海外の相続税@おのでら調べ

30.8.12 相続税の課税方式は、遺産税方式と遺産取得税方式に大別されるが、世界的にはどっちの方が人気があるのか?

各国や地域で事情が違うのに、相続税を比較してもしょうがないという批判もあれど、まぁ見てみましょうよ。

数だけで言うと、遺産取得税の方が多そうね。同じ農耕民族のアジアで比べるべきよね・・・。相続税自体がない国もあるから、統計の意味はなかったけど、外国の相続税の仕組みを学ぶのは面白かったよ~。

日本でも議論されている、「遺言執行控除」は、単純に相続税を安くしろって話と思ってたけど、遺言執行者が納税しろって話だったのか(であれば理解できる)、と思ったわ。

1、日本は法定相続分課税方式

日本は、法定相続分課税方式という独自路線を進んでいて、トータルの相続税を相続財産の取得分で分けて負担するという仕組みになっている。

その、トータルの相続税の計算に、法定相続分を加味しちゃうところが変わってるよね~。法定相続分の加味をやめればオールOKなのに。

大別すると、遺産税になると私は思うのだけれども、取得税のカテゴリに入るという人もいる。どっちにも当てはまらず!

2、韓国は遺産税方式

韓国は、遺産税方式によっている。計算式は日本とよく似ている。

基礎控除は2億ウォン(日本円だと2000万円ほど)、農地税制・事業承継税制あり、納税義務者は相続人、財産は自己申告して相続税は課税庁が計算して納付書が届くシステム。連帯納付あり!

相続人は10年前、相続人以外は5年以内贈与は加算あり、配偶者控除あり。

韓国の相続税は累進税で10%~50%。

韓国国籍の相続人は日本にたくさんいて、その場合は韓国の税法に従うんだとか?けど北朝鮮国籍の方は日本の税法に従うんだとか?なかなか難しい。(私は詳しくないです)

(税経通信 2012年9月号 国際相続における税務 米国・韓国・台湾)→ https://www.eytax.jp/pdf/article/2012/zeikei_tsushin_2012-09.pdf

3、アメリカは遺産税方式

アメリカは遺産税方式。遺言執行人のような存在があり、その執行人が相続税を納税しないと、相続人の手に相続財産が渡らないシステム。(2012.9では)

なにその相続税の源泉徴収的な発想!

納税義務者は被相続人、という考えね。とりっぱぐれがないシステム。(2012.9では)

過年度の贈与についてはかなり遡って相続財産に加算(生涯累積方式)。日本で言う基礎控除が相当(統合税額控除)があるよ。当時は基礎控除相当が500万ドルだったけれども、現状は560万ドルほど?つまり、アメリカの相続税はめっちゃ金持ちが対象ってことネ。

で、生前贈与しても相続税(遺産税)は免れない。・・・だから贈与税の仕組みが日本と違うのだろうか?

アメリカは贈与があった場合の納税義務者は「あげた側」となるんだって。

日本では、贈与があった場合には、「貰った側」が贈与税を納税するので、考え方が違うみたいね。

日本でも、実務的には「子供に贈与したい。贈与税も親が負担したい」ということがあり。

私は、「負担した贈与税も子供さんに贈与したことになります。その贈与に贈与税がかかりますヨ」と説明したところ、「あんた何言ってんの?払うって言ってんのに文句あるの」と嫌味を言われたことがあります。・・・。

4、台湾は遺産税方式

台湾は遺産税方式。台湾では、配偶者は1/2しか課税されない台湾民法があるらしく、そうすると日本の配偶者の税額軽減とダブル適用となってしまうという問題点があるとか。詳しくは、記事を読んでくださいませ。→ https://www.eytax.jp/pdf/article/2012/zeikei_tsushin_2012-09.pdf

台湾の納税義務者は遺言執行人。アメリカと似てるね。相続財産を課税庁へ申告すると、課税庁が税額計算してくれるシステム。

3年以内の贈与財産が加算、しかも相続人の配偶者への贈与も加算(つまり嫁への贈与も相続財産へ加算!)。

基礎控除は1200台湾ドル(日本円で4300万円ほど)、非居住者・外国人には基礎控除なし。

配偶者控除、法定相続人控除、農地税制などあり。

相続税率は一律10%!(2016の段階では)

5、中国には相続税がない

中国本国では、相続税がないらしい。けど、富裕層が増えてきたことから、中国の相続税の導入も検討されているんだって~。

6、オーストラリアは相続税をやめたが

オーストラリアは相続税を廃止した国ではあるけれど、2015の段階で既に「やっぱり相続税再開するぅ?」という議論が起こっている。

(オーストラリアにおける相続税・贈与税論の展開 八木原大さん2015) → http://www.daito.ac.jp/research/laboratory/economics/publication/laboratory/file/economic_review2015_yagihara.pdf

もともと、オーストラリアは州ごとの自治があって、日本で言うところのふるさと納税の奪い合いみたいなことがあったんだって。

どこかの州が抜け駆けして相続税を廃止したところ、労働者がとどまってくれたこともあったみたい。

日本で例えると、オーストラリアの相続税は、国税と地方税がかかり、かつカオス状態だったようで、キャピタルゲイン課税というのか、資産の売却時に課税するというシステムに変えてみたらしい。

けど、資産格差が出てきてしまったので、相続財産に課税しよう、という考え。

本稿ではオーストラリアにおける相続税論の議論を、特にアスプリー報告書、税制改革白書、 ヘンリー・レビューを選んでサイモンズの包括的所得概念をふまえつつ整理・検討した。

これ らの報告書で一貫していることは相続税の課税目的が富の集中の排除にあるという点および相 続、贈与といった要素が所得税とは独立して課税されるという点である

7、ヨーロッパの多くは取得税方式

省略するけど、遺産税はイギリスくらいで他の多くのヨーロッパ諸国は遺産取得税方式によっているみたい。

狩猟民族と農耕民族を比較してど~するって感じだけど、先進国同士の比較という観点からは有効かしら。

相続税の課税方式 先進諸国一覧(PDFが開きます)

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。