所得税と個人事業税の違い@不動産所得を中心に

2020.8.10 一部の個人事業主には、都道府県から「個人事業税」の納付書が送られている。7月下旬から発送しているはずです~。

駐車場貸付業の方や、年間1200万円超の不動産収入がある場合にはチェックしておいた方がいい!税理士さんは納税者に対して一言「個人事業税かかるかもね」と言っておこう~。

「個人事業税とは、個人で事業を行っている方に課される都道府県の税金です」

神奈川県ホームページより 個人事業税 → https://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a001/b004/index.html

・個人事業税の納付

個人事業主の事業所得・一部の不動産所得(青色でも白色でも)の合計額が青色控除前で290万円を超えている場合には、割と高い確率で都道府県から個人事業税の納付書が送られてきます~。(確定申告書データを税務署から取得し、情報共有しているものと思われる)

個人事業税の基礎控除は290万円です。

青色申告特別控除をする前の所得金額が290万円を超えていると、その超えた部分の金額に5%(お医者さん系は3%・畜産水産系は4%)の個人事業税がかかります!

個人事業税は、前年の所得に応じて課税され、本年の8月と11月に納税します~。(通期の税額が1万円以下だと、8月に一括納税)

納税方法は、金融機関での支払いの他、コンビニ(30万円以下)、ペイジー、LINEペイ(30万円以下)、口座振替(申し込みが必要)がありますわ~。

修正申告や更正の請求を行い、所得が変更した時には、税務署が都道府県にお知らせするので、自動的に都道府県から「追加の納付書」なり「還付のお知らせ」なりが届くようです。

・個人事業税の会計処理

個人事業税は、経費に出来るので「租税公課」で会計処理をします!支払時に経費処理でOK。

通常は前年の未払計上はしません~。賦課課税だから債務確定が本年だからだと思うわ。

・所得税との相違あり!不動産所得に注意

個人事業税の計算は、確定申告書に添付する決算書等で判断されているのだけども。

事業所得の場合には、法定業種限定とはされているものの、多くの事業に課税されると思われます~。

不動産所得の場合には、その貸付け規模により、個人事業税が課税される場合と、されない場合がある!

個人事業税の「事業を行っている」の判断は、所得税の計算上の「青色申告特別控除10万円と65万円(55万円)の事業的規模の判定」とは微妙に異なる取り扱いになっている。

所得税の不動産所得の事業的規模かどうかの判断材料のメインに、5棟10室(50台)基準と言われる形式基準があります。(通達26-9)これは、「税務署としては、この基準をクリアすれば、事業的規模をダメと思わないよ」という形式的な判断基準です。

が!

個人事業税は所得税とは違う基準を作っている。(一緒にしてくれればいいのに~!)

①5棟基準の相違点

5棟基準は、個人事業税の世界では「住宅用以外なら5棟で事業」「住宅用であれば10棟以上で事業」という判断をしている。

なので、住宅用5棟で所得税では事業的規模としていても、個人事業税はかからない。

(MIXして貸し付けている場合にも決まりがある。空き家もカウントに入れる)

②10室基準は同じ

10室基準は、個人事業税も所得税も事業の判断基準が同じ。(1棟貸しでも室数で判断)

10室以上を貸し付けていれば、個人事業税の対象になる

③50台基準の相違点

駐車場貸付けは、所得税と個人事業税で相違がある!

所得税では50台で形式基準で事業的規模と言われている(噂かな?)けれども、個人事業税の世界では「建築物である駐車場」を持っているだけで個人事業税の対象になる。(コインパーキングを含む)

いわいる更地やコンクリを敷いただけの駐車場貸付けの場合、駐車可能台数が10台以上ならば個人事業税の対象になる。(空きも含める)

④土地の貸付けの基準

土地の貸付けについて、個人事業税の世界では「土地貸付けが住宅用以外ならば契約件数が10件以上」「土地貸付けが住宅用ならば10件以上OR貸付総面積が2000㎡以上のもの」は個人事業税の対象となっている。

⑤ 基本的施設がある場合

上記に該当せずとも安心できない!遊技、娯楽、集会等のための基本的施設を施した不動産貸付けには、個人事業税の対象になる

⑥ 家屋の貸付け 600㎡超&1200万円超

さらに、上記に該当せずとも、家屋の貸付けの総面積が600㎡超&通常年間賃料が1200万円超(更新料等を除く)の場合には、個人事業税の対象になる

個人事業税の対象は、65万円控除をゲットしてるかどうかに関係が無い!

・納税者への注意喚起

税務支援の際に不動産所得をはじめたての納税者さんと接するとき、「事業的規模ではないですよ」と言うときがあるけど、個人事業税については忘れがちよね。

駐車場貸付されている方には、「(経費控除後)290万円を超えているから、個人事業税がかかるかもね」と言ってあげると親切かもしれないね。

・・・・親切のつもりで言ったところで、逆ギレしてくる方(はっきり断言しろ、とか言われるよね)がいるけど・・・。

「え!個人事業税という税金が他にかかるかもしれないの!お金をとっておかなきゃ」の方が納税者のために良く、

「結局、個人事業税がかからなかったじゃない!なんなの!」と思われる方がマシ。

参考:所得税 基本通達26-9

国税庁HPより 所得税26条関係 基本通達 → https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/02.htm

(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)

26-9 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。

(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。

(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

投稿者: 小野寺 美奈

税理士。農業経営アドバイザー試験合格者。認定経営革新等支援機関。相続診断士。FP。 川崎市・東京多摩地方を中心にした、地域密着・現場主義。 税務の記事はご自身で税法を確認されるか個別に有料相談に来てくださいね。