税務訴訟資料より。妻へ所得付け替え。青色申告取り消し。実質所得者課税

2021.5.10 国税庁HPにて、税務訴訟資料を眺めていたところ。

不動産所有者が、妻にタダで又貸しして、不動産所得を妻に付け替えることができるか、です。

公務員の不動産貸付けって難しいんですね。

個人でも、税務調査の際に帳簿不提出だと青色取消しされる可能性高いです。(1年以上不提出でした)

事案

税務訴訟資料 第268号-8(順号13113)
東京地方裁判所 平成●●年(○○)第●●号 青色申告承認取消処分取消等請求事件
国側当事者・国(仙台中税務署長事務承継者江東西税務署長事務承継者行橋税務署長)
平成30年1月19日棄却・控訴

国税庁HPより(PDF) → https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2018/pdf/13113.pdf

おのでらの事案まとめ

公務員が不動産物件を購入した。9部屋までなら兼業規定でセーフだが、10部屋になると兼業規定で勤務先の役所から怒られるらしいです。

なので、彼は考えた。

「不動産登記簿の所有者は自分だけど・・・・。妻にタダで又貸しして、妻の所得で申告すればいいのでは!使用貸借契約書を作って、賃貸契約書は妻の名前で、」

そして税務調査があり、帳簿を提出しないから青色取り消し、白色だから理由付記なし、妻の所得ではなく夫の所得だから、夫に対して追徴!となりました。(裁判所は、「青色取り消されたけど判断の理由は裁判で明白だから別にこだわらなくていいのでは?」と思っているように私には読めました)

裁判になりましたが、納税者は負けました。

妻の所得を否定した判断理由

PDF32頁には、裁判所の判断「タダで又貸ししても妻の所得にしない」と判断した理由が書かれている。

3 争点2(本件不動産所得が原告に帰属するか)について
(1)所得税法12条は、

①資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、

②その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、
その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、

この法律の規定を適用する旨規定している。同条は、課税物件の法律上(私法上)の帰属につき、その形式と実質が相違している場合には、実質に即して帰属を判定すべきとする趣旨のものであると解される。

・本件独自の事情も・・・・

本件事件の場合、登記簿上の所有者は夫。賃借人(店子)との契約者は妻だったり夫だったり。家賃入金口座は夫。借入れしたのは夫。固定資産税以外の経費は夫負担で申告。不動産業者や賃借人に対するお知らせに「夫が家主」という記載がある。税務調査の際には、調査官が妻との面接を断る。

などが判断材料とされました。

納税者側は、「公務員の兼業規定のせいで税逃れではない。税逃れだとすれば、夫申告をして妻を専従者にした方が税負担が減少する」と言ってる。

ちなみに、夫の不動産収入は毎年300万円~400万円で推移。妻の不動産収入は900万円~1200万円で推移。

納税地が変更され、税務調査の担当者がどんどん変わっていた。そういえば税制改正で税務調査中に管轄税務署が変更した場合の取り扱いがありました。

裁判所の実質所有者の判断

2)検討
ア 原告の妻の地位について
(ア)上記認定事実(1)のとおり、

本件賃貸用アパートの所有者は原告であると認められるが、

Fマンション、Gマンション及びIハイツに係る不動産賃貸借契約書上、原告の妻が賃貸人となっているものがあり(乙22の1・別紙3、乙31の2、36の2、弁論の全趣旨)、

また、所有者である原告と妻との間で作成された本件使用貸借契約書において、Fマンション及びGマンションのうち原告が指定する貸室等については、原告の妻が第三者に転貸し、その貸室等からの収入を得るとともに、不動産賃貸業務を行う地位にあるとされていることからすると、Fマンション、Gマンション及びIハイツに係る不動産賃貸借契約書及び本件使用貸借契約書上において原告の妻が賃貸人とされている貸室からの賃料収入については、原告の妻が、当該貸室から「生ずる収益の法律上帰属するとみられる者」に当たるということができる。
(イ)しかるに、証拠(乙37、38)によれば、①原告は、Fマンション及びGマンショ33ンの貸室につき、「不動産屋へのお願い」(乙37・別添1)、「入居者様募集条件」(同・別添4)と称する文書等を作成し、その入居者の募集について仲介業者に対して詳細な指示をするなどしていたこと、②原告は、入居者に向けて、「Fマンションに入居される方への連絡事項」(乙37・別添5)及び「Gマンションに入居される方への連絡事項」(同・別添6)と称する文書を作成し、その貸室の使用方法や注意事項等について案内をしていたこと、

