平成29年税制改正大綱 二 資産課税

12/22に、平成29年税制改正大綱が閣議決定。

税制改正

http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/index.html 財務省のHPより

平成29年 税制改正大綱

前回の記事、一個人所得課税の続き。

平成29年税制改正大綱 一 個人所得課税

1、非上場株式等の納税猶予の範囲拡大(経営承継円滑化法)

非上場株式等の納税猶予は、あんまり使われてない。使い勝手が悪いもん!平成27年で、200件くらい、と税のしるべで読んだ気がする。そもそも、税金対策にはなってないと思うんだよねぇ・・・先のことは分からないわけでさ。

税理士会からの要望もあり、少しずつ使い勝手はよくなっていくみたいだけど、事業承継ってのは制度でどうにかなるものではないと思うんだけど・・・

改正の内容は、被災しちゃったら継続要件を満たさなくても多めにみるよ・相続時精算課税適用財産であっても、贈与税の納税猶予OKだよ・非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の場合には、その会社が上場しててもOKだよ、とのこと。

適用は平成29年1月1日から。はやっ

2 相続税又は贈与税の納税義務の見直し

日本国籍がある非居住無制限納税義務者の範囲拡大!5年以内から10年以内に伸ばした。もう、国外に逃げても無駄!諦めて相続税を納税してね。

外国人で一時的に日本に住んでいた場合には、国内財産だけに相続税を課税すると改正。これは、大きいと思う!

欧州出身者が日本で一時的に働いていたところ、亡くなってしまい、母国の自宅を売却するという悲惨なケースから改正が入ったのね。あれは、本当に可哀想。(税のしるべ。H28.9.5号より)

国際化 仲良くやりましょう
外国人も安心して働く

この改正により、カルロスゴーンやルメールが日本に一時的に居住者になってくれればいいな。今だと非居住者扱いで国内源泉所得のみ課税で、個人住民税は納税義務者ではなかったのだろうか?健康保険も払ってくれるとありがたいけど、厚生年金は加入されちゃうと日本の税金が流れちゃうから辞退してくれないかな(ヒドイ)

改正は平成29年4月1日から。ぜひぜひ日本へ一時居住してくださいよ。

3 居住用超高層建築物に係る課税の見直し (タワーマンション課税の見直し)

タワーマンションの固定資産税・不動産取得税の計算式を改正。

タワーマンション
タワマン節税も限界?

高層階ほど税金対策になり、金持ち優遇がまかり通っていたわけで。こういうのは、制度の隙間を練ってやったもん勝ちなところがあるけど、徐々に世間がそれを許さなくなり制度改正していくわけよね。

相続税評価額には関係ない、とは私は思わないな。だって、世論がそれを許さないよ。今まで、「節税になりますから!」って勧めてきてた業者さんとかどうするんだろう。広大地だって、変わるんだからさ。

4 災害に関する税制上の措置

住宅取得等資金の贈与税の非課税など、この日までに住んでてね!この日までに使っててね!などの規定があっても、災害等があった場合には宥恕規定をもうけましたってこと。

当然だし、今までなかったのね。

今年も災害がたくさんあった。

5 租税特別措置等
(1)納税猶予関連

相続税法受験生にはおなじみ、医療法人の持分に係る経済的利益についての納税猶-予が改正になったよ!理論サブノート 7-12〔5〕贈与税の免除 のところが改定に?

① 平成 18 年医療法等改正法に規定する移行計画の認定を受けた医療法人の持分を有する個人がその持分の全部又は一部の放棄をしたことにより当該医療法人がその認定移行計画に記載された移行期限までに持分の定めのない医療法人への移行をした場合には、当該医療法人が当該放棄により受けた経済的利益については、贈与税を課さない。
② 上記①の適用を受けた医療法人について、持分の定めのない医療法人への移行をした日以後6年を経過する日までの間に移行計画の認定要件に該当しないこととなった場合には、上記①の経済的利益については、当該医療法人を個人とみなして、贈与税を課する。
③ 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等の適用期限を3年延長する。

他に、教育資金の一括贈与の非課税の運用でマイナーチェンジ、農地等の納税猶予で範囲拡充、山林の納税猶予は相続税にしかなかったけど、病気による事業承継についても認めるようにした。

よいね。これで、農地・山林・非上場株式は、病気になっても納税猶予が受けられるようになった。税理士試験、相続税法の出題予測!

猶予期間中に身体障害等のやむを得ない事情により林業経営の継続が困難となったときは、一定の推定相続人に林業経営の全てを委託した場合であっても、納税猶予の継続を認める

(2)固定資産税等関連

次は、地主さんは保育園を作れば固定資産税・事業所税・不動産取得税が安くなります、の税制が新設。

介護施設
介護に終わりはない

ぜひ介護施設も入れようよ!子供はうるさいから保育園イヤダ!って声があったけど、介護施設もそれは同じようなリスクがあるよね。そして、保育園は6歳で卒園だけど、誰しも年を取って人の助けがいるようになる。今まで、ずっと助けてもらった、恩を忘れてはいけない。

ところで、この制度って、土地建物を貸してもOKなのかな?

