかし、2021年においては、経済規模の小さな国・地域が上位となるとともに、その額は名目GDPを遥かに上回る規模に達している。

19頁、日本のサービス収支の推移。知的財産権使用料の収入の黒字幅拡大、インターネット広告サービスや知財権売買の支払いにより赤字幅が拡大。

知的財産権使用料は海外子会社からの支払いが増加。

21頁、知的財産権が発生していない国が知的財産権使用料受取額トップ10に入っている。これは税制優遇を利用して外国から誘致したからと思われます。

3、BEPSプロジェクトの概要と我が国の対応状況

24頁、国外関連者(多くは親子会社間)の価格を調整して所得を移転することへの規制を行った。税率が低い第三国へ国外の子会社を作り、グローバルに所得を集めて租税回避を行うことが散見され、税制上の規制を行った。

27頁、 BEPSプロジェクトは、公平な競争条件(Level Playing Field)の確保という考え方の下、多国籍企業が課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行うこと(BEPS)がないよう、国際課税ルール全体を見直し、世界経済並びに企業行動の実態に即したものとするとともに、各国政府・グローバル企業の透明性を高めることを目指すプロジェクト。

32頁、BEPSプロジェクトへの対応状況と税制改正の経緯。

4、経済のデジタル化に伴う課税上の課題への対応

34頁、PEがないため課税なし、インターネット取引が発達しても市場国で課税されないため、経済電子化により軽課国に会社を移す(又は子会社を作り)などがあると、最低限の課税が行えない問題が出てきた。親会社がある国・市場国でも課税ができない。税率が低い国が誘致し、税率下げ合戦で疲弊する問題が出てきた。

35頁、2021年10月に大きな枠が出来た。2023年前半までに多国籍の承認を目指している。ピラー1、ピラー2。

・ピラー1 DST

ピラー1、第1の柱。PEがない場合にも市場国で生み出された価値に見合った課税権を市場国に配分できるよう、市場国で課税できる利益について国際課税原則を見直す。

(おのでら:DST、売上に数%課税するもの。)

米国は、2021年10月8日の合意後に英仏伊西墺印土との間で、デジタル・サービス・タックス(DST)等に関して合意。第1の柱の制度発効までのDST等の税額を第1の柱の実施による税額と実質的に同水準に留める枠組み(注)の導入を条件として、7か国のDST等に対する制裁関税の発動を取りやめることとした(7か国は制度発効時まではDST等を廃止する必要はない)。

ピラー1の「課税対象(scope)」は、売上高200億ユーロ(約2.9兆円)超、利益率10%超の大規模・高利益水準のグローバル企業グループ(全世界で100社程度)なので、多くの企業には関係がない。

(おのでら:利益率10%を超えた残余利益の25%を市場国に割り振る。)

(おのでら:そのピラー1の配分の仕組みって、役員報酬や何らかの使用料などで利益を引き下げれば残余利益が減らせるのであるから、根本的な解決になるのかしら。とりあえず仕組みだけ作っておくのかな?)

・ピラー2 (国内ミニマム課税も)

41頁、ピラー2、第二の柱。国際的に最低限の実効税率(15%)を定めた上で、それを下回る国(=軽課税国)における最低税率での課税を確保。親会社所在地国が、親会社に対して、子会社の税負担が最低税率に至るまで課税(所得合算ルール)。

年間総収入金額が7.5億ユーロ(約1,100億円)以上の多国籍企業が対象。一定の適用除外を除く所得について各国ごとに最低税率15%以上の課税を確保する仕組み。

(おのでら:軽課国に子会社を作って所得移転しても、日本にある親会社に課税できるようになる。)

IIR,UTPR,QDMTT、と3パターンある。

国内ミニマム課税(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)は、自国に所在する事業体全体の実効税率が15%未満の場合に、他国において上乗せ課税されるのを防ぐため、各国が導入できる制度。

(おのでら:とはいっても、軽課国防衛のため、15%まで追加課税するならば、日本の親会社で課税しませんという仕組みをQDMTT(国内ミニマム課税)というそうです。)

日本の現在の法人税実効税率は約30%なので、約束された最低実効税率15%を割り込む可能性は低いが、措置法が重なると実効税率15%を下回ることはありえる。その場合は国際的合意により国内ミニマム課税により15%に達するまで追加課税できるような仕組みを作る予定。

45頁、執行されてみないとグローバル企業の行動は不明だが、各国が競い合って下げていた法人税率が国際合意15%になったため、法人税率引き下げ競争に一定の歯止めがかかることが期待されている。

5、税の透明性の向上のための国際的な取組み

48頁、報道ベースでパナマ文書と呼ばれる租税回避地の内部文書があり、タックスヘイブンの存在が明らかになった。課税逃れの批判が高まった。

49頁、税務当局間の情報交換という、納税者の取引などの税に関する情報を税務当局間で互いに提供する仕組みが出来た。

日本は2018年から非居住者の口座情報交換を開始。(CSR)

52頁、CSRの対象に暗号資産が2022年8月末に追加された。各国に把握される。電子マネー、NFT等も追加か。日本でも実施スケジュール等の検討に入る。

(おのでら:やるんですよ!)

55頁から59頁、過去の政府税調で議論になったことのまとめ。シェエコ・ギグエコノミーの情報報告義務について。

(おのでら:フリーランスの収入把握、インターネット上の取引の収入把握のこと。)

32.10

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。