ふるさと納税:泉佐野市の後味の悪い勝訴@最高裁

2020.7.14 ふるさと納税で荒稼ぎした泉佐野市。ふるさと納税制度シーズン2では、指定(認定)をゲットできなかった。それを違法として国を訴えました!

2020年6月30日、最高裁の判決は「泉佐野市の言うとおり。指定されないのは違法」となりました。

しかし・・・・。後味の悪い勝訴となりました。

本件、非常に学びが多い判決でした。国・地方のあり方や税と寄付の考え方、信用の失い方、などなど。

まぁ、ふるさと納税の仕組みが悪いんだよ。特例控除をなくせばいいだけなんだよね。

0,事件の判例PDF

最高裁判所の判例 令和2年(行ヒ)第68号

裁判所HPより  → https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/537/089537_hanrei.pdf

1,ふるさと納税の制度

ふるさと納税は、寄付と言われつつも税の前払いです。節税でもなんでもない。たとえば、ふるさと納税を10万円した個人は、所得税と個人住民税の合計で98,000円が減税になる。10万円払って98,000円の減税なので、手元から減るお金は2000円だけ。(ふるさと納税は特例控除にあたるので、住民税から多く相殺されています)

返礼品が目当てで、ふるさと納税をする人が多いです。それにより、自治体間の税収の取り合いになり、国の税収にも影響があります(財政が毀損した地自体に対しては地方交付税が穴埋めするので)

当初、古里や思い入れのある自治体に寄付を、みたいな話だったんだけど、いまはネットショッピングみたいになっています。中間業者にチューチュー予算を吸われて、国全体の税収の毀損ですよ。

当初はこうなると思っていなかったと思うけど、全然良くない制度だよ!当初の作成会議でも、「問題があったら変えていこう」と始まったんだよ。さぁ。改正していこう!

あ!ふるさと納税しなきゃ。お米もらうんだ~♪(一般消費者の気持ちはこういう感じです)

2,事件の概要

事件の概要をニュアンスでまとめますと。

ふるさと納税が生まれたのは平成20年。徐々に返礼品を巡ったふるさと納税過熱感が出てきました。募集方法などに決まりがなかったため。本来の趣旨を逸脱した「ふるさと納税奪い合い」のようになってきました。

泉佐野市は、特にコレといった地場産品がないようで。アイデアを絞って見せ方と返礼品で勝負。なんと、アマゾンギフト券を返礼品にしたり・・・・。エスカレートしていきます。めちゃ納税額が上がります。

平成30年度は約498億円の寄付をゲットした。たとえば半分が返礼品に消えて、コンサルタント業者に持って行かれても、残ったお金は泉佐野市が使えるわけで!

うひょ~。

・・・・で、やりすぎたので世論で問題視され。国が返礼品のルールと、市町村のルールを決めて、特例控除はライセンス制へ。新たにルールを決めて令和1年6月1日から施行することにしたです。

それを知った泉佐野市、新たなルールが決まるまでに滑り込めとばかりに、令和1年5月31日まで最大300億円「最後の大キャンペーン」としてアマゾンギフト券10%~40%でえげつなく募集しました!

ちょっとやりすぎだど・・・

そして。国がやんちゃな泉佐野市を、特例控除対象自治体に指定しなかったのです。こうなると、泉佐野市にふるさと納税しても特例控除部分は適用がないため、消費者の税効果がかなり減る。もともと、お得だから泉佐野市にふるさと納税してた人は、もう泉佐野市に用がなくなるよね。

国の言い分「制度趣旨に反しているし募集の仕方も考えてって言ってたのに。荒稼ぎしちゃって!素行が悪い。指定しません」

泉佐野市「全部、法律の範囲内でやっている!施行日前にやったことを加味するなんて!それに、地方自治体に国がそんなに強制できるんですか!越権行為では」

表でろや~!と裁判が始まりました。高裁では、国が勝ち、泉佐野市は控訴します。

3,最高裁 判決

最高裁判決「確かに、泉佐野市が指定を受けられないという法律はありません。遡って直前までワルだけど、素行を加味するって書いてないからセーフ。」(ニュアンス)

