昨日の渡る世間spで気になる税務申告

2019.9.16 見ましたか?「渡る世間は鬼ばかり 敬老の日3時間スペシャル」。視聴レポートです。相続税、所得税、消費税、法人税、源泉所得税、なんで普通にテレビ見れないの、わたしは?

渡る世間は鬼ばかりの家系図は、難関を極めます。

TBS HPより → http://www.tbs.co.jp/oni/kakeizu.html

1、中華料理店、幸楽のおばあちゃんが死亡。遺言書ありっ

さつき(泉ピン子)の姑の49日法要から話は始まります。

・嫁には相続権がない

「嫁には相続権がないなんて」と愚痴ったところへ弁護士(松村雄基)さん登場。

「アメリカの出張から戻って今伺いました。実は幸楽のおばあちゃんから遺言書を預かっています。長男の嫁のさつきさんに、幸楽の経営権、その他すべての財産を譲る」

・嫁の相続税は二割加算

嫁は血族ではないため、相続税の2割加算の対象、です!もし、嫁を養子にしていれば2割加算はない。(相続税法18条)

相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。

・・・そんな国際派弁護士が街の中華料理屋の90歳のバーチャン(老人ホーム入居)の遺言書を預かるってあるの?弁護士報酬ナンボ?

・遺贈の放棄

さつき「(法定相続人全員の前で)ええっそんな、私はいただけません、お姑さんのお気持ちだけで充分です。」

・・・これって、遺贈の放棄ですよね。さつきは、姑からの遺言を辞退しましたので、法定相続人が話し合いで遺産分割するのですね。

弁護士「いや、せっかくのお気持ちですから」

・・・!!遺贈の放棄の効果がなくなったの?

・特別受益、遺留分

法定相続人の小姑たち「まぁ、お兄ちゃんには餃子工場のお金も出してもらったし・・・いいわ」(うろ覚え)

・・・うーん?バーチャンから特別受益を受け取っていた、ということなのかしら。しかし、お兄ちゃんにはお金を出してもらったのであれば、バーチャンからの特別受益ではないよね?

小姑からさつきへ、遺留分侵害額訴求権の行使はありえますね。(法定相続分の半分は私の権利だから寄こせ、という権利)

・遺留分に関する相続税

遺留分侵害額訴求権(昔の遺留分減殺請求権)の行使があり、相続財産が移動した場合には、相続税のやり直しをすることができます!4カ月以内だから、早め!

裏ストーリーで、さつきが小姑や夫から「自分たちは法定相続人だから、一定の権利がある!一部は我々に寄こせ」と言われた場合には、弁護士と税理士に相談を!

相続税法の特則の更正の請求の期限に注意です。5年ではなく4カ月で失効、です!(特則・期限後申告 相続税法30条、特則・修正申告 相続税法31条、特則・更正の請求 相続税法32条)

・相続財産の把握 幸楽は法人?個人?

グーグル先生からご紹介されたブログ記事を拝見しますと、幸楽の土地はいっとき12億円の価値があったらしいのです。

このことから、幸楽は、個人事業、と推理いたしました!

バーチャンの遺言、「経営権をさつき」に、というのは、実は幸楽は法人化していて株式をという話なのか、不動産オーナーという個人事業主として幸楽の土地建物をさつきに、という話なのか、私は渡る世間の知識が浅くて税務判断できず。(なんとなく不動産が個人所有っぽいので小規模宅地等の特例も使えそうです!)措置法69条4

2、幸楽の料理持参して眞の職場へ乗り込む母親

四十九日法要に来なかった、孫の眞(えなりかずき)くんを苦々しく思うさつき。公認会計士だから期限前は忙しいの、大阪出張だったんだからしょうがないじゃない。

眞くんの嫁さんとうまくいってないからといって、息子の職場に幸楽の料理を持参してアポなしで突撃する、眞くんの母のさつき。

眞くんの上司(30代くらい)に散々正論を説かれて怒り心頭。幸楽の料理を上司さんに渡して怒って帰るさつき。

もう、子離れして自分の世界を持てば、とあちこちから言われる。さつき、年取って急にみんなから疎外されてるように見えて、ちょっと可哀想。足を引きずってても、皿洗いくらいやらせてやれよう。高齢者は社会参画させないと。

持参した料理は、所得税法・消費税法上は家事利用に該当するため、売上げに計上しなくてはなりませぬ!