③仲介業者や入居者に向けられた上記①及び②の各文書に
おいて、「大家」又は「オーナー」として、原告の名が表示されるなどしていること、
④仲介業者が物件の管理を行うために作成している「家主台帳」(乙38・別添2)においても、家主は原告とされていることが認められる。
また、本件使用貸借契約書上、原告の妻は、不動産賃貸業務を行うとされてはいるが、金銭的負担が発生する場合には、原告がそれを負担するとの条項(同契約書5条。認定事実(1)ウ⑤)が存在し、原告の妻は不動産賃貸業務に関して自らリスクを負うことはないものとされている。
さらに、原告の妻がその不動産所得として確定申告をしている賃料に係る貸室(別紙5参照)であっても、入居者との間で作成された不動産賃貸借契約書上は、原告が賃貸人となっている貸室(Fマンション113号室並びにGマンション311号室、316号室、321号室、333号室、335室、336号室及び338号室)が複数存在する(認定事実(2)イ)。

上記の各事情に加え、本件調査において、本件担当調査官らが原告に対し、妻に対する面接を申し込んだが、原告はその必要はないなどとして承知しなかったという経緯があること(乙20の1、47、証人丙、原告本人)にも鑑みると、Fマンション及びGマンションにつき、その管理等の業務を行っていたのは、所有者である原告であったと認めるのが相当である。
また、本件賃貸用アパートのうち、Iハイツについては、本件使用貸借契約書の対象とされていないこと(認定事実(1)エ)からすると、その管理等の業務を行っていたのは、所有者である原告であったと認めるのが相当である。

(ウ)以上のとおり、本件賃貸用アパートは原告が所有するものであって、その使用収益に係る業務も原告自身が行っていたことからすると、不動産賃貸借契約書上においては原告の妻が賃貸人であるという形式が採られていたとしても、その実質を伴わない状況にあったといわざるを得ない。

そして、このことに加え、原告と妻において、本件使用貸借契約書を作成し、原告の妻を賃貸人の名義とする不動産賃貸借契約書を作成することになった契機は、原告がFマンション及びGマンションを取得し、その賃料収入を自己の所得とすれば本件兼業規制に抵触することとなることを強く意識したことにある(認定事実(1)イ)という点をも勘案すると、Fマンション、Gマンション及びIハイツに係る不動産賃貸借契約書又は本件使用貸借契約書上において、形式上、貸室から「生ずる収益の法律上帰属するとみられる者」に当たると認められる原告の妻は、真に不動産賃貸人たる地位にある者ではなく、「単なる名義人」であるというべきである。

原告の主張の一部抜粋

原告(納税者)にも言い分があり、納税はきちんとするが、帳簿提出の説明に乏しく、高圧的であった。最終的には帳簿を提出したが受け取らなかった!とのこと。

 

本件担当調査官らは、原告が根拠を示しながら、所有者でなくても申告できる場合があるはずだと繰り返し質問し続けていたにもかかわらず、所有者でなければ申告できないという虚偽の説明を繰り返し、

また、所得税法150条1項1号に明記されていない帳簿書類の不提出も青色申告承認取消事由になるという説明を一切せず、一方的かつ高圧的に帳簿書類の提出を要求していた。

そして、原告は、ようやく帳簿提出の根拠条文等について回答を得られた際、戊統括官に対し、帳簿書類の提出を申し出たのである。それにもかかわらず、同統括官は、帳簿書類の提出を受けることを拒み、本件各更正処分等を下したのである。本件各更正処分等がされたのが平成26年3月4日であるから、

戊統括官は、原告から本件帳簿書類を受け取り、処分方針を変更できたはずであり、

その程度の配慮すらせず、国民に多大な不利益を課すことは許し難いことである。

 

例えば、Gマンション311号室については、原告の妻が賃貸人となっている別の物件において、原告の妻が賃借人から暴言をはかれる等の事件があったことから、不動産管理会社の助言もあり、原告の妻の身の安全を図るため、形式的に賃貸人の名義を原告に変更したという事情があり

 

原告が本件兼業規制を回避するためではなく、「夫婦間において生計が一になることを利用して、原告の収入であるべき賃料を原
告の妻の収入に付け替えて、税金を安くした」と指摘したいようである。
しかしながら、原告が税金を安くしたいのであれは、原告は、自身が事業主となって、原告の妻に青色事業専従者の給与を支払う形をとり、申告納税額を低くできたにもかかわらず、あえてそれよりも高く納税申告をしたという点に着目すると、原告が本件兼業規制により9部屋までしか賃貸人になれないので、原告の妻に不動産賃貸業を依頼したことは明らかである。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。