〈固定資産税・都市計画税〉
(1)平成 29 年4月1日から平成 31 年3月 31 日までの間に子ども・子育て支援法に基づく政府の補助を受けた事業主等が、一定の保育に係る施設を設置する場合には、当該施設の用に供する固定資産に係る固定資産税及び都市計画税について、課税標準を初の5年間次のとおりとする措置を講ずる。
① 土地及び家屋については、価格の2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合を乗じて得た額とする。
② 償却資産については、価格に次の割合を乗じて得た額とする。
イ 大臣配分資産又は知事配分資産 2分の1
ロ その他の資産 2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合

その他、

・一定の地方の償却資産税をお安くしときます

・鉄道会社応援するので固定資産税や償却資産税をお安くしときます

・耐震改修をした住宅の固定資産税をお安くしときます

・伝統芸能の舞台の固定資産税をお安くしときます

・宅建業者が取得した既存住宅で一定のものは不動産取得税をお安くしときます。これは、不動産業者の営業マンがセールストークに使いそう。こういうのがお客さんて好きなんだよねえ。

(34)宅地建物取引業者が取得した既存住宅について、一定の増改築等を行った上、取得の日から2年以内に耐震基準適合要件を満たすものとして個人に販売し、自己の居住の用に供された場合に係る不動産取得税の減額措置の適用期限を2年延長する

6 その他  相続税の財産基本通達周り
(1)物納

とうとう物納財産に上場株式等が仲間入り。しかも第1順位。暗記のし直しですよ。

相続税の物納に充てることができる財産の順位について、株式、社債及び証券投資信託等の受益証券のうち金融商品取引所に上場されているもの等を国債及び不動産等と同順位(第一順位)とし、物納財産の範囲に投資証券等のうち金融商品取引所に上場されているもの等を加え、これらについても第一順位とする。

(2)取引相場のない株式の評価の見直し

非上場株式等の評価。これが税理士会からも、改正の要望があったね。実現しました。

イ 類似業種比準方式について、次の見直しを行う。
(イ)類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均を加える。
(ロ)類似業種の上場会社の配当金額、利益金額及び簿価純資産価額について、連結決算を反映させたものとする。
(ハ)配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、1:1:1
とする。
ロ 評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大する。

取引相場のない株式の評価の改正は、平成29年1月1日から。はやっ。

対策できなくしたんだ。もし、平成28年12月31日に贈与なりした場合には、平成29年3月15日までに贈与税申告をしなければならないケースがある。

社長、贈与は来年にしようか、なんて言っていた税理士先生は大至急両方計算して打ち合わせをしないとね。こういう改正は、4月からとかにしてもらえなかったんでしょうか・・・

受験生でいうところの、Aの金額算定が複雑に。

分母のBCDは連結決算を反映することにしたんだ。子会社に分散したりして、単体だと正しい数字にならないという考えかな。

分子の配当、利益、純資産が全部1になったとはね!これは、資金が多い会社は保険加入したり退職金を出してみたり、色々出来てしまい利益×3だとお金がない会社ほど対策ができなくて苦しい・・・ということなのかな?それとも、お金を借りるためにお化粧決算(そんなのダメなんだぞ)してると可哀想だから、とかなのかな?

どなたかの税理士先生のブログによると、かえって増税なんだって。

一見、利益を3倍しなくてよいのだから、減税っぽく見えるけど、別にそうとも限らないわけね。相続税の計算は本当に複雑で難しく、面白い。

(3)広大地の評価の改正

③ 広大地の評価について、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに、適用要件を明確化する。

広大地の評価の改正は平成30年1月1日から。

適用要件が何なのか、不明ですが。

税務署が、広大地の更正の請求などでウンザリしちゃったんでしょうかね。

そもそも、相続税・贈与税の評価は本法によれば「財産取得時の時価により」なんだよね。

広大地
広大地に決まりはない

広大地の評価は、財産評価基本通達でしょう?法律ではないわけで。

更正の請求は、法律に従わなかったこと・計算に誤りがあったこと、という事実が無ければできないはず。

果たして、広大地の評価による計算をしなかったことが、「計算に誤りがあったこと」に該当するのかな?

実務上、最初から微妙な広大地評価ではなく、後出しで通れば広大地評価!みたいな更正の請求が行われていたということでしょうね。否認の根拠を条文化するってことかもね。

将来の税金対策になりますから!みたいなコンサルって、税制改正があるよってしつこく言わないとね。そうすると、余計な事言わない方がいいよな~ってなり、そうすると、うちの顧問税理士は何にもしてくれない!ってなるのね。

ところで、地価税ってなんだろう?

 

以上、二 資産課税は終わり。次回はp.46から 三 法人課税

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。

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