・自家消費の売上計上(所得税)

所得税の確定申告(決算書)上は、棚卸資産の自家消費には別段の定めがあります!通常代金の70%を家事消費として売上計上。(所得税法39条)

うーん。しかし幸楽の餃子はたな卸資産とも言えないのではないか?すると、餃子の材料費+スタッフ人件費相当額の材料代等の金額を売上計上すればOKと思慮いたします!実務的には、個別事情により計算しますよん。

考え方として、材料費や人件費は経費計上しているわけだから、さつきがプラベ利用する餃子代について、売上計上しないとならぬですよね~。

(法人の場合にも売上計上。役員給与となります。)

・自家消費の課税売上計上(消費税もかかるんです)

消費税申告では、棚卸資産の通常代金の50%を家事消費として課税売上計上。お金をもらっていなくても、消費税はかかるのです。

うーん。幸楽の餃子は販売価格の50%ですかね?「棚卸資産に限る」と書いてあるわけであるから・・・・。といっても、ゼロ売上げはできませんです。所得税上の売上げと一緒にしちゃっているのが実態だと思いますが・・・。

棚卸資産の場合は特にだけど、家事消費は、所得税と消費税の取扱いが異なることがあり、結構難しいのです。

材料費の仕入れ分は、消費税の計算上控除するんだから一緒なんだけども。簡易課税の方は損した気分かもしれないけど、益税になるから簡易課税を選んでいるのだから、恨みっこなしです。

(消費税法4条の5)

5 次に掲げる行為は、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす。
一 個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合における当該消費又は使用
二 法人が資産をその役員(法人税法第二条第十五号に規定する役員をいう。)に対して贈与した場合における当該贈与

(消費税 基本通達10-1-18)

10-1-18 個人事業者が法第4条第5項第1号《個人事業者の家事消費等》に規定する家事消費を行った場合又は法人が同項第2号《役員に対するみなし譲渡》に規定する贈与を行った場合(棚卸資産について家事消費又は贈与を行った場合に限る。)において、次の(1)及び(2)に掲げる金額以上の金額を法第28条第3項《みなし譲渡に係る対価の額》に規定する対価の額として法第45条《課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告》に規定する確定申告書を提出したときは、これを認める。(平27課消1-17により改正)

(1) 当該棚卸資産の課税仕入れの金額

(2) 通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する金額

3、スマホデビューするさつき

店からも子供からも必要とされなくなり、忙しい姉妹のもとへアポなしで突撃するさつき。電話くらいしてよう。

いきなりスマホを購入し、妹の元夫に使い方を教えてもらう。・・・・。

・専従者に該当せず、専従者給与は?

こんなに毎日遊び歩いていて、さつきは店主の夫の専従者として給与計上できるのか、という疑問が沸きますよね!

個人事業主の家族給与、専従者給与の要件はいくつかあるけど、「もっぱら事業に従事」です。週3回でも大丈夫!

しかし、店に出てこなくていいからどこかで遊んでてよ、と言われる始末では、専従者と呼べない可能性はあります。もらった遺産があるから、散財してもいいのかな・・・。

・所得の帰属。事業主は誰?

