コロナ申告期限延長に落とし穴があるか

2021.1.10 緊急事態宣言の2回目が出ました。税務申告は柔軟な対応をする姿勢だけども、落とし穴があるかも。検討致します。

(国税庁HP より コロナ対応と申告・納税のFAQ 2020年12月15日追加あり) → https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/pdf/faq.pdf

1月10日、1月20日は、源泉所得税の納付期限です。

コロナ納付延長も出来ます。

コロナ延長期限が確定されてしまうか?

さて、ここで疑問。

令和元年分の確定申告をしていない個人事業主や、令和2年11月申告期限の法人が、源泉納付を期限内(1月10日、1月20日)に行った場合・法定調書を1月中に申告したには、所得税・法人税の申告期限が確定されてしまうか?

国税庁のFAQを確認

そんな訳ないと思っていました、私は。

税務申告書と、届出書や源泉納付では納税者の意志決定の重要度が違いますし。

けど、国税庁HPには、次のFAQがありました。

問1.《令和元年分の確定申告について》 〔令和2年 12 月 15 日追加〕
令和元年分の確定申告について、新型コロナウイルス感染症の影響でまだ行っていませんが、いつまでにすればいいですか。

(中略)

〇 また、令和元年分の申告所得税等の確定申告書を提出する前に、他の申告書や申請書等を提出した場合は、令和元年分の所得税等の確定申告をすることができないやむを得ない理由があったとは原則認められませんので、期限後申告として取り扱われます。
新型コロナウイルス感染症の影響により提出ができなかった令和元年分の申告所得税等の確定申告書以外の届出書や申請書についても、同様の理由から、上記の期限までに提出していただく必要があります。

 

※ 例えば、令和3年 3 月1日(月)に所得税の青色申告承認申請書を提出した後に、

令和3年3月15 日(月)に令和元年分の申告所得税の確定申告書を提出した場合は、

その確定申告書を提出することができないやむを得ない理由があったとは原則認められず、

期限後申告として取り扱われることになりますので、ご注意ください。

ちなみに、法人も同じような取り扱いのようです。

おのでらが下線をして再掲しますが、「申請書等」の「等」には、源泉納付書や法定調書が含まれるのか?

令和元年分の申告所得税等の確定申告書を提出する前に、他の申告書や申請書等を提出した場合は、令和元年分の所得税等の確定申告をすることができないやむを得ない理由があったとは原則認められませんので、期限後申告として取り扱われます。

特例納付の申請書くらいで、確定申告書のコロナ延長期限が確定してしまう、ともとれる。

税務申告書と届出書等は意義が異なる

申請書や届出書と、税務申告書では重みが全然違うのに、申請書等を提出したことをもってコロナ延長期限が確定してしまうと書いてある。

それは厳しいのではないか?

税務申告書は、申告納税制度の下、納税者の権利義務を確定する手続きともいえるでしょう。届出書や申請書と税務申告書を同一視するなんて考えられないです。

青色承認や消費税の課税選択は提出を忘れたら納税者不利だから、税理士は先に提出しておきたい。しかし、申告書提出前に申請書等を提出することには危険が伴う!

コロナ禍で初めて税理士依頼をする納税者がいるよ。納税者を守ることを優先すべきだ!

けど、税理士さんたちは、こういう現場感覚無視の国税庁FAQがある以上、新規の納税者救済を受けにくいでしょう。私なら断ります。

信頼関係が浅いコロナで困っている納税者と現場感覚の無い課税庁の対応に板挟みになって、社会貢献のためと思って受任した末に税務賠償とか言われたらイヤですもん。

コロナ延長の落とし穴回避を検討する

さて、私が考えるコロナ延長の危険回避のために行う対策は次のような感じです。

FAQが出た2020年12月15日以後は、

×「申告書が出来上がる前にコロナ延長で青色承認申請だけでも出しておこう」はやめとこう。申告期限が確定してしまうから。

△「申告書が出来上がる前に源泉納付しておこう。源泉は足し算だから」は要注意。コロナ延長中(課税選択や簡易選択等の届出書を含む)の事業主の源泉納付は後回しにした方がいいかも?(納税を後回しにすると、納税者はお金使っちゃうんだよね。しょうがないよ、課税庁の運用が悪い。)

×「法定調書は早めに出しておけば税務行政も安心でしょう」はやめとこう。コロナ延長が終わってからの申告とすべきでしょう。

△「電子申告して税務行政に協力」は要注意。送付状に「コロナ延長」と記載忘れ又は送信漏れがあったら、期限後申告になってしまいます。

誰も得しない。けど、納税者を守り、税理士の身を守るためにはしょうがない。

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課税庁はコロナ運用を改正すべき。

青色承認申請書や、消費税の課税選択届出書・簡易課税選択届出書等と、所得税確定申告・法人税申告では提出書類の重みが全然違う。

申請書・届出書はメリットの享受のための書類提出といえます。

税務申告は納税者の納税の権利義務を確定させる重要な手続きです。

税務申告書提出日が、申告期限とするのはいい。でも、申請書提出日を申告期限とするのはダメ。

”申請書・届出書の提出日”を”税務申告書のコロナ延長の期限”とする運用の記載はやめよう!

(令和元年分が未申告なのに、令和2年分の申告をした場合には、令和元年の申告期限は確定するのは良いです)

課税庁が、納税者が悪用するのを防ぎたいのが分かる。コロナ救済制度を逆手にとって給付金詐欺を行った悪い人がいたから、制度で悪用を塞ぎたかったのが分かる。

けど、ちょっとズレてるよ。ぜひ修正を。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。