30.12.21 財務省から、閣議決定された税制改正大綱2019が発表。来年3月以降に可決されれば法律になりまーす。
今回は、資産課税をまとめていくよ~。
クリックできる目次
・リンク集
(財務省HPより) 税制改正大綱2019 → https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/index.html
(財務省HPより) 税制改正大綱平成31年度 PDF → https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2019/20181221taikou.pdf
第二 資産課税
1 個人事業主の事業用資産 納税猶予制度創設
(1)個人事業主 相続税の納税猶予
平成31年1月1日から平成40年(2028年)12月31日までに相続等で個人事業主の仕事用の資産を取得して事業を継ぐ場合には、相続税・贈与税の支払いを延期するシステムが創設されるかも。
・法人と個人でヒイキ?
法人組織にしておけば相続税・贈与税の支払いが延期できるのに、個人事業主だと直ちに払え、というのが今の税金のシステム。それってひいきなんじゃないか?個人事業主の事業承継にも力を入れましょうという趣旨。仕組みとしては非上場株式の納税猶予制度と似ているよ。
・認定相続人
事業を継ぐ人は、税理士(認定支援機関)を経由して「事業を継ぐからOKをちょうだい」と役所から認定(承継計画を都道府県に出す)をもらいます(認定相続人になる必要がある)。相続税の申告書に「相続税は延期でヨロシク」と書けばいいというものではありません。担保もいるよ。
・不動産貸付は適用なし
納税を延期できる資産(特定事業用資産)は、被相続人(亡くなった方)の事業のために使われていた設備や建物、土地など。不動産貸付業は除外なので、65万円控除を受けている不動産貸付業でもNG。
制度の趣旨として、「商店街などから個人商店がなくなったら寂しいから」と思ってもらえればいいかも。不動産の貸付けは、税金計算上は保護ランクが下がるんです。
・特定事業用資産
さて、例えばお店経営のオーナーさんが亡くなり、お店を継ぐ場合で、オーナーが所有する建物(床面積800㎡まで)・土地(400㎡まで)・お店の設備(固定資産税や車の税の課税対象となっているもの等)が納税猶予の対象。貸借対照表に載せておくことが大事!になりそうです。それぞれが青色申告の承認を受けていることも要件。今からでも遅くない!きちんと帳簿を。
・納税猶予 おいくら?
納税猶予額は、非上場株式等の納税猶予制度の計算式と同じ。
せっかく事業を継いだのに、継いだ人がお店経営中に亡くなったり障害などでお店経営を続けられなくなったり、5年続けてから次世代に経営を譲った場合には、延期していた相続税(贈与税)は支払いを免除するというシステム。
次の相続人・事業承継者へ、税負担というバトンを渡す感じ。
それ以外、なんとなくお店をやめた、というような場合には相続税(贈与税)を直ちに耳揃えて支払い、ついでに利子税(年3.6%だけど利子税の特例を使うと現状だと貸出約定平均利率の年平均0.6%の場合には0.7%で計算)も上乗せして支払う。
・債務控除と相殺NG
なお、被相続人(亡くなった人)の借金も一緒に相続したので、プラスの財産と借金を相殺して節税!は出来ないようになっている。あと、家族給与を支払っておけば・・・というスキームも出来ないようになっているよ。残念でした!
・小規模宅地等と選択適用か
事業用の土地については、小規模宅地等の特例というめちゃ有利な制度との選択適用となるよ。
恐らく、土地は小規模宅地等の特例、土地以外の事業用資産(建物や機械設備など)は創設予定の納税猶予制度を使うのが一般的なのかな、と妄想いたしました。
・農家に朗報の納税猶予
個人事業主が多くを占める、農家の方にも朗報よ!
しかし、乳牛、養鶏場のニワトリさんには、償却資産税がかかっていないようだよね。ということは、納税猶予制度の適用がないのかしら?育てている肉牛は棚卸資産??