あれ?おばーちゃんの遺言で「経営権はさつきに」ということは、店長の夫が専従者扱いで、さつきは事業主扱い?うむむ・・・。

さつきの事業所得なのか、夫の事業所得なのか。所得の帰属について、実態を把握しなければテレビだけでは税務判断は難しいですね。まぁ、夫だろうけど。

4、離婚した夫に財産をゆずる遺言書

ちょっとさつきの話からスピンオフしますが。

さつきの妹さんは旅行業を経営する女社長です。体調を崩したことで弱気になり、別れた夫であり共同経営者(?)へ自分の財産をゆずる遺言状を書いていました。

主な想定相続財産は、「自宅と会社と少しのお金」。うぅ、気になる相続税。(わたしはビョーキか)

・非上場株式等の納税猶予あり

当該旅行業は法人化しているのであろうから、事業承継税制は利用できそうね。相続税の納税猶予制度が拡充し、第三者が事業を承継しても適用OKになりましたね~。要件を満たせば、当座の相続税負担は少し助かるかもしれない。

非上場株式等の相続評価は、少し時間がかかるので報酬もかかります。早めに計算しておきましょ。早めの対策で相続税評価額の評価減の節税もあるわよ。

・小規模宅地等の特例の適用なし

自宅は、元夫は親族ではないため、小規模宅地等の特例の適用はないと思われます。

・配偶者の税額軽減なし

再婚すればいいのに・・・・。どれだけ長年連れ添ったとしても、離婚してたら配偶者の税額軽減の適用はない!死亡した時に籍がなければ、配偶者の税額軽減の適用はないのよ!

5、おかくらの配当

さつきの実家・「料亭おかくら」は、さつき父が死亡時に法人化して、さつき姪が「料亭おかくら」を経営しています。

さつき父死亡時に法人化した際、さつきの姉妹5人が株式を取得するスキームを組んだようです。

・経営の共有は良くない。

当時、どのような考えだったのかは分からないけど、株式を姉妹で持つのは経営が安定しないから良くない!のが定説。

株主の意見が対立してしまうと、経営判断が遅くなってしまうのです。他にやり方はなかったんかな~。経営者の姪っ子ちゃんが可哀想な~。おじいちゃんとの約束だからおかくらの暖簾を守っているのに・・・。伯母さんたちに配当としてもっていかれr

・贈与税の非課税枠110万円

どうやら、去年も「おかくら」は配当を行い、さつきはその配当金(100万円?)を姑に小遣いで上げたらしいのです。

贈与税の基礎控除は110万円なので、今回亡くなった姑のバーチャンに贈与税はかかりませぬ。(相続税法21条5他)

・配当の分配可能額(法人側)

今年もなんと5人の株主が「おかくら」に集まり、配当金(割と膨らんだ封筒でしたので、50万円~100万円ほど?)を受け取り、おかくらのご馳走のふるまいを受けます。

豪華な株主総会、みたいなもんね。羨ましぃ~♪

株式会社が配当を行う場合には、分配可能額という配当制限があるので、なんでもかんでも配当していいわけではない、と会計学の授業で教わりました~。まぁ、いとこ(えなりかずき)が会計士(会社法のプロです)なのであるから、大丈夫なんだろうけど・・・。

関係ないけど、株主への配当は法人の経費になりません!

・配当の所得税(個人株主側)

「おかくら」株式は、身内だけで持ち合うために作った株式であるため、上場していない株式に該当すると思われます。

上場株式に該当しないであろう「おかくら」は、株主へ配当する際に20.42%の源泉所得税を徴収する義務があります!(所得税法181条182条)

配当金を受け取った姉妹たちには確定申告する義務が発生する場合があります!上場株式からの配当と異なり、年間20万円以上(源泉徴収前の金額)の配当をおかくらからゲットした場合には、「配当の確定申告不要制度」はないので、自分の他の所得状況に合わせて、個人確定申告をしてください!

配当控除の適用がありえるし、源泉所得税が戻ってくる可能性が高いです!けど、住民税や介護保険料・健康保険料等は上がるかもね。

6、感想

税務関連の話が多いスペシャルでしたね~。

(何もしないのに)配当をもらえるなんてありがたいわ~という最後の姉妹のセリフ。くっブルジョワめっ。

そんなに儲かる飲食店とも思えないけど、あくせく現場で働く姪っ子ちゃんの給料を上げてよ。

株主に吸い上げられちゃうと、資金繰り面から経営が安定しないので、内部留保もしっかりやってくださいね。

幸楽の皆さん、おかくらの皆さん、小島家の皆さん、岡倉家のみなさん、税理士をお探しでしたら私に是非。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。