大衆演劇シリーズ 大衆演劇の経済 ~収入の構造を推測する回~

2023.7.1 大衆演劇という業界について、西日本では珍しくないようですが、関東の都会には馴染みが浅いです。

経済の仕組みとしても興味深いものがあります!

・参考論文

大衆演劇について、民俗学的な目線からの論文もいくつかあり、読みました~。歴史的な視点もあり、興味深かったです。

「興行としての 「大衆演劇」:客層の細分化を探る」「暗黙知か一期一会か 「大衆演劇」はどこからきたのか」倉田 量介先生の論文など。

鵜飼正樹先生の体当たり論文も読みました。

上記の論文と現地での状況から勘案、大衆演劇の劇場と劇団の収入のメインは、入場料収入と思われます。一定数の観客数を越えれば、儲かるシステムとなります。逆に、お客さんが少なければ赤字になる・・・・。

変動費がないため、固定費分をいかに早期に回収できるかがポイントですね~。

・会場と客層

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埼玉県川越の温浴施設、東京都立川の町の劇場、東京都浅草の都会の劇場、この3つの会場で大衆演劇を観てきました~。(5劇団)

大衆演劇の多くは、劇場ごとに毎月劇団が変わります。毎日・昼公演と夜公演があり、演劇&舞踊合わせて3時間半で構成されてます。観客の多くは中高年の女性、いわいる主婦層が多く、60代以上の女性が多くを占め。夜公演は17時開始20時半終演のため、主力の観客層が鑑賞しにくく、夜公演は空いている傾向にありました。

平日の昼、平日の夜、土日で観客層に若干の差があり、雰囲気も少し違います。

・来客数の概算値

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温浴施設

川越の温浴施設では、温浴施設の入場料2000円のみで、2公演が無料で鑑賞できました~。劇団は、おそらく温浴施設からオファーを受けて公演を行っていたことと思います。そのため、観客数と劇団収入は無関係かと思います。カウントしてないし。食事処を兼ねていて、定員200人ほど、イベントのない平日で30人~50人くらいの客入り。(コロナの影響はまだあり)

温浴施設では、大衆演劇の誘致が起爆剤となり温浴施設経営のピンチを救ったこともあるほどだそうです。劇団にとっては滞在費が温浴施設持ちだと助かるし、新規ファン開拓のチャンスかもしれないです。

温浴施設で大衆演劇を試してみたけどストップしているところ・コロナの影響でしょう大衆演劇の誘致をやめた温浴施設・旅館もあるそうです。

町の劇場

立川の劇場は、1公演2000円。前売り券は1800円。定員150人ほど。ざっくりした来場者数、イベントのない平日の夜で30人~40人、土日イベントの日は各回100人ほどの客入り。政府的にはコロナ明けでしたが、集客に苦労している時期は継続しています。

大きめの劇場

浅草の劇場も、1公演2000円。前売り券は3枚セットで5400円。定員200人ほど。ざっくりとした来場数、イベントのない平日の昼で40人〜70人、イベントのない平日の夜で40人~60人、イベントの日は150人超の日もあった!

前売券

立川・浅草の劇場の際には、劇団が、劇団の記念プリントがある前売券を直接販売していました。立川では劇団販売の前売券が恐らく1500枚前後。浅草では劇団販売の前売券数は読めなかったものの、中盤で購入した前売券のカウントから2500枚ほどかと推測いたします。

劇場の前売券もあるけど、劇団専用の前売券の方が劇団にとってもファンにとっても嬉しく(わたしだけ?売り方次第で)、劇団の直接販売の力の入れっぷりが垣間見れるのも興味深かったな。温浴施設での「劇場からお金をもらって行う(であろう)」公演とは異なり、劇場公演では来場者数が劇団運営に大きく左右されるように思えました。

・入場料はだれのもの?

