政府税調 第15回 SESに学力格差と社会保障の新しい支援 委員の意見

2022.9. 政府税制調査会 第15回 令和4年9月9日開催を視聴。

教育と社会保障の在り方について、委員からの議論・質問です。

今回は、前回のSESの学力格差と、社会保障の新しい支援、のお話を受け、委員からの質問・意見をメモった回です!

前回の記事 → https://mina-office.com/2022/09/22/seifu-zeicho-15-kyouiku/

政府税調 → https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2022/4zen15kai.html

委員からの意見

大竹委員(大阪大学、行動経済学)

耳塚先生の14頁が衝撃的であった。学習環境、書籍等の差なのか。学習素材を支援すればSESの差を縮められるのか?

菊地先生の4頁の社会保障の申請主義、プッシュ型の社会保障の対義語になっている。税情報を利用して政府側から支援を持ち掛けて本人が決めるというプッシュ型の社会保障は問題であるか?自律性を重視されているが、プッシュ型でも拒否する自由はあるから自律的であると思えるが、いかがか?

耳塚先生の回答

就学前の介入に効果があるかどうか、学校外学習へのアクセスが有益化、というデータがない。就学前介入は日本で外国と同様の効果には疑問。幼児教育の普及度に大きく差があるため。学校外教育のSESの差について、アクセスする・補習は有益。SESが高い方が学習効果が高い。SESが低い場合、学び方が分かっていない。学校がそれ(学び方を教える)を補えば(効果はありえる)と思う。

菊池先生の回答

法学者は国家と個人の関係を考え、個人の領域を守る大事さを重視する傾向がある。申請主義を固く守ることもない。制度ごとに考えるべきだ。一律の給付金ならば国から給付が効率的・公平的である。だが、生活保護申請は個人の判断。受けやすい制度という観点はおいておき、生活基準を下回っていても、生活保護を受給するかどうかは本人が決めるべき。

大竹委員の追加発言

受け入れますか、という通知を政府からするのがいいと考えた。

菊池先生の回答

生活保護については、給付させるのがデフォルトという考え的には違和感がある。

就学援助や給食は一律でもいいと思うが、生活保護は違うと考える。

武田委員

耳塚先生へ、SESは3つの変数。所得によるものなのか、両親の学歴によるものなのか?

学校の努力の差による、という話があったが、取り組みの違いの代表例があれば聞きたい。

耳塚先生の回答

一般的に、一本の物差しで測る方法と、個別の方法で測るものがある。SESは一本の物差しで測っている。家庭の所得と両親の学歴を一本の物差しにしている(かけ離れていないから)。経済資本と文化資本は、独自の資本を持っているのが事実。親の学歴の独自の効果はある(文化資本の効果)。感覚的には、所得よりも親の学歴の方が大きいと感じている。

高い成果を上げている学校の取り組みは、家庭学習指導の取り組み。自分で学ぶ範囲を決めて宿題として出させる。自学自習を毎日やっている。教員が必ずフィードバックして返す。小中一貫、少人数クラス、などもある。

岡崎市長(高知県)

コロナで格差が広がった。コロナ貸付残高が増え、返済ができなくなっているのが社協の悩み。生活保護は過去にバッシングがあり、受給せずに貸付になっている課題がある。人口減なので労働者減になる。生活困窮の底上げ支援し、労働につなげられる支援がいいと思う。

貧困の連鎖、生活保護受給の中学生に行政で無償の塾をい行い高校進学を補う。教科書で分からない部分を教える。100%高校に進学できている。退職教員についてもらっている。高卒がないとアルバイトができない現状があるため。

熊谷委員(社会連帯基金)

耳塚先生へ、諸外国の状況を知りたい。日本の特殊性があるか。政策対応として、諸外国で有効な対応策があれば知りたい。

菊池先生へ、財源の話を知りたい。こども保険や社会連帯基金など。住民の延滞の話孤独孤立の話もあった。税制面でサポートできること、政策提言があるか。

耳塚先生の回答

SESの国際比較、世界的には日本はやや小さめだが、欧米のように人種民族が異なる場合と違い、日本は人種民族の同一性が高いため、SESによる差は国際的にみて小さいからといって看過すべきでない(ニュアンス)。日本明確な特徴がある、ひとり親の子の学力が低い傾向が高い、格差がみられる。母子家庭で有効なのは雇用の安定性が格差是正につながる

諸外国の有効な政策について、経済的政策は各国さほどの差はない(所得再分配、雇用の政策)。文化のデコボコをどうならすのか、政策で解決難しいが、北欧みれられるように質の高い幼児教育を無償提供するのが有効だと考えている。

