1/23 弁護士、司法書士先生と無益差し押さえ解除の判例を勉強してきた。
神奈川青税の税法研究会へ行ってきた。
12,3名ほどの出席者。参加費はなし。(懇親会は別料金)セミナー講師は内部で持ち回りでやってるみたい。弁護士と税理士とで協力して構成を組み立てて、判例をそれぞれの分野について話してくれる。
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1.今回のお題。無益差し押さえの解除
今回は、「無益差し押さえを解除しなかったことは国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例」静岡地裁浜松支部H26.9.8民事部判決。(控訴中)
難しい・・・
今回の裁判は、相続財産法人が、徴税吏官・浜松市を訴えた。差し押さえを解除しなかったから損したじゃないか!損した分を返せ!という訴訟。
判決は、浜松市は相続財産法人へ110万円の損賠賠償金を払いなさい(控訴中)というもの。
2、耳慣れない用語
相続財産法人とは
相続財産法人とは、身寄りがない人の財産をいったん管理する団体のこと。一般的に相続財産法人の財産管理人に報酬額(?)がかかるので、財産があって債務がある身寄りのない人が死亡した場合に、お金を貸してた人が弁護士などに依頼する場合がほとんどらしい。(関連過去記事)官報を読む。・相続債権者受遺者への請求申出の催告→https://mina-office.com/2017/01/09/kanpo/#i-5
無益差し押さえとは
無益差し押さえとは、10万円を差し押さえるのに1000万円の差し押さえはダメという規定。しょうがないのはいいけど。1万円取り立てるのに、徴税コストが1万円超の場合には、差し押さえても効率が悪いから差し押さえは原則禁止。(納税義務がなくなるわけではない)民事執行法128条らしい。
非株の納税猶予の際には、担保を提供しないといけないけど、納税猶予する非上場株式を担保にすることができる。変だよ。「超過差し押さえの禁止の例外」という規定があり、この場合の非上場株式を買ってくれる人がいないときには、納税猶予の適用を受けた人の財産を差し押さえることができるんだって。(国税徴収法通達48条関係4-2)納得した。
国税徴収法は強い法律なので、無茶できないようにしているみたい。
差し押さえをしても、納税者が納税したときなどは差し押さえ解除しなくちゃダメなんだって。後発的に無益差し押さえ(先に取り立てる権利がある人がいて、差し押さえてもどうせ徴収できない)になったら解除がマスト。
公務員は、納税者がほかの財産の差し押さえを提供したら、当初の差し押さえを解除することもできる。
国税が一番最初に取り立てるものと思っていたけど、銀行など抵当権設定(借金のカタ)が登記されていると、そちらが優先だ。
相続税・贈与税は、連帯債務という規定がある!この規定はとっても面白い。後日談。
3.裁判の概要
今回の場合は、亡甲野さんが国民健康保険425万円(延滞金含む)を滞納したまま、農地住宅である本件建物で自殺をしてしまった。
亡甲野さんは、不動産を持っていたけど、お金はなかったのかも。本件不動産を担保に、住宅金融公庫から1300万円、みずほ信用保証から1440万円を借りていた。
浜松市の徴税吏官は、本件不動産を差し押さえた。(問題なし)
相続財産法人は、本件不動産は今なら売れるから、本件不動産ではなく別件不動産の差し押さえに変えてよ、本件不動産の差し押さえを解除して、と頼んだ。差し押さえたままだと、高く売れないんだって。
徴税吏官は、差し押さえを最初は解除しなかった。みずほが担保として土地を取り上げて競売にかけるとなった時に慌てて差し押さえを解除した。
相続財産法人は、前から頼んでたのになんで差し押さえ解除しなかったの?サボってたせいで高く売れなかった。差額を国家賠償して!
という裁判があった。
判決は、110万円と利子を、浜松市は相続財産法人に支払ってね。という結果に。
4.裁判での話し合い
・相続財産の言い分
相続財産法人は、自殺があった本件不動産をなるべく高く売って、亡甲野さんにお金を貸してくれた人に返金したかった。だから頑張った!相続財産法人は、亡甲野さんの別件不動産を差し押さえて欲しいと徴税吏官に頼んでいた。だって、別件不動産を差し押さえる方が、効率がいい。なんで別件不動産を差し押さえなかったんだ?くらいに思ってたみたい。
別件不動産について、農地転用に成功したことから、徴税吏官が不利に動いたね。今回の農地転用許可は、相当細かく調べて農地としての権利関係が違法な状態(昔のなぁなぁのままの状態)であることを相続財産法人側が突き止めたから許可がおりた。
相続財産法人は、別件不動産は620万円で売れそうだけど、競売だともっと下がる、住宅金融公庫とみずほで分けちゃって、残りはないから差し押さえしてても浜松市に国民健康保険税の滞納は払えないよ。と、と浜松市長に連絡してる。担当の徴税吏官じゃ話にならん!と言っている。
・浜松市の言い分
徴税吏官・浜松市は、滞納者はいっぱいいて、甲野さんにばかり細かく財産把握はできないよ。別件不動産を差し押さえるべきだったと言われても、財産価値の把握について完全な仕事を求められると、誰も公務員をやれないよ。徴税コストはみんなの税金だから、なるべく少なくしないと。差し押さえ解除が遅くなったのは仕方ないよ。と思っている模様。
・10万円を8万円にまけさせた。・・・
その後、徴税吏官が10万円の納税があれば納税の意思ありとしてなのかなんなのか、差し押さえ解除する、と相続財産法人に伝える。
相続財産法人は、徴税吏官じゃなくて、上司に電話代わって!と言い、8万円にまけてもらう。・・・なんかちょっと、相続財産法人が感情的じゃない?
本件不動産が620万円で売れる、別件不動産も620万円で売れるって書いてあるけど・・・・620万円ばっかりで混乱しちゃう。
5.不動産と滞納金の行方
本件不動産は、乙山さんという人が前から570万円で買うと言ってくれてたけど、結局競売で乙山さんの息子さんに305万円で落札され、住宅金融公庫とみずほで分けた。
差額の265万円もったいない。乙山さんが得した。
別件不動産は、農地転用許可後、売却できたので亡甲野さんが滞納していた国民健康保険税は全額を納付できた。別件不動産は抵当権がついてなかったから、最初に浜松市に滞納金が支払われることになるんだ。
本件不動産も別件不動産も、結局売却されて借金返済と国民健康保険税に充てられた。
6.感想
なんか、税金がもったいないよ!浜松市の公務員の給料分がもったいない。裁判代金がもったいない。
ちゃんと健康保険料を支払いなさいよ!払えなそうだったら、市へ相談へ行く。
地方自治体は、お金がなくて困ってるから、取り立ても無茶になりやすいよね。徴税ノウハウもあんまりないみたい。最近は、地方自治体が弁護士を雇用(?)して、弁護士に相談しながら公務員が事務作業をするケースもあるとニュースで見た。公務員なんだから何でもやれって可哀想だよ。
今回の無益差し押さえ解除(他の差し押さえ物件を差し出したのだから、本件不動産の差し押さえ解除をすぐやるべきだったでしょうよ!)の裁判の弁護士費用相当額10万円も賠償してって訴えてるけど、弁護士費用ってそんなに安いの?
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