(2)個人事業主 贈与税の納税猶予制度
ほぼ、上記の相続税の納税猶予制度・非上場株式等の贈与税の納税猶予制度と同じ感じ~。
事業を継ぐ方の年齢が成年以上、なので平成34年4月1日以降は18歳以上。
あんまり、使わないんじゃないかしら。
(3)特定事業用宅地等の小規模宅地等の特例
相続税の計算では、お店経営をしている場合のお店の土地は、安く計算できる特例がある。けど、これは生活基盤には相続税を抑えてあげようという趣旨なので、相続で取得して税金の特例を受けてさっさと売るのはズルイのではないか、という議論がありました。
なので、平成31年4月1日以降に相続等により取得するお店のための土地は、相続開始前3年以内に開始したお店のための土地については税金の特例措置(小規模宅地等の特例)はナシになりそうです。(今回は制限の開始なので、平成31年3月31日までにお店のための土地であればセーフ)
2 教育資金の一括贈与非課税の見直し
2年間の適用期間を延長するけれども、制限をつけるようです。
もらう側の前年の合計所得金額が1000万円超える場合には非課税措置なし。(31.4.1~)
もらう側が23歳超の習い事には原則、非課税措置なし。
お金持ちのお子さんが、いい年しているのに非課税措置を使ってスポーツ施設やらお絵かきなどを親に出してもらって節税をしていたらしいですわ。
あげた側が死亡しても非課税措置の影響は続いたのであるけれども、平成31年4月1日以後にあげた側が死亡した場合には、死亡3年前までにうけた教育資金非課税措置の適用を受けた一定金額は、相続税の課税価格に加算。
節税封じ、やりましたね。(もらった側が23歳未満、在学中、教育訓練受講中はセーフ。もらった側が30歳の時点で在学中、教育訓練受講中は40歳まで期限延長。)
などなど。
3 結婚子育て資金の贈与税の非課税
2年延長です。もらった側の前年の合計所得金額が1000万円超の場合には適用なし、になる見込み。
4 措置法
へ~こんな法律があるんだ、こういう部分をケアしていくんだ、ということを掴むことを重視しております。
私は個人的に思うんだけど、詳しく分からなくてもざっと読んでおくことが大事だと思う税制改正大綱。
農地の納税猶予制度、農地利用集積円滑化事業を農地中間管理事業に統合すること等に伴う所要の措置がある。・・・うーん、分かりませんな・・・。不動産取得税の非課税となるケースがあるみたいだけど・・・。
非上場株式等の納税猶予制度、もプチ改正。一時的に資産をたくさん保有する会社になっても、6カ月以内ならセーフとするらしい。
鉄軌道事業者が取得した新造車両の固定資産税の課税標準の特例措置について見直しを行ったうえで2年延長。
防災上重要な道路における無電柱化のため、道路の地下に埋設するために新設した電線等の固定資産税の課税標準の特例措置を見直しした上で3年延長。
熊本地震による被災住宅宅地等の固定資産税・都市計画税については平成31年度分及び平成32年度分は特例継続。
公益社団・公益財団が重要無形文化財関係の一定の伝統芸能公演のための専用施設に関する固定資産税・都市計画税の特例措置を2年延長。(不動産取得税の特例も)
こども子育て支援法の政府助成を受けた一定の者に関する保育施設のための固定資産税・都市計画税の特例措置を2年延長。
障害者雇用促進等のために助成金等の支給をうけて取得した事業用施設に関する固定資産税・都市計画税の特例措置を2年延長。(不動産取得税の特例も)
都市再開発法に規定する市街地再開発事業の施行に伴い従前の権利者が取得した一定の家屋に係る固定資産税・都市計画税の減額措置を2年延長。<登戸の区画整理みたいな感じ?>
密集市街地における防災地区の整備促進の法律に規定する防災街区整備事業の施行に伴い従前の権利者が取得した一定の家屋に係る固定資産税・都市計画税の減額措置を2年延長。<川崎のプチ宿屋で火事がありました・・・>
一定の駅施設、一定の市街化区域のトンネルの固定資産税(都市計画税)の特例(非課税)措置を2年延長。
新設のサービス付き高齢者向け賃貸住宅に係る固定資産税の減免措置、2年延長。(不動産取得税の特例も)
災害・原発関係では、不動産取得税の徴収猶予の適用を受けている農地等について。福島の南相馬市・富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾町、飯舘村の避難関連区域の一定の代替え農地等の取得期限は避難指示の全解除から5年(現行は1年)を経過する日とする。
東日本大地震、福島復興特別法、小笠原帰島、宅建業者の取得した住宅(20)などもあり。
一定の理容師・美容師養成施設に事業所税の特例措置。(政治家のニオイがしますか)
特定農産加工業経営改善臨時法に規定する承認計画に基づく特定農産加工業者に菓子製造業・パスタ製造業・砂糖製造業を加えて事業所税の特例措置。(政治家のニオイがしますか)
沖縄の情報通信産業振興地域の一定の情報通信産業・事業革新促進地域・国際物流事業の事業所税の特例2年延長。
5 その他
相続税の未成年関連!
平成34年(2022年)4月1日から、20歳ではなく18歳から成年になります!以下の相続税の規定が変更になる。
⓪未成年者控除
①相続時精算課税制度
②直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例(直系卑属の贈与税軽減税率)
③相続時精算課税適用者の特例
④非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度(特例制度も同様。10年間限定のアレことと思われる)
配偶者居住権
配偶者居住権の評価額が決まったわ~。
なお、配偶者居住権には、設定に登録免許税がかかるらしいです。(建物の評価額の2/1000)
建物は住宅用耐用年数の1.5倍で計算するらしい。
物納劣後財産になります。
土地の評価についても決まったけど、法定利率が微妙じゃないかしら。これは別記事にて検討いたします。
寄与分
特別寄与者に対する特別寄与料が確定したら、特別寄与者が被相続人から特別寄与料を遺贈によって取得したものとみなして相続税を課税。
遺族が支払うべき特別寄与料は相続税の課税財産から控除。
更正の請求の特則に該当。
内縁の妻のように、相続権がないけどずっと被相続人の世話をしてきて、「オイラが死んだら内縁の妻にいくらか」みたいなケースを想像いたしました。内縁の妻と本妻が話し合ったり裁判をしたりなどで、内縁の妻へ渡すお金(特別寄与料)が決まったら、内縁の妻には相続税がかかる可能性がある。(内縁の妻は法律婚ではないので、配偶者の税額軽減はない)
本妻などの遺族が、内縁の妻に支払うお金相当額は相続税の計算から減らします。税金計算のやり直しをしてくださーい。
※31.4.11 訂正追記 特別の寄与料は、被相続人の「親族」に限定されるため、内縁の妻は特別の寄与料を受け取れませんでした。子の嫁、みたいなケースならOK
・・・ここまで、47ページ。次は法人課税、いってみよ~!