令和3年度税制改正レジュメ @コラム:納税管理人と税理士法

2021.5.7 令和3年度税制改正のレジュメ巻末には、コラムを載せる予定でした~。

言いたいのは、

・非居住者を申告難民とすべきではない

・国内関連者(例:不動産賃料管理会社)が申告書作成して税理士法セーフか?(アウトと思われる)

・税理士業務の無償独占を緩和してしまうと、非居住者の情報管理に問題がある。

・どうすればいいんだ~。クラウド会計あたりがしゃしゃり出てきて、税務申告を金儲けに使われるのはイヤだ~。

です。コラムは以下の通りよ~。

コラム <納税管理人と税理士法> 小野寺美奈

現在、税務書類の作成は税理士の無償独占業務となっています。(税理士法上、税理士資格を有しない方は、無償でも他人の税務申告をしてはいけません。医者や薬剤師と同じです。)

さて、非居住者は、国内源泉所得についてのみ課税されます。その場合、国内に納税管理人を定めなければならないことになっています。

前述の通り、令和3年度税制改正では、令和4年1月以降、税務署長等は、非居住者等の国内関連者に対し、納税管理人を指定することが出来るようになりました。

私は疑問に思いました。第三者の納税管理人(たとえば不動産管理会社)が、“税理士法で税理士の無償独占業務となっている税務申告書の作成”をして良いのか?私の答えは「現行法ではNG」です。

 

・税理士が税務申告を独占業務としていることについて、考えてみます。

税務申告の際には納税者の所得状況を含む個人情報を詳細に把握しなければ適正な税務申告をすることができません。税務申告書の作成過程で多くの情報が集まるため、税理士には守秘義務を含む情報管理について責任があります。税務書類の作成を税理士の無償独占業務としている理由は、独立した公正な立場で適正な税務書類を作成させるだけでなく、納税者を守る要素が多分にあります。

私は、納税者を守る立場から、税務書類の作成は税理士の無償独占とすべきだと考えています。

 

・現在、国税庁ホームページの充実があり、個人確定申告書が以前より容易に作成できるようになりました。

不動産収入が明確で、経費は固定資産税と管理手数料のみの非居住者、であれば所得控除もほとんどなく、税務申告はシンプルです。たとえば、賃貸管理をしている業者が適切に税務処理を行い、過度な営業行為を行わなければ、納税者不利にはならないでしょう。しかし、税理士資格がない方が第三者の申告書を作成すると、税理士法違反となってしまいます。

 

・ところで、税理士法は、対面による本人確認、ご本人の署名押印を前提として作られており、非居住者の申告を前提に作られていません。多くの税理士は、面識のない非居住者の税務申告は、慎重になるでしょう。

なぜなら、たとえば、非居住者と連絡がとれなくなると、税理士は適正な税務申告書提出の責任が果たせないからです。今回の税制改正にて、税務書類の押印省略がされました。ですが、押印省略では解決できない税理士の責任問題があります。

非居住者が、申告業務の受任に難色を示す税理士依頼を諦めて、“柔軟な対応”を行う業者に情報を渡し、不利益を被ることは避けなければなりません。

正しく税務申告を行おうとする非居住者が申告難民となるべきではありません。

私はジレンマを感じます。

 

税務申告を税理士の既得権益化とすべきではありませんが、情報管理や納税者を守る観点から、どこまでいつまで税理士の無償独占業務とすべきなのか、納税者の立場からの議論が必要だと私は考えます。

ライセンス制度は必要です。国内関連者に申告業務の簡単なライセンス付与するのも一案です。ただし、ライセンスの価値に見合うだけの責任も負わせるべき、私はそのように考えています。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。