相続により取得した財産の種類によって、将来の所得税の課税関係が変わるなんておかしい!という話
この考え方については決着はついている。
相続税は富の再分配、所得税は儲けに課す税金だった。そうだ、そうだった。
国税庁HPより。「相続税と所得税の関係について」→https://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/74/01/index.htm
でも、保険の契約締結から相続発生までの値上がり益は、一時金取得なら非課税、年金形式取得なら課税になってると思うんだけど???
クリックできる目次
1、相続した生保年金は、値上がり益のみに課税
相続した生命保険年金について平成22年の裁判で値上がり益部分のみに所得税の雑所得を課税することに変わった。「生保年金二重課税判決」(最判 H.22.7.6)
一般の主婦が立ち上がり、裁判して所得税法を変えちゃったらしい!(専門家が背景にはいたんだろうけど)
生保年金は、相続時以後の値上がり益(運用益という方が分かりやすいかな)にのみ、課税する(級数法のような考え方。時間がたつほどたくさん課税される)方法になった。
一時金受取の場合は相続課税のみ、年金受取の場合は相続課税と所得課税の両方が課されるという歪な状態となり(39)、その不均衡が夙に指摘さ れていた(40)。
2、一方、相続した土地などは、取得費を引き継ぐ
相続により取得した土地は、相続時の相続税評価額を無視して、被相続人の取得費と取得の時期を引き継ぐ。(限定承認は除く)
なんで、いったん相続税が相続税評価額でかけられているのに、売却時には被相続人の取得費なの?
相続時からの値上がり益という考え方がない。被相続人の取得時から相続人の売却までの値上がり益に所得税を課税している。
3、取得した資産によって所得が変わるように感じる?
生命保険年金の権利を相続して年金方式により取得したら、所得税の計算上の必要経費は「保険料の支払総額をベース」
土地を相続したら、売却時の取得費は「被相続人の取得費」
普通に被相続人の取得費(所60条)・支払保険料を引き継いでいる。何が疑問だったんだっけ?
4、「生保年金二重課税判決」(最判 H.22.7.6)のワケ
「生保年金二重課税判決」(最判 H.22.7.6)は、相続税の貰い方によって所得税の課税関係が変わるのはおかしかった、という判決だった。
この判決は、所得税法の話というより、相続税の話。生命保険に関する権利を、もらうときに一時金でもらえば非課税(所9条16)に、年金方式でもらえば雑所得になる。どうやら、より有利に保険金が入手できる年金方式を選ぶと、不利な所得税計算をしていたようだった。
5、相続財産ごとにひいきしていた訳ではないらしい
生命保険に関する権利だけを優遇しているように思えるんだけど・・・
土地などが取得費引き継ぎで、売却時に所得税課税の負担が多いのはおかしいと思う。けど、相続時に相続税評価額で相続税を課すのは、先祖代々に大金持ちを増やさないという考え方からだった。
だから、所得税は被相続人の取得費と相続発生時の土地の時価との差額は、相続人に繰り延べているんだって。なんか分かったような分からんような・・・
アメリカ・イギリスでも同じような課税関係。で、オーストラリアとカナダは限定承認のように、相続時に被相続人が売却したものとして被相続人である故人に所得税を課し(みなし譲渡所得課税)、相続税を廃止したみたい。
6、みなし譲渡所得課税がいい。
相続して相続財産を売却して利益がでると、たくさん所得税がかかって、相続税を負担したばかり・相続税の納付のために売却した場合だと、また負担する所得税を二重課税と感じるよね?
課税の趣旨が違うから!という考えは何となく分かるけど、納得いかなくない?
だったら、土地建物は、死亡時にみなし譲渡所得課税にすればいい!相続税に含めてしまえば、いいんじゃない?その後の売却時も計算が楽だし。
ところが、みなし譲渡所得課税だと、事務負担が増えるらしい。偉い人はそう言っている。概算取得費5%を増やしてあげれば?
みなし譲渡所得課税だと、譲渡所得部分の所得税相当額は債務控除(確実な債務ではないから)できないから可哀想だから現行制度だとよくない。偉い人はそう言っている。じゃあ、債務控除の規定を変更すれば?
今も、所得税も相続税に配慮して、3年以内の相続財産を売却した場合の相続財産の取得費加算もあるわけだけど、土地に関しては、売却した土地のみに限定されるように平成26年税制改正があった。
平成26年より前は、売却していない土地に係る相続税額分も3年以内売却の土地の取得費に加算しちゃっておかしかった、と思っていたけど、全然おかしくないよ。
だって、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日の翌日以後に、相続により取得した土地・借地権を売却しても、相続税がまったく考慮されなくなっちゃった。・・・家族でケンカしてたら、3年などあっという間だよ。未分割の小規模の後出しの特例を受けて、大至急売却すればセーフ?買主が見つからないじゃん。きちんと整備できてなくない?それとも、救済措置がある??
だったら、死亡時に一旦取得費をリセットする、みなし譲渡所得税がいい。概算取得費の割合を上げて、債務控除も認めてあげれば、分かりやすいと思う。
7、なんかスッキリしない。
素朴に疑問を抱いたけど、なかなか奥が深かった。
取得費・取得時期の引継ぎは、DNAのリレーと考えるとすっきりいくけど、富の再分配のために相続税をかけているところと、なんかしっくりこない。
土地等の売却損が出た場合に相続人固有の土地等の売却益と内部通算できてしまったり、相続してすぐ売却しても長期譲渡所得になったり、なんか美しくないんだよなぁ・・・
相続税の課税価格の計算上、立木を85%するのは、立木を譲渡したときの相続人が負担する所得税額を考慮しているんだって。なんだよ、やればできるんじゃないか!
偉い人たちで細かい議論が行われていて、「経済学的には」「租税的には」と話し合っている。読み込んだら分かるのかな?
で、偉い人たちの中にも、「納税者の批判の解消には全然役立ってない」という人がいた。
私もそう思うよ。納税者が納得できない理屈では困る。
「相続税と所得税の二重課税問題について考える。相続生保年金」への1件のフィードバック
コメントは受け付けていません。