非上場株式の時価の将来について@所得税法 譲渡所得

2020.7.13 取引相場のない株式の評価、業界で話題です。相続税と所得税とで同じ考え方に基づいて計算してよいのか?という疑問。

結論:自社株評価は改正されていくのでは?自社株の譲渡時の時価判定の所得税基本通達が変更になる可能性が高い!

1,相続発生時の自社株評価の考え方

非上場株式(多くはオーナー所有の自社株)の評価をする場面は、相続が発生したときと贈与・譲渡があった時、でしょうか。

すぐに算出できるケースの方が多いけど、会社の状況によって複雑になることもあり。現在は一般納税者が計算するにはハードルが高い。専門的になるので、税理士によって受任しないケースもあります。(断られたのは嫌われているからとかではなく、間違えると納税者に迷惑かけるからという場合が多い。)

さて。

相続発生時の自社株評価には一定の決まりがあります。相続税法が考える金額の計算式で算出します。(原則評価)

事業経営の影響力が相当程度低い株主さんが持つ株式は、支配力が低いので、特例評価(配当還元方式)でも計算できます!配当金額を元に計算します。原則評価より低い評価額になりやすいです。

では、その”事業経営の影響力(支配力)”とはなにかというと、派閥の株式総数の占有比率で判断します。50%基準、30%基準、15%基準、5%基準、その状況により色々あります~。

原則評価の計算式、めっちゃ複雑なので他のサイトみてください~。

自社株評価は難しいので、単発依頼報酬は結構かかります~。

2,非上場株の贈与・譲渡時も同じでよいのか?

相続発生時は、誰も時期を選べないですよね。だから、相続税の計算上は、財産基本通達の基準でもいいのかもしれない。

では、贈与や譲渡は、相続と条件が同じかというと、違うでしょう。贈与や譲渡は、双方のOKがあって成立するのが普通だからです。(例外もあるけど)

私は、作為的に選択できる贈与・譲渡と、自然発生的な相続と、同条件で時価算定してよいのか、という疑問があります。

・・・・町の税理士が取り扱う案件の多くの場合、同族株主間の贈与・譲渡なので、相続時と同じでよさそうだけど、状況によっては慎重に判断すべきケースも出てくる。

令和2年3月24日の最高裁で、争点こそ違うものの考え方として「相続税と所得税とでは考え方がちがうっしょ」としています。

検討してみましょ~。

3,最高裁判決

令和2年3月24日、最高裁は、非上場株式の時価算定について、東京高等裁判所に判断を差し戻ししました。

最高裁は、「相続税法(贈与税も含む)と、所得税法と混ぜちゃって大丈夫なの?」です。

タダもらいだから課税の相続税と、値上がり益に課税の譲渡所得税では、考え方が異なるのですね。(私見です)

なお、本件判決文には、相続税と所得税の考え方の違いの他、通達のあり方について・通達の作り方についても言及がありました。おもしろいね。(贈与税は相続税の補完税なので、言及なし)

※事件概要。A社の代表取締役は、自分が所有する自社株式(年商236億円)をC社(少数株主へ該当)へ一部売却した。売却金額を配当還元方式で1株75円とした。本件は低額譲渡に該当すると税務否認された。原則評価は1株2990円。

(時価より安すぎる金額での法人への譲渡は、合意で決めた金額ではなく時価で売買があったものとしてみなし譲渡課税がされることがあります。所得税法59条。みなし譲渡)

売ったA社長が同族株主だから譲渡した自社株の時価は、原則評価なのか、買ったC社は少数株主なのだから配当還元なのか、どっち?というもの。

最高裁は「売ったA社長の状況で判断し原則評価では?」とのことです。

(裁判所HPより 平成30(行ヒ)422  所得税更正処分取消等請求事件 PDF)→ https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/339/089339_hanrei.pdf

4,パブコメ

そしていま。最高裁からの「ちゃんと通達作ったら?通達に拘束されるものではないけど、現状の所得税基本通達59-6は分かりにくい」の意見を受け国税庁はパブコメを出しました。

パブリックコメントで「株式等を贈与等した場合の「その時における価額」」が出ています。

所得税法59条関連 基本通達59-6について、提案がされ、譲渡した人・贈与した人の譲渡前・贈与前の状況で判断するようにしませんか~?とのことです。

(パブコメ 所得税 基本通達59-6のパブコメ募集 PDF)→ https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000203615

ご意見募集中。2020年7月30日締め切り。

非上場株式の贈与&譲渡は、あげた人・売った人の直前の株式状況で、「時価」算定を原則評価か特例評価OKかを判断することになりそうです。低額譲渡に引き続き注意が必要!

