宅建士が訴えられたケース。納税猶予

31.4.18 宅建士さんて、意外と税務で訴えられているよね~。

今回見つけたのはこんなケース。

平成15(ワ)2847

さいたま地裁 下級裁裁判例 平成17年7月20日→ http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/045/006045_hanrei.pdf

・訴え

延納をし、かつ農地の納税猶予を受けていた納税者が、その農地を駐車場に転用し、賃貸した。本件の農地の納税猶予は、(地方なので)20年間農地を継続していれば、納税猶予の免除が確定して相続税&利子税を納税しなくてよかった。

なのに、宅建士が「あと数年待ったら!」と言わなかった責任がある、と訴えた。

農地の納税猶予の打ち切りにより、相続税本税は5634万円、利子税と合わせて1億2106万円は、宅建士の注意義務違反だから弁償して!ついでに弁護士費用1141万円と、遅延利息もね!

という訴えです。

・宅建士のせい!

納税者は、

「宅建士(の勤める会社)は納税資金のために安い金利でお金を貸したのであるから、過失を認めたのではないか」

「他の組合員も大勢、納税猶予や相続対策をしているのであるから、税務について分からなかったということはないのではないか。」

「登記簿等謄本を見れば、延納が終わったのに担保が外れていないことに気が付いたはずである。」

「私は納税者だけど税務の素人だから延納したり納税猶予をしたけど意味分かってないから自分のせいではない」

と主張した。

・納税者のせい!

宅建士は、

「その賃貸に関する報酬は、組合員に対するサービスのため無償だった。」「税理士じゃないから分かりません。」

「延納の担保なのか納税猶予の担保なのかは、登記簿に書いていないし、延納は5年だけど延長も出来るのであるから、税務申告を代理できない宅建士では判断できない。」

「今までも、税務に関しての組合員からの相談は税理士への依頼を勧めている。」

「安くお金を貸したのは、組合員だし困っていたからで、責任があることを認めた訳ではない。」

と、反論した。

・棄却

上記の納税者の訴えは、結局棄却され、宅建士は損賠賠償をせずに済んだようです。

農地の納税猶予は、3年ごとに農業委員会で証明書をもらうわけだし、「自分の税金のことだけど全然分からない」訳ないでしょ、ということも争点だったようです。

農地の納税猶予は、本税のほか利子税もえらいことになるので、確認しすぎて悪いことはない。ちょっと税理士に聞いたくらいじゃ、分かる訳ないのよ。エスパーじゃないんだからさ。

 

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。