連帯納税制度は維持すべき。@相続税に対する公平感

2020.9.18 代々木のおともだちと、未来の税制について妄想WEB会議です。

連帯納税制度は続けるべき。相続税に対する公平感を検討する際、相続人間の公平感だけでよいのか。貧しい家に生まれた人との公平感は不要か?

そもそも、日本の相続税は、遺産に課税しているのだから連帯納税制度は必要。

という話をします。

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税制改正意見を作ろうよ、と毎年、代々木のおともだちが会議をしています。今年、私も加わっている!

相続税法には、「連帯納税制度」という、他の相続人が納税をサボったらあなたが代わりに納税せよ、という相続税・贈与税独特の税法があります。

日本はかつては家督相続で、父ちゃんが死んだら、父ちゃんの財産は借金も扶養義務も長男が引き継いでいたそうです。

家督相続は、人気が無い。わたしも、「そんなの不公平!」と思っていた、今は家督相続の素晴らしさを理解しましたけど。

相続税はその課税の仕組みも独特なのだけれども。

税理士さんの多くが反対する連帯納税制度は、私は悪くないと思っている。

相続が発生して、子供が相続する。そういう想定をします。

金持ちの父ちゃんが亡くなり、長男が1億円と次男が1億円の財産をそれぞれもらった。

長男は、ちゃんと相続税を納税した。

次男は、相続税を納税しないで逃げ回った。

最終的には、長男に、「次男の代わりに納税義務があります。納税せよ」と言われるのが連帯納税制度です。(連帯納付額には限度額があるので、無限に徴収されることはない。税務実務では、さほどないみたいだけど)

ひどーい!次男がサボったからって、長男は関係ないよね!!

と、思っていた時もあった。そうかもね。

けど、もともとは父ちゃんの財産じゃん?サボった次男との比較で長男が可哀想だね、不公平だ、という意見はごもっともだけど、

そもそも、どの家に生まれるかは運なわけですよ。その家に生まれただけで相続権があるのは、公平ですかね。同じお子さんでも、生前の父ちゃんとの関与度合いも違うでしょう。

そして、日本の相続税は、納税義務者が「財産をもらった人」ですが、課税されるのは、亡くなった父ちゃんが遺した財産なのです。もらった財産に課税されるわけではない。

遺産に対して相続税を課し、それぞれがもらった財産の割合で納税するのが相続税です。(というのが小野寺の見解。)

私には、相続税と贈与税は、「タダもらいだから税金」だと感じるのです。そうすると、亡くなった父ちゃんの財産への課税が正しく行われないまま、長男が財産取得できてしまうことが公平だと思わない。

なので、連帯納付制度は維持して良い。

・参考

国税庁の研究活動より。論叢57号

相続税の課税方式に関する一考察 税務大学校 宮脇義男 → https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/57/05/hajimeni.htm

 

現行の相続税の課税方式(法定相続分課税方式)は、

1遺産分割の習慣が定着していない状況下では、税務執行上、仮装分割などを防止することが困難であること、

2分割容易な遺産と困難な遺産(農地、事業用資産等)との税負担が不均衡となること等

を考慮して導入されたものである

本研究は、現行の日本の相続税の課税方式(法定相続分課税方式)についての考察を行っている。

遺産取得税方式にしたらどうなるのか、という意見から、連帯納付義務の部分だけを抜粋したのが下記。

おのでらは、被相続人の遺産に課税し税引き後の遺産を相続人が分けるという、遺産税方式がよいと考える。

相続には、遺留分侵害請求権などあり、被相続人の意思と無関係に相続されることがあるため、贈与税のように両者の合意がある課税関係の考え方になじまないと考えたためです。

(7) 連帯納付義務

連帯納付義務(相税34条)は、相続税は被相続人の財産に課せられるものであってこれを相続人が連帯して負うべきであるとする遺産課税的な発想からくるものであり、

各相続人が取得した財産に対してそれぞれ独立に課税される遺産取得課税方式の下で連帯納付義務の制度を仕組むことは理論的に難しいとの指摘があり、連帯納付義務を廃止すべきとする主張が存在する。

現行の法定相続分課税方式の下では、遺産課税的な要素を有しているため、このような主張を退けることもできるものと考えられるが、

遺産取得課税方式に変更する場合には、そのような説明はできなくなり、連帯納付義務を存続させるためには、別の観点からの根拠・必要性を提示することが求められることとなる。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。