2023.10. 日税連が主催する、毎年10月の上旬の金曜日に行われる公開研究討論会。あらかじめ、論文をゲットしまして、読みます。事前入手は有料3000円。当日以降の論文ゲットは無料(会場参加は5000円、WEB視聴は無料)
研究発表会当日よりも前になるべくなら読んでおきたい。わたし、勉強熱心だから!えらいっ(と、誰も言わないから自分で言う)
第49回(2023年開催)公開研究討論会。
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名古屋税理士会のテーマ:改正民法等が招いた 税理士実務への影響について
タイトルから難しそうでテンション下がりましたが、読み始めてみると勉強になることが多くありました。民法改正があって間もない遺留分や配偶者居住権なので、理解が浅いなりにもどこかで耳にすることがあり。馴染みがあるうちに触れる機会があってよかったと思います。
論点に挙がった譲渡所得や不動産所得は、もともとの税務の考え方の問題なので、じっくり考えることができました。(また忘れちゃうと思うけど)
税理士さんらしく、税額計算が多い論文でしたが笑、問題点の指摘とその解決案(提言)が明瞭でした。勉強になりました〜。
第1編 遺留分制度等をめぐる法務と税務の論点
第1章は民法のまとめ。研修みたいになっている・・・。
遺留分は、被相続人の財産がなければ生活できないのに財産を遺してもらえなかった相続人に対する救済措置・被相続人の財産形成に寄与した者に対する配慮、といった趣旨の相続人の権利。
第2章、平成30年改正後、遺留分を相続財産(株式や不動産)による支払いをした場合、譲渡所得税がかかるようになった。(以前から譲渡所得税が発生するケースもゼロではなかったみたいだけど)
平成30年の民法改正で遺留分が金銭債権となったから。
(所得税基本通達33-1の6、38-7の2)
遺留分制度の改正点、それに伴う相続税や譲渡所得への影響|チェスターNEWS|【相続税】専門の税理士60名以上|税理士法人チェスター (chester-tax.com)
現金支払いと比較し、手残りする財産に差が出てきて不公平、ということを言っている。
第3章は事業承継税制と遺留分。事業承継税制の適用を受けている非上場株式は、(遺留分請求によるものを含め)譲渡をすると納税猶予が打ち切られてしまう。遺留分リスク回避の特例があり、除外合意と固定合意というものがある。まぁ、現実的じゃないけど・・・・。
第4章は、法人への遺贈と遺留分。PDF53頁から。
法人への遺贈は、(被相続人に対して)みなし譲渡所得課税がある。当該法人に対して遺留分請求をされた場合、平成30年民法改正後はみなし譲渡課税の更正の請求が困難・・・?(減殺により遺贈がなくなっていたが、H30改正で金銭債権になったため)。理解が浅いから再読しておこう。
同族会社の場合には株主にみなし贈与か・・・・。
法人への遺贈があり、みなし譲渡が発生し相続人が兄弟姉妹の場合には遺留分ががないため納税義務だけが残る・・・・。
第2章 配偶者居住権をめぐる法務と税務の論点
取得、保有、消滅、の段階に分かれる。沿革があり、その後も取り扱いのポリシーが記載されている事が多く、制度趣旨なりが分かりやすい論文になっている。(慣れない単語が多い部分は読むの苦労した。。。私はなんとかついていけたかな・・・・。飛ばしたけど。へへへっ)
貸し付けた場合の所得の帰属や、譲渡所得発生、贈与税課税など論点は多い。相続税と所得税と収用や居住用の特例それぞれで考え方が異なるのが不思議。PDf107頁第2節のまとめがあり、改めて知らないことが多かった。
名古屋へ向かう特急電車でも読みました。丁寧に書いてあるので、多少の理解不足で読み進めてもなんとかなりそう(知識がついていかなくて何度も読み返すこともあったけど・・・)
こういう、創設されてから歴史が浅くて問題が出るのは相当先(配偶者の相続開始の後)のものは、慎重になるべきね。論文にも、相続税の負担減のために行うべきではない、と記載されている。ほんとね。
第3章 遺留分と配偶者居住権の日独比較
ドイツの相続税についての説明がありました。ドイツの相続税は遺産取得課税方式で、自分が取得した財産分にだけ相続税負担する仕組みになっている。
それだと、あえて相続税じゃなくてもいいよね、所得税の「相続所得」でも作って分離累進課税にすればいいと私は思うわ。・・・って違う話になってしまった。話をドイツに戻そう。
ドイツには相続により取得した財産について、被相続人の続柄ごとに非課税枠というものがあるんだそう。たとえば、論文PDF208頁によりば、娘なら40万ユーロは相続財産非課税枠があるそうです。で、非課税枠は10年で回復するそうです(*_*)
日本の相続税の相次相続控除に近い存在かも?
非課税枠回復って書くからびっくりしただけで、贈与税の基礎控除は毎年リセットされるもんね。あれのほうがオカシイかもね。
ドイツにも自宅には税負担軽減があり、配偶者でも子供でも、10年間住むなら自宅は非課税にしているようです。なるほど〜。
ドイツの税理士さんも日本の税理士と同様に、二次相続を含めると税負担が多くなるため事前対策を依頼されることがあるそうです。けどね、相続はいつ起こるかわからないし、相続が間近であることがハッキリした時にはもう手を打てないですね。
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相続取得はタダもらいだから、税負担軽減で画策してもしょうがないよね。一定の財産がある家に生まれた人が勝ちなのだし、親の面倒をみてもみなくても権利は同じで、親の面倒をみるためにキャリアを犠牲にしたところで、ここぞというときだけ来てかっさらう他の相続人と比較すると手残りする財産は減るのが現実なのよね。手助けとか困ってる人を見捨てられない人は、改めた方がいいかもしれない時代?
私は、相続税は高額でいいと思っている。配偶者には税負担なしでもいいし、住んでいる家は税負担なしでもいい。未成年やハンディがある方など、自分の努力だけでは解決しない範囲は、「家」ではなく「社会」でなんとかしたいなと思う。
自分の力で生きていく力をつけるのが大人になることだよ。自立できるのに、自分の子孫にだけいい思いをさせたいという気持ちが戦争の始まりよ。
おわりに
論文PDF225頁に、配偶者居住権で気をつけるべき税務がまとまっているので、結論から読む際にはこちらから。
論文の提言が論文PDF224頁にあり、譲渡所得税は課さないようにすべきだ、遺留分は相続税の範疇とすべきだ、事業承継税制ではちょっとくらい株譲渡してもセーフにして、の3つです。
論文PDF227頁以降は、関連する条文(民法、旧民法、税法、通達)が引用されている。
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名古屋税理士会のご担当先生たち、お疲れ様でした〜。一応、全部読みました〜!ドイツ税理士さんたちと、どう討論するのかなぁ、がんばって〜!
当日、会場に応援にいくよ〜(*^^*)