最高裁判決「逸脱なる行為(300億円最後の大キャンペーン)の部分も違法とは言えない。」

最高裁判決「自治体は、国の助言に従う義務はなく、助言に従わなかったから不利益な取り扱いをされるのは違法。」

というわけで泉佐野市の勝訴。

泉佐野市、特例控除のライセンスはゲットできたかしら。

4,裁判官の補足 ふるさと納税の未来

判決の後、裁判官が「ひとこと言いたい!」ようですので、読んでみましょう。

これがおもしろい。引用(コピペ)します。

後味が悪い判決、って言っちゃうんだねぇ。いい感じ。

(1)裁判官宮崎裕子の補足意見

(抜粋)下線、部分省略、太字は小野寺がしました。

ふるさと納税制度は,「ふるさとやお世話になった地方団体に感謝し,若しくは応援する気持ちを伝え,又は税の使いみちを自らの意思で決めることを可能とすることを趣旨として創設された制度」であることは本件告示の中でも触れられているとおりであるが,

「ふるさとやお世話になった地方団体に感謝し,若しくは応援す
る気持ちを伝え」という部分は,この制度に基づいて地方団体が受け取るものは寄附金であることを前提としたものとして理解できるのに対して,

「税の使いみちを自らの意思で決めることを可能とすること」という部分は,この制度に基づいて地方団体が受け取るものは実質的には税であることを前提として,一定の限度で税の配分を納税者の意思で決められるようにするというものであるから,

前者の趣旨とは前提を異にしていることになる。

もし地方団体が受け取るものが税なのであれば,地方団体がその対価やお礼を納税者に渡す(返礼品を提供する)などということは,税の概念に反しており,

それを適法とする根拠が法律に定められていない限り,税の執行機関の行為としては違法のそしりを免れないことは明らかであろう。

他方で,地方団体が受け取るものは寄附金であるとなれば,地方団体が寄附者に対して返礼品を提供したとしても,返礼品は,提供を受けた個人の収入金額と認識すべきものにはなるが,納税の対価でも納税のお礼でもなく,直ちに違法の問題を生じさせることにはならない。

地方団体が受け取るものは寄附金であるから,返礼品の提供自体
が,例えば税の対価であるなどとして違法視されるべき理由はないと考えていたことを確認し,明確化したものといえるであろう。

地方団体が受け取るのは寄附金であるという前提で行われていた返礼品の提供が,地方団体間の実質的な税配分の公平を損なう結果を招くことになるのではないかという問題を顕在化させることになったのである。

施行前に地方団体が行なった寄附金の募集態様や返礼品の提供という行為を,制度の趣旨に反するか否か,あるいは制度の趣旨をゆがめるような行為であるか否かという観点から評価することには無理がある。

 

(2)裁判官林景一の補足意見

抜粋です。中略、改行、下線は小野寺がひきました。

上告人の勝訴となる結論にいささか居心地の悪さを覚えたところがあり,その考え方を以下のとおり補足しておきたい。
居心地の悪さの原因は,泉佐野市が,殊更に返礼品を強調する態様の寄附金の募集を,総務大臣からの再三の技術的な助言に他の地方団体がおおむね従っている中で推し進めた結果,

集中的に多額の寄附金を受領していたことにある。

特に,同市が本件改正法の成立後にも返礼割合を高めて募集を加速したことには,眉をひそめざるを得ない。

また,ふるさと納税制度自体が,国家全体の税収の総額を増加させるものではなく,端的にいってゼロサムゲームであって,その中で,国と一部の地方団体の負担において他の地方団体への税収移転を図るものであるという,制度に内在する問題が,割り切れなさを増幅させている面もある。

もはやふるさと納税制度から得られることが通常期待される水準を大きく上回る収入を得てしまっており,ある意味で制度の目的を過剰に達成してしまっているのだから,新たな制度の下で,他の地方団体と同じスタートラインに立って更なる税収移転を追求することを許されるべきではないのではないか,

寄附金をいかに増やすかについては,いわばアイディアの自由競争に委ねられており,泉佐野市は,そのような競争を,主務官庁の助言を無視して最大限追求したとはいえ,あくまでも法律の枠内にとどまる行動をとったにすぎないと評価できるため,主務官
庁の目から見ればどれほど不適切に思えても,そのことの故に不利益な処分を行うことを当然には正当化できないからである。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。