税務訴訟資料より。「確定申告書の控え(二表以後も)の返送を忘れずに!」

2021.5.9 税務訴訟資料より、平成22年、申告書を郵送で提出した際、一表しか返送されず、二表以降の控えを紛失したのでは疑惑(後日見つかりましたが)。税理士が勝ちました。

裁判所によると、申告書の控えが返送されるのは納税者及び代行者の税理士の権利、とのことです。

裁判所によると、税理士の長年の経験から税務署を信用できないことが分からなくはないが~というくだりがありました。

私は思うけど、誰しもミスはあるので、税務署はきちんとやろうと努力してくれればよく、税理士はあんまり税務署をいじめすぎないようにしたいものです。けど、職員の高低差ありすぎると思うときある。

責任がないと、適当にやる人いるよね。どうせ長くても同じ税務署に2年しかいないらしいし、地道に納税者の対応を頑張ってる人が評価されにくい職場ってあるよね。

有能な税務職員のことを私はよく覚えていて、今でもたまに思い出すことがあるよ。お元気かしら。

さて、今回の事件。PDFで8頁の事件です。一般納税者が読んでも面白くないけど、税理士や税務署が読むと、「ああ~だから電子申告推進てのもあるよね」と思うかもね。けど、納税者の申告手段を限定することは許されないと思います。

税務署は税理士と敵対関係にあったのかしらね。10年前とはいえ、税理士の長年の経験から税務署は信用できないと言われているだなんて・・・・。(分からんでもないけど)

 

平成●●年(○○)第●●号 損害賠償請求控訴事件
(原審・東京簡易裁判所 平成●●年(○○)第●●号)
口頭弁論終結日 平成24年1月30日

国税庁HPより 平成24年 PDF → https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/choshu/2012/pdf/H24_10.pdf

裁判所の判断を抜粋しておきます~。

納税者・税務署・税理士の立場を垣間見た気持ちになりました。

以上の事実によれば、税務署が所得税の申告書の控えに収受日付印を押なつする行為は、刑罰によって強制される所得税の申告書の提出期限までの提出義務について、納税者がその義務の履行をしたことを確実に証明する手段を提供し、不当に刑罰を受けるようなことがないようにするという納税者の権利ないし法律上の利益を保護するために、訓令及び通達に定められた制度であるとい
うべきである。

それが申告書の内容を証明するものではないとしても、申告書を提出したという事実そのもの、すなわち申告義務を負う納税者がその義務を履行したことを最も的確に証明する手段として、義務を課した当事者ともいえる税務署が自ら証明することを制度化し、義務の履行を証明するという納税者の正当な権利利益を保護することを目的とするものと解されるからである。

したがって、返信用封筒と切手を同封して控えとともに郵送で申告書を提出した場合に、申告書の控えに収受日付印の押なつを受けて返送を受ける権利利益は、 所得税の申告納税制度を踏まえて定められた訓令通達に照らしても、法律上保護された納税者の権利利益であることは明白である。

 

控訴人は、税理士であり、税理士法2条1項1号に基づき、税理士の業務としてAから所得税の申告書の提出を代行していたのであるから、適正な業務の遂行を証明するために申告書の控えの返送を受ける権利は、申告者のみならず、申告を代行した税理士である控訴人にとっても法律上の権利利益であると認められる。

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長年の税理士としての経験から税務署が信頼できなかったという控訴人の主張も、控訴人の主張する他の事実関係から理解でき
なくもないが、

違法性の判断は、あくまで申告書の提出の事実の証明を受けるという納税者ないしその代行者である税理士の権利をないがしろにするような税務署の行為があったか否かという観点

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。