菊池先生の回答

こども保険には消極的。純粋な保険のスキームは難しく社会連帯基金がよい、国民が直接なのか社会保険料から拠出するのかであろう。拠出するのは現役世代・企業だけではなく高齢者からの拠出の仕組みも必要である。医療のように別建てにしない。年齢別負担ではなく能力別負担がよいだろう。

介護障害医療という縦割りを排するのがいいのでは。

清家委員(不公平有益、大学進学)

教育と所得再分配についてお考えを伺いたい。議論のための議論になるが・・・。

親の所得に教育の機会に影響する。教育の結果、所得が上昇する。学歴による所得格差、頑張れば所得が増える仕組みがいい。

結果の平等から機会の平等にシフトしていくべき。親の結果平等が求められるかもしれない。どうすれば機会の平等になるであろうか。相続財産は所得の累積だから、便益を受けるのは相続人であり親のモチベーションは上がる、相続税を強化するとどうか。

耳塚先生の回答

一定の不平等は動機づけのために不可欠である。ですが、完全な所得の平準化は目標状態にはならないであろう。個人の努力によって挽回が可能であるといいかと思う。回答に窮する。

菊池先生の回答

私は相続税はもっと上げた方がいいと思うがそれとは別に、生活保護改正の議論をしているが、大学生の生活保護支給がテーマに上がっている。ただ、生活保護で支えるのは筋として違うと思っている。月並みだが奨学金制度をはじめとする手厚い制度がよい、下に落ちた人ではなく全体を支える方向性がいいだろう。給付も大事だが同時に相談支援で進学の道もあることを寄り添って考えられるようになるといいと思う。教育と福祉の連携を望む。

清家委員の追加コメント

貧困の子供が大学進学ならば所得課税だけでなく

中空委員(こども手当)

財源にも限りがある。こども手当を配ってもディズニーランド行ってきましたという使い方ではなく、資金をうまく入れ替えるのはどうすればいいか。現状悪化する前に優先順位の高いものはなんでしょうか。

菊池先生の回答

効率的に届けるか、、、私が言えるとすれば、ディズニーに行く人がいても児童手当、個別の給付と使途を考えると、高齢者中心型の社会保障なので一方的に徴収されるのみで社会保障を受けている実感が持てない現役世代が一定数いるのではないか。その現役世代が社会保障を支えているのだから、こどものいる世帯への支援で将来に向けた基盤づくりになると考えている。生活福祉資金という貸付けは生活の支えになったが、相談により解決していくセットだったが、貸付に殺到したので相談できなかったケースが多かったようだ。たんなる給付・貸付ではなく課題解決につなげられたらよかった。

耳塚先生の回答

対症療法と構造療法の両方が必要だ。きめ細かな指導でSESの低い子供に少人数学習をするといい。SESが低い地域の方がより効果が高かった。そのため、SESが低い地域に効率的に行うのがいいかもしれない。

辻委員(成年後見制度)

耳塚先生へ、大学は望む人は全入時代になった。大学進学率は欧米と比較して低い。

菊池先生へ、孤独孤立の問題について、田舎・都市にかかわらず深刻になっている。高齢独居でお金があって身寄りがなくお金がうまく使えない層、業者に取られてしまう人がいるように思う。後見人制度が使いにくい。何か得策があるか、個人の問題にすぎないだろうか。

耳塚先生の回答

SESと学力の問題は、歴史的な推移データがない。10年以上の蓄積データが必要になる。90年代以降、SESの影響力は大きくなっている感覚がある。非正規層が拡大したという想像がある。高等教育が50%を超えたが、これからの高等教育進学は分化していくだろう。大学進学層とそうでない層との教育志向の違いが大きくなるだろう。大卒か高卒かの違いではなく、エリート大学とそれ以外の大学、という違いが出てくるだろう。

菊池先生の回答

貧困ではなく一定の資産がある高齢独居の方の資産活用問題について、知見がないが。成年後見人制度は急にハードルが上がる。成年後見制度は、意思決定支援への転換がありえる。成年後見をつけると自分では決められないではなく、段階的に自分で決められる、使い勝手の良い制度が期待される。

秋池委員

耳塚先生へ、賃金だけが結果ではないが、学校名の差になるかもしれないという話があったが、民間企業にとっては高専のような専門の方は求められている。SESによる20ポイントの差は具体的にはなにか?