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入場料がすべて劇場主のものなのか、劇団とシェアしているのか?を考えてみます。

各劇場によって異なることとと思いますが、論文やインターネット記事で推測するに、入場料収入は劇団と劇場で50%ずつ・○○○人以上ならチケット代の〇%を劇団へ、といった契約になっているケースがありそうです。

劇団が劇場へ固定費相当額を担保している(一定数の前売券を劇団が独自購入して手売り)かもしれないです。

劇場側からすれば運営固定費を回収できないと商売として成り立たないので、「一か月○○○万円の賃料で光熱費と受付・売店・清掃込み」のような契約だと経営が安定しますね。

しかしです。

関西の芝居小屋では、オーナー体調不良により事実上の閉鎖になったところもあり、複数の劇場主のインタビュー記事などによると、「赤字のこともある」といった発言も見ます。

劇団は口上(こうじょう。休憩時間前の劇団からのご挨拶)の際などに集客を呼び掛けていまして、これは温浴施設ではなかったです。

このことから、入場料収入を劇場と劇団で分け合っているケースが多いように思いました。

・興行収入の概算計算

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さて、今回の推し劇団の集客状況から察すると、毎週900人ほどの集客があり、1か月の公演で立川公演3000人ほど、浅草公演で4000人ほどの観客動員数を見込みました。(ちょっと多めに計算したかも?)

前売券による購入が立川50%(1500枚販売と仮定)、浅草70%(2800枚販売と仮定)と仮定すると、

上記の観客数を仮定し計算すると、立川公演1か月分の興行収入550万円ほど。浅草公演1か月分の興行収入700万円ほどを見込みます。まぁ、だいたいね。

仮に、劇場と劇団が入場料を50%ずつ折半しているとすると、月間収入は275万円・350万円。

劇場のコスト(光熱費、受付・売店・清掃の人件費、照明や音響など設備費、建物に関する費用)を考慮して、275万円の劇場の収入があると黒字だったのでは。立川の場合、自社物件だそうですし。

浅草の場合、浅草寺すぐそばという好立地ですが、劇場が東京都から土地を借りている前提で考えると、350万円の収入があれば劇場の運営費はペイできたかなと。

・劇団の運営コストについて

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劇団の運営についても考えてみます。

劇団のコストについては不透明ですが、10人前後の劇団員への給与・外注費(宿泊生活費)、消耗品費・衣装代・小道具等の維持管理費を考えると、月間収入が「仮に」275万円だと厳しそうです。どなたかに手配を依頼している場合、仲介手数料のようなフィーが発生しているかもしれません。次の興行地への移動費も確保しないとならないし、前売券は劇団が先行購入するでしょうし、資金繰り大事。

劇団が舞台の休憩中に手売りする物販収入もあるけど、グッズ作成コストを引いた利益は微々たるもの。在庫管理を考えると赤字までありえるけど、目先の利益よりも忘れられないようにするといった効果を狙っているのかもね、グッズ販売は。(原価という概念がなさそう)

入場料収入とグッズ販売のみでは劇団運営として十分とは思えず、大衆演劇の特殊性、祝儀とチップ収入という存在が重要になりそうです。

※追記8.21 劇場が誘致し滞在場所も提供しているように思う時もありました。劇場が、集客力で劇団を選んでいるのかも?

・町の小さい芝居小屋

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次に、町の小さい芝居小屋についても記載しておきます。

川崎の小さい芝居小屋は40人定員、平日は夜公演のみ、土日は昼公演と夜公演。平日30人、土日は80人と仮定すると、月の入場料収入は248万円。

劇場と劇団で50%ずつだと、月の収入は124万円。厳しい・・・・。

川崎大島劇場の場合、憶測ですが月間〇〇万円を劇場に支払うといった形式の契約かもしれないですね。そうでなければ、劇団が厳しいと思う・・・・。(別の劇団にゲスト出演して川崎劇場を欠場する役者もいました。意外と人気の劇団が来ることあるそうです)

平日は夜公演のみということは、昼に休めるし稽古も出来るます。川崎駅までバスで10分くらいなので他の劇場で観劇もできますし、劇団は、スキルレベルを上げる期間と割り切ってるかもしれません。

・祝儀については別記事にて

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劇団の収入確保の道として、お客様からのご祝儀とチップの存在があります。大衆演劇独特の手法のようで、初めて見たときはビックリしました。これが面白いのです~。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。