5,税務大学校の論叢

税務大学校の研究活動の論文(というの?国税庁の見解ではありませんが、学者の意見という感じ)

「今後の取引相場のない株式の評価のあり方」(令和元年6月発表 96号)にもありますが(国税庁HPより)→ https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/96/04/index.htm

いわいる自社株の評価、もっとわかりやすく出来るといいよね。

論文にある提言・残余利益方式はもっと簡単にもできそうだし、配当還元方式は資本金及び資本剰余金の合計額で済むと少数株主が簡単に計算できそうでいいと思う。(全文、そのうち読もうーっと。)

6,感想

今回の最高裁で争われたケースばかりではなく、ヤフーの租税回避事件もだけど、自社株をアーコレして税金を引き下げるという、なんとかコンサルタントが儲かるシステムはもう止めよう。

報酬を払える金持ちだけが租税回避できる税法なんて、仕組みが悪い。こういうの、なんとかコンサルタントはフィーだけ持って行っていいかもしれないけど、税理士はいい迷惑だよ。

租税は公平に税負担すべきよ!

・・・・さて。

今まで高額になった自社株評価対策で色んなことをしていた会社さんもあると思いますが。財産基本通達がガッサッと変更になり、今までの「節税対策」がすべて意味が無くなることがあります。

同業の税理士さんにおかれましては、納税者に対して「現行の制度なら節税だからね!今後は改正がありえるから!!」としつこく伝えておきましょう。

一般感覚で「あれ、これってヘンじゃ?」という税法は今後改正されていくので、感覚を研ぎ澄ませて、将来の税制改正への嗅覚を養いたいものです。(一般納税者に将来の改正リスクの話をするとウケがよいです)

7,関連条文等集

・パブコメ

2 改正案の内容
本件通達の(1)の条件について、

譲渡又は贈与した株式の価額について株式を譲渡又は贈与した個人である株主が譲渡又は贈与直前において少数株主に該当する場合に評基通188等の定めの例により算定するという現行の取扱いを分かりやすく表現するため、

①「取得した株式」と定めている部分について「譲渡又は贈与した株式」と読み替えるなどの必要な読替えを行うとともに、
②読替え後の評基通188等の定めの例により算定するかどうかを譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定することを明確化する改正を行うほか、所要の整備を行います。

なお、本件通達の改正は、これまでの取扱いを変更するものではありません。

(e-govよりパブコメ募集よりPDF)→ https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000203615

・所得税基本通達59-6

2020.7.13現在の所得税 基本通達59-6は次の通り。

(株式等を贈与等した場合の「その時における価額」)

59-6 法第59条第1項の規定の適用に当たって、譲渡所得の基因となる資産が株式(中略)である場合の同項に規定する

「その時における価額」とは、23~35共-9に準じて算定した価額による。この場合、23~35共-9の(4)ニに定める「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とは、原則として、次によることを条件に、昭和39年4月25日付直資56・直審(資)17「財産評価基本通達」(法令解釈通達)の178から189-7まで((取引相場のない株式の評価))の例により算定した価額とする。 (中略)

(1) 財産評価基本通達188の(1)に定める「同族株主」に該当するかどうかは、株式を譲渡又は贈与した個人の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定すること。

(2) 当該株式の価額につき財産評価基本通達 179の例により算定する場合(同通達189-3の(1)において同通達179に準じて算定する場合を含む。)において、株式を譲渡又は贈与した個人が当該株式の発行会社にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。

(3) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については、当該譲渡又は贈与の時における価額によること。

(4) 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。

(国税庁HPより 法令解釈通達 所得税法59条関連)→ https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/12/02.htm

・所得税法59条 みなし譲渡

下線は小野寺がひきました。

(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
第五十九条 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、
その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、
その事由が生じた時に、
その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第二号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。
(贈与等により取得した資産の取得費等)
第六十条 居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。
一 贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
二 前条第二項の規定に該当する譲渡
2 居住者が前条第一項第一号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。