菊池先生へ、自律というキーワード、自律のためには税の仕組みがありえるのか。生活保護から抜け出すためには。

耳塚先生の回答

学力と学歴・学校歴の間にはズレが存在する。学力の違いが将来の賃金の違い・社会的地位の違いに結びつかない。あいまいな結びつきであるため、20ポイントの将来の影響は言えない。確率的にポイント数が高いほど一定程度高学歴となる確率・有名校の卒業者になる可能性は高い。

菊池先生の回答

税制と絡めると能力を超えるが、入りにくくて出にくい生活保護制度について、経済的自律しなければならないと考える。そこまでいかなくても所得を得ながら補足的に生活保護を受給しながら地域で自分らしく過ごせればよいと考えている。就労ありきではないが、希望者には支援を行っていくのがよい。昼夜逆転生活を直し、人とコミュニケーションを取れる状況にするところからの支援もよい。高齢者には就労支援にはならないかもしれない。

土居委員(自治体による格差)

耳塚先生へ2つ、14頁が目からウロコだった、3時間学習しても追いつけないデータについて。13頁。義務教育を早めることが有効かどうか。幼児教育を義務教育するのが効果があるか。

菊池先生へ、6頁、自立支援に同感する。相談支援を強化するのがいい、社会保険で賄うのがフィットしないので税財源でまかなうのが、菊池先生の感覚にフィットするか。市町村ごとに支援が異なると、介護保険料のように地方税負担に自治体による差が出るようになる。相談支援による自治体による地方税の負担の差についてどうか。

耳塚先生の回答

SESが低い方が学力のばらつきが大きい。学習時間の影響は、SESが大きい方が効果の影響が大きい。だが、SESが低い層が学習時間を増やしても学力が伸びにくい、という結果が大きいため、相対的にSESが大きい方が効果が得やすいと見えるだけ。

義務教育年齢の引き下げについて、データ不足がある。幼児教育で文化資本のデコボコをならす意味で有効であろうと考えている。

菊池先生の回答

相談業務のコストは社会保険ではなく地方税負担という考えについて、地域づくりが含まれているのでできなくはない。将来的には介護保険を40歳未満に拡大していく選択肢になれば、障害にまでできると思う。門外漢だが、地域格差があってよいと思う。最低限度を満たし、それを越える部分は住民が選んでいき、地域格差があってよいと考えている。

寺井委員(教育のデジタル化)

教育のデジタル化の影響、行政が留意すべき点について。自分タブレットの有無に教育の差が出るのでは。

耳塚先生の回答

教育のデジタル化、SESの影響について。調査データがある。SESによるひとり一台の活用の差は出ているSESが高い層は使いこなしている。自治体による格差が拡大しているであろう。デジタル教材を買う自治体にも差が出ている。良質なデジタル教材を買える・通常のデジタル教材しか購入できない自治体がある。

田中委員

地域コミュニティとの関係を質問したい。コミュニティの最適化システムを作るためにはどんなことが必要か、地域企業の役割があるか。

耳塚先生の回答

どういう地域であっても、経済資本・文化資本・社会関係資本の差はある。ホワイトカラーがいない地域はある。

菊池先生の回答

企業の関わり方について、経済面も含めて地域支援はある。従業員が地域活動を行いやすい体制があるといいかもしれない。平日はお母さんと高齢者が地域に従事、会社員は週末と夜間だけになる。地域の人々の動きとはマッチしない。摺り寄せていくためには企業の貢献があるといいと考える。

刀祢館委員

経済的理由で大学進学を諦める人がいるか。財政的支援、大学合格の能力があるならば学費・生活費を支援すれば有効か。

耳塚先生の回答

高校段階から経済的支援が有効。だが、学力・進学意欲はもっと低年齢から影響を受けてしまうため、高校段階では遅い(意訳)。

沼尾委員(生活保護受給者の納税意識)

自己実現が大事な点、共感する。

耳塚先生へ、学力格差について学力という物差しが自己肯定感を減らされるのではないか。こどもの自己肯定感をもつためには、どのようなことがよいか。

菊池先生へ、オランダにいたときに生活保護受給者が、自分は納税をしていると言っていた。手続きはコストがかかるが、自己肯定感、自己実現という見方からお考えを聞きたい。

耳塚先生の回答

感じたことを。非認知的な能力は重要。

菊池先生の回答

生活保護に上乗せして納税するのはコスト的にも難しいと思う。負担と給付と考えるため、年金課税、給付して税徴収する方が個人の在り方として適切、、なのでは、と思う。

2.26

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。