退職金の法人税を検討ス

2020.10.28 横浜のお友だちと、税制改正の研修会。今回は、退職金引当金について、ひとりで考えてみました~。

将来の退職金について資産拘束性が乏しいものは損金計上がふさわしくないように思うので、改正には消極的なわたし。

・引当金と税

退職金引当金と賞与引当金は、会計上は事業年度に対応した費用計上が求められているので、実際にまだ支払っていなくても「将来の見込み費用」として引当金という名前にして経費計上します。

税金の計算上、退職引当金と賞与引当金は、原則として支払ったときに損金計上(税額計算上の経費認識)するルールです。それには様々ないきさつがあったようだけど、令和2年では引当金計上時には損金計上NGが原則となっている。

ちなみに、賞与引当金については、これとあれとこれ、という要件を満たせば引当金を損金計上OKですが、そのあたりは顧問の税理士さんに相談してください。

会計上、引当金は減らしています。不確定だからなど、説があると思うけど、会計については会計士さんが専門なので、そちらの解説でお勉強するとして。

引当金は、貸倒引当金、賞与引当金、退職引当金の3つくらいしか浮かばないけど、それぞれ考え方が異なるので税務上の損金計上の考え方も異なる。

今回は、退職引当金について考えてみます!

・退職金に関する会計処理

退職金引当金は、会計上も平成19年だったか、大きな改正がありました。国際会計基準に適合していく過程だったと思うけど、退職給付債務、勤務費用、現在割引価値などという複雑な仕組みになっている。

けど、そういう難しい退職給付会計は大企業の話であり、中小企業の多くは退職給付会計をスルーしております。中小企業は簡便的方法が認められているのと、退職給付規定がないことが多いから。

中小企業の退職給付会計スルーは、ズルではありません。中小企業に関する指針でも、OK出ているのです!(中小企業の会計に関する指針 平成31年2月27日。PDF30頁あたり)→ https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/doc/cpta/business/tyushoushien/indicator/chyushoshishin190227.pdf

退職給付債務・退職給付引当金
要 点

確定給付制度14(退職一時金制度、厚生年金基金及び確定給付企業年金)を採用している場合は、退職給付債務15に未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を加減した額から年金資産の額を控除した額を退職給付引当金として計上する。ただし、一定の場合には、退職給付に係る期末自己都合要支給額を退職給付債務とする方法(簡便的方法)を適用できる。

中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度及び確定拠出年金制度のように拠出以後に追加的な負担が生じない確定拠出制度16を採用している場合は、毎期の掛金を費用処理する。

 

税務上は、退職引当金計上は損金NG、中退共への拠出金なら損金OK(法人税法施行令第135条第1号)かと。

・退職金の原資と税負担

資産の拘束性(中退共は支払うけど、内部積み立てはキャッシュアウトを伴わない)を考えると、退職引当金の損金NGは理解できる~。

一方、退職引当金が損金計上NGな現在、会社を清算する・会社を売却する・大量退職の際には一時にドサッと退職金が損金計上になってしまう。退職発生年度だけ大幅な赤字申告になることがありえる。税負担は助かるけど、退職金による多額の損失は繰り戻し還付しきれない可能性があるね(繰り戻し還付は1年)。

退職金発生による欠損金は、将来の年度の利益とは相殺できるけど、主力社員高齢化などにより大量退職が発生し、会社も終わるってこともあるよね。もう、将来の利益が見込めずに会社解散になることはありえるでしょ。

退職金の損金計上時期により、なんか課税の公平性がどっかいっちゃってる。どうしよ。

・軋む事業承継と退職金

・・・・事業承継が進まない。そんな話を昨日、農家さんたちとしたよ。

法人の場合、めぼしい代表者を見つけるより、法人を解散する方が多いんでしょ。法人と社員が共に成長して年齢を重ねて、法人も社員と共に「退職」するのが世の流れかもしれない。

後継者候補は、販売ルートとノウハウを購入して、自分の会社を新しく作り、泣いて笑ってイチから経営する方がうまくいく気がする。

・退職金課税の未来

いま、れいわよ。退職金は時代遅れですよ。「老後は自助努力」なのだそうですよ。

退職金って、経済成長前提の話ですよ。もうこれから、経済成長なんてしないよ。「洗面器経済論」の通り、成熟した社会を迎えたら、現状維持が成功なのです。

経済成長が見込めないのであるから、会社が潰れれば退職金なんてないので、今給料をもらっておく方がいい。雇用の流動化も進むだろうし。社員にとって、見通しがきかない未来なら、今もらえるお金の方がいい。

昔からある会社が清算するときに、退職金の損金計上時期により長期スパンでの法人の税負担がおかしいことになっちゃうね。

もともと、退職引当金の損金計上NGは、継続企業が前提なように思う。継続企業の前提は時代に適合しないのかもしれない。退職金制度はなくなっていくと思います。そして、未来の退職金課税は給与課税と一本化していくことになるかもね。

個人ベースの退職金課税は政府税調で議論になっていたのは記憶しているけど、法人ベースの退職金についても検討していたかしら。

法人の退職金課税・退職給付会計についても考えないとならないのかもしれないね。

結論:中退共なら損金OKだから、現状維持でいいのでは、という消極的な意見でした笑

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。