時論公論:食料自給率・高齢化。これからの農業

2020.3.20 NHK教育テレビの時論公論を見ました~。農業についてのお話しで、興味深く視聴しました。

①食糧自給率が低く、②農家が高齢化し、③農地が減少している。④農地の貸し出しを渋る高齢農家を説得しよう、⑤そして若い農家が効率的なIT農業を行い農作物の輸出をして稼げばいい---というテレビでの論調に、私はフィットしませんでした。

議論は、他の人の意見を聞く所からはじまります。自分との違いは、他人を知ることで浮き彫りになりますよね。さて、テレビと自分との相違点を挙げていきます。

1、食料自給率は66%。心配ない!

食糧自給率(カロリーベース)が37%台と低迷しているため危機感を感じている、とテレビでは言っています。

実は、30年度の生産額ベースの食糧自給率は66%です。多くの国民の口に入るものは国産農作物だ、ということ。

カロリーベースで計測していると食糧自給率が低く見えている。カロリーベースでは、油脂・小麦・大豆・砂糖・家畜のエサが外国からの輸入に頼っているので、全体の食糧自給率を下げているというそれだけの話です。

農水省HPより(食料自給率)→ https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html

参照するPDFデータは次のもの。

30年度 食料自給率 内訳

農水省HPより(⾷料⾃給率の基本的考え⽅ 平成30年度)PDF → https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012-12.pdf

2、農家の高齢化。労働寿命が長いので大丈夫!

農家の大半が60代以上が占めている高齢化を危惧しているとのこと。

ん・・・・農水省のデータでは、農家人口のうち65歳以上の割合は45%と出ています。

農水省HPより → https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/12.html

農村の現状 農家人口 65歳以上

データの違いについて、どうのこうの言っても始まらないです、テレビでは農業経営者の年齢データのことかもしれません。

私が言いたいのは、農家さんの労働寿命は長い!ということです。

農業は過酷な肉体労働を要する作業ばかりでもないし、農作業は心身ともに健康に良いようです。役所が決めた年齢と、労働年齢とは一致しませんね。

農家が高齢化しているから、若い人材を農業に投入しよう、というのは短絡的な発想と思います。

3、農地が減少している。その通り

農地が減少しています。そうなのです。農家が年を取って、そんなにたくさんの農作業をこなせない・無理のない範囲で農作業をしたいという思い・無理しても見返りが少ない(儲からない)、という理由から、畑作放棄地もちょいちょい出てきています。

そもそも、農家さんは土地を守るという教育を受けている人が多く、農地を金儲けの手段と思っている人は少ないようです。だから、日本の農作物は安心安全だといえると思います。

ところで、減反政策という、「お米の価格が暴落するから、あなたの田んぼでお米作らないで ><」と、田んぼを休ませてくれると休業手当をあげるという制度があります。

イザというときに、他の農作物も植えられるので、私は悪くない制度だと思います。

農地の効率化の話が最近は出てくるのですが、貸農地は嫌がるのが普通です。汚されたら元に戻せないですし。借りるくらいなら買えばいいのに、借りたいのはリスクを負いたくないからとも言えるのではないでしょうか。(農地法の制限がありますが、農家同士であれば売買できます。農地所有適格法人を含む)

農地は、増やすことはできないので、減っていくのが残念です。都会の農地(生産緑地法指定)が売られるのは止められないので、これからも農地は減少していきます。

都会の農地と地方の農地を一緒に語ることに意味がありません。地方の農地は、売却や転用に制限があるので、「農地が減少していくことを止めましょう」な議論は、どこのどんな農地を指しているのかが分からなかったりします・・・。

私が”なにか”を知らないのか、はたまた、発言者が数字だけ見て言ってるだけなのでしょうか?

都市農業について言いたいことはたくさんありますが、今回は割愛です。

4、IT農業 効率化した農業と輸出

”若い人が農業をはじめれば、彼らは生活がかかっているため、効率化した経営やマーケットを重視した農業経営が行われ、日本の農業が活性化する”とテレビでは言っていました。

果たしてそうでしょうか?

テレビでは、今回のまとめとして、「農家が高齢化して食料自給率が下がる、だから若い農家などに農地を貸して、若い農家が効率化やIT農業で儲かる農業をすればよい。輸出もしよう」と言っていたように聞こえました。

食糧自給率の話だけど輸出しちゃうんですか?若い農家が生活していくためには農作物を輸出して儲けを出さないとならぬ、というお考えはもっともです。儲かる農作物を高く売れる外国に輸出したいのは当然の気持ちですが、そうなったら国内向けの農作物は高齢者農家がせっせと作らないと、国民の口に農作物が届きませんね。

農地法は、なんのためにあるのでしょう。農地税制が手厚い理由を考えれば、農地は単なる金儲けの手段ではなく国民の胃袋を満たす国家の生命線であると、私は思います。

5、食料自給率UPは農地の国有地とIT農業で解決する

食糧自給率を上げたいだけなら、テレビが言うように農地を買い占めて大規模農場でIT農業効率化すればいいです。

国民を食わすための農作物に、マーケット目線など不要です。

農地を国有化して無人機械で農作物を生産すればいいだけで、若い農家など不要です。

誰もいなくてもポリシーがなくてもマニュアル通りでも農作物は育つでしょう。

なお、IT農業技術は、いずれ情報輸出のために行われているように思えています。農業関連企業のためのように思えます。本当に、消費者・生産者のためになるのか疑問に思います。

6、おわりに

食糧自給率が低く、農家が高齢化し、農地が減少している。農地の貸し出しを渋る高齢農家を説得しよう、そして若い農家が効率的なIT農業を行い農作物の輸出をして稼げばいい、というテレビでの論調に、私はフィットしませんでした。

色んな人がいろんな角度から考えて意見交換をして、あ~でもないこ~でもないと知恵を出し合い、議論を重ねて、もっとよい日本農業を模索していこう。オーッ!

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。