公開研究討論会2022 東京会の論文集レポ 第一部 歪みを糺す回

2022.10.1 日税連が主催する、毎年10月の第1金曜日に行われる公開研究討論会。あらかじめ、論文をゲットしまして、読みます。(なんと今年の論文は有料です!!)

わたし、勉強熱心だから!えらいっ(と、誰も言わないから自分で言う)

東京会の論文は、第1部と第2部に分かれております。

第1部 税制の歪みを糺す

①デジタル化社会における税制の在り方

②経済事象の多様性に対応した税制の改革

③地方創生に活力を与えるための地方財政のあり方

の着眼点から、13名の研究員(ほとんど有名人ぽい方)が13の論文を作成。

全部読みました。

タイトルを見て、消費税の話題はもう読みたくないなと思いました。しょうがなく読んだら、面白かったです!

ちょうど私の中で燃えている論点である、地方税や租税原則の論文が多くあり、読んでて楽しかったです!

興味は人それぞれで、タイミングによっても響く響かないがあると思います。13名の先生たち、お疲れさまでしたー!ありがとー!3000円、払ったからね!

序文

第一部について、租税法律主義と租税公平主義と、どっちも大事に考えますというお話や、13論文の抜粋(みどころ?)をまとめています。

ちょっと大げさな書き方もあり、作者の熱い想いが伝わります。また読み返そ。

1、税務情報の利活用・オープン化

雑にまとめると、役員退職金のデータが欲しいよね、情報の非対称性、という視点からのご研究でした。

2、統計的手法を用いた役員給与の損金不算入規定の考察

会社法改正前あたりまで、役員給与が配当扱いだった時代があったんですね。役員給与の損金不算入されないために、統計的な手法を使って金額算定すればいいんじゃないか!という論文と受け止めました。

3、インボイス方式導入に向けて デジタルインボイスによる「歪み」の解決策(その1)★

消費税の歴史についての記載もあり、学びになります。デジタルインボイスに賛成する論文です、珍しいよね。いい。

インボイスは課税庁に対するもの、という考えなど、論者の視点は読んでいて楽しいです。適格請求書の書き方などの注意事項は飛ばし読み。

デジタルインボイスについて賛成しつつも課題点を明示していて、未来志向の論文です。私は考え方が近いと感じました!

4、インボイス方式導入に向けて デジタルインボイスによる「歪み」の解決策(その2)

外国のデジタルインボイスについて学びになります。ご見解は、実務から考えて無理と思います、番号確認や税理士活用は難しいと思います!けど、自分と違う意見の論文を読むことがとても有益だと感じます。

5、消費税の免税事業者に関する考察 インボイス制度への転落を踏まえて★

免税事業者の消費税について、価格転嫁の歪みについて、勉強になりました!読んでよかった~。

外国の免税事業者についてのご研究もありました。免税事業者の益税は良くないですネ。免税事業者が取引から除外されちゃうけど、納税しない以上しょうがないのでは、と私は思います。

6、非課税取引と仕入税額控除制度★

こちらの論文は、非課税や免税は付加価値メカニズムからの除外・事業主が最終消費者になるが価格転嫁するから消費者の「隠れた税」になっている、という指摘がありました。

5番目の免税事業者の論文の次に読んだせいもあり、理解が深まりました!非課税取引、深いですね。

現在非課税の取引についてゼロ税率への変更は、私はいいと思うんだけど、問題点が多いようです。そうかな?

私は、原則課税の”非のみ”は歪むからやめた方が国民が分かりやすいと思いますが、どうでしょ。

7、デジタルプラットフォームが介在する取引についての課税制度のあり方★

プラットフォーマーに一律の源泉徴収制度を導入し、かつ支払調書も提出してもらいましょ、という内容でした。それがいいなと思います。

シェアリングエコノミーや報酬源泉、国際的な動きやデジタルプラットフォーマーの課税関係と源泉徴収の整理などあり、論文作成者は実務家の先生と感じました。

読んでおくといいと思います!分かりやすく工夫して作成してくれていて有難いです。

8、フリンジ・ベネフィット課税の現代的課題を考える

福利厚生による利益や現物給与の課税についてのご研究です。社員食堂やスポーツクラブなどを所得税非課税にして推進すると、大企業勤務者だけが恩恵を受けるので私は好きじゃないかな。

9、中小企業者の範囲と中小企業向け特例措置の在り方に関する考察

資本金を1億円以下にして中小企業者の特例を受けるのってどうなんだ、のご研究です。確かに、従業員基準は時代遅れ(これからはAIがやるんだもん)だけど、大企業が中小特例を受けるのはイマイチですね。資本金基準は見直すべきね。

特例って、補助金を受けているのと同じというご見解、その通りね。赤字法人だと恩恵がなかったりするので。

今回の論文にはなかったけど、賃上げ税制では、赤字法人への恩恵のつもりで固定資産税減額特例を行い、自治体から文句が出ました。無理が通れば道理が引っ込むよね。。。

10、内部留保の現状から再考すべき留保金課税の一考察

会社の数字をまとめたご研究が良かったと思います。給与や設備投資について罰に近いような課税に思えて、私とは意見が違うなあという印象です。視点によって公平の感覚は違うけど。

11、地方創生・地方財政の理想と現実★★

(副題)ー地方は、未来永劫、衰退したままであるのか?-地方税の根本的歪みを正す

目次を見て、期待をして最初に読みました。面白かったです!弁護士の先生です。消費税の共同税化を提言。どこかで聞いたことあるゾ。

租税の根拠の憲法的考察、これがとてもよかったです!219ページ。

また読み返す。税哲学に触れるようで、一番よかった~。

12、ふるさと納税の返礼品に関する一考察★★

(副題)日本人をとりまく社会構造の基底の追求

地方税の原則の話から、寄付とは何か贈与とは何かについて、国際的・時間軸(室町時代など)で研究されていてただ読むだけでも面白かった。

なぜ、返礼品を平然と受け取るのか、という出発点も独特です。よかったー。これも読み返そう。

13、課税の根拠と国政的な税源配分★

ピラー1、ピラー2についての解説、PEの問題、課税自主権、グローバルな問題点が、分かりやすく書かれています。「単語が分からない(忘れた)」「なんでこうなったんだっけ」と思った時には(政府税調でよく出てきてた)、ぜひ再読したい。まとまってて有難いなぁと思います!

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以上、第一部はP290まで。第一部の読了日は10月1日。公開研は10/7。あと6日で第2部読み切れるのか・・・・。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。